2025年第2四半期、日本の主要商業地では賃料上昇が一段と鮮明になりました。CBREの「Japan Retail MarketView」によると、表参道・原宿、渋谷、心斎橋、神戸の4エリアで平均賃料が調査開始以来の最高値を更新。空室率は銀座、渋谷、心斎橋、栄で0%を維持し、需給は依然としてタイトです。加えて、全国の平均賃料ランキングでは銀座が首位を守り、心斎橋、表参道・原宿が続きました。旗艦店需要の集中と供給制約が価格形成の構造を押し上げています。
順位 | エリア | 平均賃料(円/坪) | 前期比 | 前年同期比 |
---|---|---|---|---|
1 | 銀座 | 282,000 | ±0.0% | +7.2% |
2 | 心斎橋 | 266,000 | +3.1% | +9.0% |
3 | 表参道・原宿 | 240,800 | +4.8% | +19.9% |
4 | 渋谷 | 176,000 | +9.3% | +16.6% |
5 | 新宿 | 172,000 | ±0.0% | +1.2% |
6 | 梅田 | 129,000 | ±0.0% | +1.6% |
7 | 京都 | 126,000 | ±0.0% | +14.5% |
8 | 神戸 | 117,500 | +0.9% | +11.4% |
9 | 栄(名古屋) | 73,000 | ±0.0% | +2.8% |
10 | 天神(福岡) | 66,000 | ±0.0% | +13.4% |
1. 上位3エリアに共通する「物件枯渇」
銀座、心斎橋、表参道・原宿はいずれも空室率が極めて低く、プライムエリアでは即入居可能な物件がほぼ存在しません。新規参入は既存テナント退去か竣工予定の新築物件に限られるため、物件取得競争が激化。複数ブランドが競合し、従前賃料を約20%上回る水準で成約する事例も報告されています。
2. 出店ニーズの多様化と戦略の変化

業態別ではアウトドア・スポーツが需要を牽引。新宿、渋谷、京都で旗艦店を展開し、ブランド価値と賃料水準を押し上げています。一方、円高傾向の継続による免税品売上の減少を受け、一部ラグジュアリーブランドは出店時期を再検討。しかし撤退ではなく、タイミング調整にとどまります。
プライムエリアの物件不足により、徒歩数分圏のセカンダリーエリアでも高額成約が増加。訪日客動線やSNS映えを意識した立地選定が進んでいます。
3. 中位〜下位エリアの動き

渋谷は前期比+9.3%と高い伸びを示し、神宮通りや公園通りの評価向上が寄与。新宿は空室率上昇で賃料横ばいにとどまりました。
関西では梅田と京都が過去最高水準を維持。京都は河原町周辺の夜間集客力を評価する移転需要が続きます。
下位の栄は物件選択肢の少なさ、天神はセカンダリーエリアでの初出店増加が、それぞれ賃料上昇圧力となっています。
4. 投資・開発への示唆

ハイストリートは用地制約が強く、賃料上昇が既存資産価値の上昇に直結します。旗艦店立地は収益性だけでなくブランドの象徴的存在として広告効果も大きく、投資妙味が高い分野です。今後はプライム依存から脱却し、都市全体の歩行者動線を活かしたセカンダリー戦略が重要性を増します。
5. 今後の見通し
CBREは今後1年間も全国的な賃料上昇が継続すると予測。インバウンド回復や都市再開発(渋谷再開発、心斎橋・天神ビッグバン等)が需給をさらに引き締める見込みです。リスク要因としては、円高傾向の継続や国内消費減速が挙げられますが、現状の需給構造は強固であり、主要都市の商業地は引き続き高い投資価値を持ちます。
心斎橋もいまやすっかり、高級ブランド店が立ち並ぶハイストリートとして確固たる地位を築きましたね。これからの進化にも目が離せません。