
南海電気鉄道は2014年5月15日に、大阪府などが出資する第3セクターで「泉北高速鉄道」を運営する大阪府都市開発(OTK)の株式を取得し、子会社化すると発表しました。取得総額は約750億円です。
OTK は大阪府が 49%を出資するほか関西電力なども出資する第三セクターで、同社グループは、泉北高速鉄道事業(中百舌鳥駅~和泉中央駅間、中百舌鳥駅で南海電鉄と相互直通運転)、流通センター事業(大阪府内 2 か所にあるトラックターミナルおよび流通倉庫など)、およびパンジョ事業(泉北タカシマヤをキーテナントとする泉北高速鉄道泉ヶ丘駅前のショッピングセンター)などを展開しています。

OTK株の売却をめぐっては昨年、財政再建を目指す大阪府が売却のための入札を行い、米投資ファンドのローンスターが780億円を提示。次点となった南海の提案額720億円を上回り、優先交渉権を獲得しました。
しかし、ローンスターが大阪府に提示した乗継運賃の引き下げ案をめぐり、南海側の案よりも引き下げ幅が小さいとして地元沿線住民らが反発、大阪府議会は昨年12月、ローンスターへの売却に向けた議案を否決した為、OTK株の売却は宙に浮くこととなりました。その後、大阪府はOTK株を随意契約で売却する方向で検討を進め、結局、南海電鉄へ売却する事になりました。

譲渡契約の内容ですが、まず株式・事業譲渡制限はともに15年間と、公募時よりも延長されました。また、鉄道事業の運営に関する主要な項目は以下の通りです。沿線住民の方はメリットが大きいですね。
・乗継割引の現行一律20円から一律100円への拡大(例:難波~和泉中央は現行630円から550円に値下げ)
・通学定期割引率の約60%から約70%への拡大(例:中百舌鳥~泉ヶ丘の通学定期6ヶ月が現行29,380円から値22,040円に値下げ)
・通勤特急の新規運行の検討
・女性専用車両導入の検討
・高齢者向け割引乗車券他企画乗車券の検討
・駅商業施設の充実の検討

南海電鉄はOTKの買収資金を全額外部資金で賄う為、同社の有利子負債は増加します。しかし、OTKは年間売上高151億円、営業利益44億円(14年3月期)を稼ぎだす超優良企業なので、南海電鉄にとっては今回のOTK取得は中長期的にはメリットが大きいと思われます。

米投資ファンドのローンスタはOTKが東大阪市と茨木市に所有しているトラックターミナル事業(おそらく土地)に魅力を感じ、入札したと言われていますが、今回の府と南海電鉄の随時契約によると株式や事業の譲渡が15年間制限されており、トラックターミナルも事業の継続をしなければなりません。
今回の南海電鉄によるOTKの買収は沿線住民にとっては満点に近い内容で結果オーライ!と言いたい所ですが、最初に優先交渉権を獲得したローンスターとの契約を府議会がひっくり返した事は非常にまずかったと思います。外資に対するアレルギー反応は分かるのですが、今回のちゃぶ台返しは今後の海外投資に暗い影を落とすかもしれません。海外から投資を呼び込んで経済成長につなげる為に、今後はこのようなちゃぶ台返しは極力なくさないと外資の誰からも相手にされなくなってしまうなぁ・・・と思いました。

