JR西日本が2025年度の区間別平均通過人員(輸送密度)を公表!首位34.3万人・最下位25人。万博で幹線が伸長、ローカル線32区間は実質横ばい



JR西日本は、2025年度の区間別平均通過人員(輸送密度)を公表しました!

輸送密度とは、1日1km当たりの平均利用者数を示す指標です。首位は東海道線・大阪~神戸間の34万3,164人、最下位は芸備線・東城~備後落合間と木次線・出雲横田~備後落合間の各25人でした。輸送密度2,000人未満の区間は、前年度と同じ19路線32区間です。

今回の数字から浮かび上がるのは、JR西日本の利用が一様に回復した姿ではありません。大阪・関西万博、インバウンド、新幹線、空港アクセスなどが幹線需要を押し上げる一方、地方ローカル線の構造的な低利用は、ほとんど改善していません。

2025年度のポイント 実績 数字が示すもの
輸送密度トップ 大阪~神戸:343,164人 京阪神の基幹軸に需要が集中
輸送密度最下位 2区間で各25人 首位との差は約1万3,700倍
2,000人未満 19路線32区間 前年度から変化なし
1,000人未満 14路線26区間 前年度から1路線1区間減少
低密度32区間の加重平均 約624人 前年度比約1%増にとどまる
JR西日本の運輸収入 9,479億円 前年度比6.2%増
※1,000人未満の区間数、加重平均、首位と最下位の倍率は公表値を基に算出。運輸収入はJR西日本単体。

輸送密度ベスト20 京阪神と山陽新幹線が上位を占める


順位 路線・区間 2025年度 2024年度 前年比
1 東海道線・大阪~神戸 343,164 339,152 +1.2%
2 東海道線・京都~大阪 332,855 324,865 +2.5%
3 大阪環状線・天王寺~新今宮 282,177 272,423 +3.6%
4 山陽線・神戸~姫路 193,280 190,104 +1.7%
5 阪和線・天王寺~日根野 156,794 154,767 +1.3%
6 山陽新幹線・新大阪~岡山 124,261 115,937 +7.2%
7 JR東西線・京橋~尼崎 115,198 113,336 +1.6%
8 東海道線・米原~京都 111,369 108,835 +2.3%
9 桜島線・西九条~桜島 106,384 97,070 +9.6%
10 関西線・王寺~JR難波 101,401 99,835 +1.6%
11 山陽新幹線・岡山~広島 97,652 91,230 +7.0%
12 福知山線・尼崎~新三田 80,345 79,381 +1.2%
13 片町線・木津~京橋など 70,858 69,503 +1.9%
14 山陽新幹線・広島~博多 58,498 55,385 +5.6%
15 おおさか東線・新大阪~久宝寺 48,474 46,530 +4.2%
16 山陰線・京都~園部 41,528 41,166 +0.9%
17 山陽線・白市~広島 41,081 40,251 +2.1%
18 山陽線・広島~岩国 40,953 39,700 +3.2%
19 宇野線・岡山~茶屋町 40,457 38,879 +4.1%
20 湖西線・山科~近江塩津 34,442 33,034 +4.3%
単位は人/日。路線全体と内訳区間の重複を避けるため、内訳区間を優先して集計しています。

ベスト20は、すべて前年度を上回りました。なかでも伸びが目立つのが、万博アクセスを担った桜島線と、西日本各地から大阪への広域移動を支えた山陽新幹線です。桜島線・西九条~桜島間は前年比9.6%増、山陽新幹線は新大阪~岡山間が7.2%増、岡山~広島間が7.0%増、広島~博多間が5.6%増となりました。大阪・関西万博に伴う来場需要に、インバウンドや国内観光、ビジネス需要の回復が重なった結果です。

一方、東海道線、JR東西線、福知山線など、通勤・通学需要を基盤とする都市圏路線の伸びは、おおむね1~2%台にとどまりました。2025年度の輸送増は、日常的な通勤需要が全面的に戻ったというより、観光、イベント、都市間移動といった定期外需要が主導したものと捉えるべきです。

輸送密度ワースト10 5区間が100人未満


低い順 路線・区間 2025年度 2024年度 前年比
1 芸備線・東城~備後落合 25 19 +31.6%
1 木次線・出雲横田~備後落合 25 23 +8.7%
3 芸備線・備中神代~東城 83 81 +2.5%
4 芸備線・備後落合~備後庄原 89 76 +17.1%
5 姫新線・中国勝山~新見 95 99 ▲4.0%
6 因美線・東津山~智頭 109 137 ▲20.4%
7 大糸線・南小谷~糸魚川 135 150 ▲10.0%
8 福塩線・府中~塩町 144 158 ▲8.9%
9 山陰線・益田~長門市 197 210 ▲6.2%
10 山陰線・長門市~小串、長門市~仙崎 207 185 +11.9%
単位は人/日。被災による長期運転見合わせ期間を含めて算出された区間があります。

最下位の芸備線・東城~備後落合間は、前年比31.6%増となりました。しかし、実数では19人から25人へ増えたにすぎません。利用者の絶対数が少ない区間では、数人の変動だけで増減率が大きく振れます。ローカル線の実態を捉えるうえでは、伸び率よりも利用者数そのものを見る必要があります。

コロナ前に戻ったのではなく、需要の重心が移った



2019年度との比較からは、鉄道需要の構造変化がより明確に見えてきます。通勤需要を基盤とする路線はコロナ前を下回る一方、空港、イベント、都市間輸送を担う路線は2019年度を上回りました。
路線・区間 2019年度 2025年度 2019年度比
東海道線・京都~大阪 350,717 332,855 ▲5.1%
東海道線・大阪~神戸 385,049 343,164 ▲10.9%
JR東西線・京橋~尼崎 125,493 115,198 ▲8.2%
大阪環状線 292,574 282,177 ▲3.6%
桜島線・西九条~桜島 88,074 106,384 +20.8%
おおさか東線・新大阪~久宝寺 34,817 48,474 +39.2%
関西空港線・日根野~関西空港 29,670 33,428 +12.7%
山陽新幹線・新大阪~岡山 116,500 124,261 +6.7%
山陽新幹線・岡山~広島 91,436 97,652 +6.8%
おおさか東線はネットワーク拡充後の利用定着、桜島線は万博、関西空港線はインバウンド、山陽新幹線は観光・ビジネス需要が追い風となりました。

対照的に、東海道線やJR東西線は、万博が開催された2025年度でも2019年度の水準に届いていません。

これは、利用者が単純にコロナ前へ戻ったのではなく、毎日決まった時間に都心へ通う需要から、観光、イベント、空港アクセス、都市間移動へと、鉄道需要の重心が移ったことを示しています。

低密度32区間は「18区間増加」でも実態は横ばい

輸送密度2,000人未満の32区間では、18区間が前年度を上回り、14区間が下回りました。しかし、営業キロで加重した平均輸送密度は約618人から約624人へ増えたにすぎず、伸び率は約1%です。
低密度区間の動向 2024年度 2025年度 評価
2,000人未満 19路線32区間 19路線32区間 対象数は変わらず
1,000人未満 15路線27区間 14路線26区間 1区間のみ改善
営業キロ加重平均 約618人 約624人 約1.0%増
増加・減少区間 18増・14減 全体ではほぼ横ばい
1,000人未満から外れたのは、関西線・亀山~加茂間が978人から1,065人へ増えたためです。

また、全体の伸びには同区間と、紀勢線・新宮~白浜間の改善が大きく寄与しています。この2区間を除く30区間の加重平均は、ほぼ横ばいながら、わずかに低下しました。

つまり、低利用路線全体が底上げされたわけではありません。比較的利用の多い一部区間が改善した一方、極端に利用者の少ない区間では、構造的な低利用が続いています。

利用者が多少増えても、収支構造は変わらない



JR西日本が公表した2022~2024年度の3年間平均を合計すると、輸送密度2,000人未満の32区間は、線区運輸収入約40.5億円に対し、線区営業費用は約307.8億円でした。

単純計算では、100円の収入を得るために約760円の費用がかかります。しかも、この営業費用には本社や支社の管理費が含まれていません。
経営指標〔2022~2024年度平均〕 32区間合計・代表例
線区運輸収入 約40.5億円
線区営業費用 約307.8億円
単純な収支差 約267.3億円
100円の収入に必要な費用 約760円
芸備線・東城~備後落合 9,945円
芸備線・東城~備後落合間は、年間収入約200万円に対し、営業費用は約2億円です。仮に輸送密度が25人から50人へ倍増しても、固定費の大きい鉄道の収支構造を変える規模には届きません。

ローカル線では、線路、橋梁、トンネル、信号、駅、車両といった設備を、利用者数にかかわらず維持する必要があります。そのため、利用者が数%、あるいは数十%増えたとしても、絶対数が極端に少なければ採算改善には直結しません。

ただし、輸送密度2,000人という数字を、そのまま廃止基準とみなすべきではありません。通学需要、代替道路の有無、路線の長さ、災害リスク、橋梁やトンネルの維持費、広域ネットワーク上の役割を総合的に評価する必要があります。

万博特需の反動を、基礎需要でどこまで補えるか



JR西日本の2025年度の単体運輸収入は、前年度比6.2%増の9,479億円でした。万博とインバウンドに加え、山陽・北陸新幹線を中心に国内の観光・ビジネス需要も伸びています。

したがって、2025年度の好調をすべて一過性の万博特需と見るのは適切ではありません。

一方、2026年度の運輸収入計画は9,460億円と、2025年度比0.2%減です。JR西日本は、万博効果の剥落などによる減収を、国内需要、インバウンド、営業施策でほぼ補う計画を示しています。

これは利用水準が急落するというより、2025年度に記録した高い伸び率が平常化することを意味します。今後の焦点は、万博という大型イベントがなくなった後も、新幹線や都市圏在来線の基礎需要をどこまで伸ばせるかです。

鉄道の強みを発揮できる区間と、交通体系を組み直す区間



2025年度の輸送密度が示したのは、単なる「都市部好調、地方不振」という対比ではありません。

高速性、直通性、輸送力、ネットワーク効果を発揮できる新幹線、都市圏路線、空港・イベントアクセスでは、鉄道需要はなお成長できます。一方、人口密度が低く、自動車中心の地域では、鉄道が持つ固定費の大きさに対し、利用者の絶対数が不足しています。

都市圏や新幹線では、輸送力の増強、駅改良、沿線開発などを通じて、需要をさらに取り込む余地があります。

これに対し、極端な低利用区間では、鉄道を残すか廃止するかという二者択一ではなく、BRT、路線バス、デマンド交通を含め、地域の移動をどのような仕組みで持続させるかを考える必要があります。

2025年度は、JR西日本の利用が全面的に回復した年ではありません。人が乗る鉄道と、需要構造が変わらない鉄道との差が、これまで以上に鮮明になった年です。




出典

JR西日本「2025年度区間別平均通過人員(輸送密度)について」
JR西日本「2026年3月期決算・中期経営計画2030説明会資料」
JR西日本「輸送密度2,000人/日未満の線区別経営状況に関する情報開示」
JR西日本「区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2019年度)」

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