2025年8月6日、大阪府と大阪市は、夢洲への新たな鉄道アクセス整備に関する検討結果を公表しました!既設のJR桜島線と京阪中之島線を延伸する案が、従来の答申路線よりも費用対効果や整備効果、収支の面で優れていると判断されました。
IRと段階的開発を見据えたアクセス強化

夢洲では2025年に大阪・関西万博が開催され、その後は統合型リゾート(IR)を中核とした大規模開発が進められる予定です。あわせて、第2期・第3期の開発も計画されており、段階的に以下のような年間来訪者数が見込まれています。
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第1期(IR等):約2,000万人/年
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第2期:1,200万人/年
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第3期:300万人/年
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最終的な合計:3,500万人/年
2025年1月、南ルートにあたる大阪メトロ中央線のコスモスクエア~夢洲間が開業しましたが、鉄道アクセスが単一ルートに限られる現状では、将来的な混雑や災害対応への不安が指摘されています。こうした背景を踏まえ、大阪府と大阪市は、北側からのアクセス強化に向けて複数のルート案を比較・検討しました。
検討対象は答申路線と既設活用案の4ルート
今回の検討では、次の4つの鉄道路線を対象としています。いずれも夢洲へのアクセス改善を目的としていますが、答申路線は新規整備主体を必要とする一方で、検討路線は既設路線を活用することで整備コストの抑制や建設リスクの軽減が期待されています。
【答申路線】
北港テクノポート線(新桜島〜舞洲〜夢洲)
中之島新線延伸(中之島〜西九条〜新桜島)
【検討路線】
JR桜島線延伸(桜島〜舞洲〜夢洲)
京阪中之島線延伸(中之島〜九条)
費用・便益・輸送人員の比較
| 路線 | 事業費 | 想定輸送人員 | 費用便益比(B/C) |
|---|---|---|---|
| 答申路線 | 約3,700億円 | 約69,100人/日 | 0.7~0.8 |
| JR桜島線延伸 | 約2,850億円 | 約94,400人/日 | 1.0~1.3 |
| 京阪中之島線延伸 | 約660億円 | 約30,000人/日 | 1.1~1.2 |
| JR+京阪合算(検討路線) | 約3,510億円 | 約124,400人/日 ※ | 約1.1~1.2(合算) |
検討の結果、JR・京阪の既設延伸案が、事業費・費用対効果・輸送人員のいずれにおいても答申路線を上回ると評価されました。また、収支見通しについても、答申路線は40年以内に黒字転換できない一方、JR・京阪案は「概ね良好」とされています。
※夢洲アクセス鉄道に関する検討について〔概要〕では合計12.1万人/日となっており、JR+京阪の合計値とマッチしない
所要時間・接続性の改善効果

JR案では、夢洲~新大阪間の所要時間が約34分から約25分へ短縮され、乗換も2回から0回になります。京阪案では、京都方面との接続が向上し、祇園四条駅から夢洲まで乗換1回・約11分短縮される見込みです。九条駅を交通結節点とすることで、京阪・阪神・Osaka Metroが連携し、都心とベイエリアをつなぐ東西軸の形成にもつながります。
整備時期と予測年次の想定
今回の検討では、鉄道延伸の開業時期を2037年ごろと設定し、その後の定着を見込む2040年を予測対象年次としています。法令手続きや工事期間などを踏まえた、現実的なスケジュールが想定されています。なお、2040年には近畿圏全体の常住人口が約12%減少すると推計されていますが、夢洲周辺は大規模集客施設の整備により、安定した鉄道需要が見込まれています。
大阪府・市は今後、運行計画や整備主体の検討を深めつつ、事業費や需要予測の精査を進めるとしています。特に、物価上昇や沿線開発の動向を踏まえた柔軟な対応が求められます。2030年のIR開業に間に合わせるには、2027年ごろまでに事業化の判断が必要になる可能性もあり、今後の動向が注目されます。




