大和ハウス工業は、富山市が進める「富山市公設地方卸売市場再整備事業」において、市場関連施設となる「にぎわい施設」を2026年2月6日に着工します。
本施設の竣工をもって、本事業におけるすべての工事が完了し、2026年秋に全施設が開業する予定です。本再整備事業は2022年2月から段階的に進められており、卸売市場機能の再構築と民間活力を活用した収益施設整備を同時に進める、PPP手法を活用した先進的な取り組みです。
市場に人を呼び込む「にぎわい施設」の整備概要
今回着工する「にぎわい施設」は、富山市公設地方卸売市場の敷地内に整備される市場関連の複合商業施設です。地域の日常生活インフラとしての市場機能を維持しながら、観光資源としての魅力発信を担う拠点として位置付けられています。
にぎわい施設 概要
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名称:にぎわい施設
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構造・規模:平屋建て・重量鉄骨造
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延床面積:約1,630㎡(493.35坪)
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店舗区画:最大18店舗
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事業主・設計:大和ハウス工業株式会社
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施工:塩谷建設株式会社
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着工:2026年2月6日
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竣工:2026年8月31日
施設内には、公設市場関係者による新鮮な生鮮食品や加工品を販売する物販店に加え、地元食材を活用した海鮮丼、定食、ラーメンなどを提供する飲食店の誘致が予定されています。
内装デザインは「昭和レトロのまちなみ」をコンセプトとし、来場者が視覚的にも楽しめる空間を演出します。また、富山市公設地方卸売市場と連携した賑わい創出イベントの開催も検討されており、市場を通じて地域の魅力向上を図る計画です。
富山市公設地方卸売市場再整備事業の全体像

本事業は、1973年5月に開設された富山市公設地方卸売市場(開設時名称:「富山市中央卸売市場」)について、施設の老朽化や取扱数量の減少といった課題を背景に、PPP手法を活用して再整備を行うものです。事業主体は、大和ハウス工業を代表企業とし、地元設計事務所や市場事業者などで構成される「新とやまいちば創生プロジェクトチーム」です。
本事業の特徴的なスキーム
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市有地を大和ハウス工業が32年間借り上げ
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民間が市場施設を建設し、富山市に貸し出す方式
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富山市の初期財政負担を抑制
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市場施設のコンパクト化により生じた余剰地を、民間収益施設として活用
卸売市場施設の再整備において、市が建設主体とならず、民間が整備・保有し市が利用するというスキームは、日本初の取り組みとされています。
これまでの整備実績と今後の工程
本事業は、市場機能を止めることなく段階的に進められてきました。
既存市場施設
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青果棟/関連店舗・事務所棟
構造:2階建て重量鉄骨造/3階建て重量鉄骨造
竣工:2023年1月31日 -
水産棟
構造:2階建て重量鉄骨造
竣工:2024年6月28日 -
空箱再生施設棟
構造:平屋建て重量鉄骨造
竣工:2025年3月28日
商業施設棟
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ゼビオ/ヤマダデンキ/ドラッグトップス/平和堂
2025年10月より順次着工
2026年8月31日竣工予定
これらに「にぎわい施設」が加わることで、2026年8月に全棟が竣工し、2026年秋に全面開業を迎えます。
【考察】卸売市場再整備を「都市装置」として再設計するPPP
卸売市場が抱える構造的課題
卸売市場は本来、市民の食を支える基幹インフラです。一方で近年は、
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施設更新コストの増大
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物流・衛生基準の高度化
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市場取扱量の減少
といった要因から、従来型の公設・公営モデルだけでは維持が難しい局面にあります。
富山市の再整備は、こうした課題に対し、
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市場機能の再構築(コンパクト化・高機能化)
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民間の資金・ノウハウを活用
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市場を「閉じた業務空間」から「開かれた都市空間」へ転換
という複数の政策目的を重ね合わせた点に特徴があります。
「にぎわい施設」の政策的意味
にぎわい施設は、単なる付帯商業ではありません。
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市場の存在を市民に可視化する
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市場関係者の販路を拡張する
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食文化を軸とした交流・滞在の場をつくる
といった需要側から市場を支える装置として設計されています。「昭和レトロ」というデザインコンセプトも、効率性より体験価値を重視した空間設計といえます。
財政運営とリスク分担の再設計
32年間の土地賃借と民間建設というスキームにより、
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市は初期投資の集中を避け、財政支出を平準化
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建設・収益リスクの一部を民間が負担
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公は市場としての公共性と供給責任を維持
という役割分担が成立しています。余剰地の商業活用は、インフラ更新を土地利用再編と一体で行う都市政策的アプローチでもあります。
卸売市場PPPのモデルケースとしての可能性
本事業は、
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卸売市場という止められないインフラを段階更新
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民間収益施設を組み合わせた持続性確保
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市場を地域に開くことで新たな価値を付加
という点で、今後の地方都市における卸売市場再整備の先行モデルとなる可能性を持っています。2026年秋の全面開業後、「にぎわい施設」が市場とどのように連動し、物流拠点と地域拠点を兼ね備えた新しい市場像を形にしていくのか。その運営フェーズこそが、本事業の成否を左右する重要な局面となりそうです。
出典・参考資料
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大和ハウス工業株式会社
「富山市公設卸売市場で市場関連施設『にぎわい施設』を開発」
(ニュースリリース/2026年2月5日) -
大和ハウス工業株式会社
サステナビリティ特集
「PPPを活用した富山市公設地方卸売市場再整備事業(新とやまいちば創生プロジェクト)」 -
富山市
富山市公設地方卸売市場 再整備事業 関連資料
(市場概要、立地条件、再整備方針) -
国土交通省
PPP/PFI 推進施策・官民連携事業に関する解説資料 -
農林水産省
卸売市場制度・卸売市場再編に関する制度解説資料




