万博の大屋根リング木材を能登の復興住宅へ! 珠洲市買取型復興公営住宅整備事業(仮称)大谷町団地 珠洲市で始まる大屋根リング木材の再利用計画


大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」の木材を、石川県珠洲市の復興公営住宅に再利用する計画が具体化してきました。対象となるのは、珠洲市大谷町で整備が進む「(仮称)大谷町団地」です。万博を象徴した巨大木造建築の資材が、被災地で人々の暮らしを支える恒久住宅へ生まれ変わろうとしている。この取り組みは、復興と公営住宅整備、そして木材の循環利用が重なる事例として注目されています。

計画の概要


珠洲市の募集要項によると、計画地は石川県珠洲市大谷町地内で、敷地面積は約7,000㎡です。整備戸数は40戸。住戸構成は1LDKが16戸、2LDKが19戸、3LDKが5戸となっています。事業方式には、民間事業者が住宅を設計・整備し、完成後に市が買い取る「買取型」が採用されました。

この事業のポイントは、大屋根リング木材の活用が後から付け足されたものではない点です。珠洲市は公募の段階から、リング木材を主要構造材などに活用することを条件として盛り込みました。令和6年能登半島地震で住宅を失った被災者の居住安定を早期に図ること。あわせて、万博のレガシーを復興住宅として引き継ぐこと。この2つを最初から一体の目的として組み込んでいたことに、この事業の特徴があります。

事業者選定は2026年2月25日に行われ、大和ハウス・アイディホーム・坂茂建築設計グループが選ばれました。珠洲市は、住宅供給体制に加え、住まいとまちづくりへの提案内容、施工計画、工期、売買価格などを総合的に審査したうえで選定しています。

木材活用はどう進んでいるのか


大屋根リング木材の再利用は、万博協会が運営する「万博サーキュラーマーケット ミャク市!」を通じて進められてきました。2026年1月の公表では、2025年6月から11月までに3回の公募を実施し、46者に対して合計約3,700本、3,300m3の木材を譲渡する予定とされています。さらに2026年3月の公表では、2026年2月までの4回分を合計した譲渡予定量は約4,000m3に達しました。

そのなかでも珠洲市は、有力な活用先のひとつです。万博協会の資料によると、珠洲市に譲渡される木材は1,191m3です。報道では本数で紹介されることもありますが、公式資料で確認できるのは体積ベースの数字です。

木材活用の体制づくりも進んでいます。2026年1月26日には、MUIC Kansai、珠洲市、ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)、ファーストウッドの4者が、木材の運搬管理と活用計画に関する協定を締結しました。解体した木材を運ぶだけではなく、保管、点検、運搬、活用までを見据えた枠組みが整った形です。

工程は、2026年2月から8月頃にかけてリング木材の解体・運搬を進め、その後の保管・点検を経て、住宅建設は2026年12月から2028年1月頃までを見込んでいます。仮設的な対応ではなく、生活再建を支える恒久住宅として整備される点に、この計画の重みがあります。

なぜ注目されるのか


この計画が注目される最大の理由は、万博レガシーの扱い方にあります。大屋根リングは、建築面積61,035.55㎡を持つ巨大木造建築で、2025年3月には「世界最大の木造建築物」としてギネス世界記録に認定されました。全周約2,025mという規模も含め、今回の大阪・関西万博を象徴する建築だったことは間違いありません。

その木材が、能登の復興公営住宅に使われる。計画の意味はまさにそこにあります。大屋根リングを保存するか、解体するかという二者択一ではなく、役割を変えながら社会の中で使い継いでいく道を示したからです。万博を象徴した建築の資材が、会期後は被災地の暮らしを支える住宅へと引き継がれる。この流れは、万博レガシーを具体的な形で社会に残していく試みとして、非常に示唆的です。


建築面から見ても、この計画は見どころが多い案件です。珠洲市が公表した提案パースでは、「大屋根リングの記憶を継承する、明快な架構とゆとりの住まい」というコンセプトが示されています。単に資材を再利用するだけではなく、万博を象徴した建築の記憶を、日々の暮らしを支える住環境へどう引き継ぐかまで視野に入れた計画になっています。

加えて、この事業には坂茂建築設計が事業者グループの一員として参加し、VANも木材活用に関する協定に加わっています。災害時の住まいづくりに実績を持つ主体が関わりながら、リング木材の再利用を復興住宅へ具体的につなげていく。この体制自体が、このプロジェクトの重みを物語っています。

このプロジェクトが示すもの


珠洲市にとっての直接的な成果は、40戸の恒久住宅が整備されることです。ただ、この計画の価値は戸数だけでは測れません。令和6年能登半島地震に加え、同年9月の奥能登豪雨でも被害を受けたこの地域にとって、住まいの再建は復興の土台そのものです。そこに、全国的に知られた万博のシンボル建築が資源として組み込まれることで、復興の取り組みがより可視化される側面もあります。

万博側にとっても、この計画は小さくありません。大屋根リングは建設時から、その規模や費用、閉幕後の扱いをめぐって議論を集めてきました。だからこそ、その木材が被災地の住まいへ引き継がれることには重みがあります。リングを一過性のイベント建築で終わらせず、閉幕後も社会の中で機能する資産として位置づけ直す動きだからです。

さらにこの案件は、巨大木造建築の構造材を公共住宅へ転用する実証例でもあります。大型イベント建築のレガシーをどう設計し、どう使い継ぐのか。木造建築と公共政策の両面から見ても、今後につながる示唆を含んだ取り組みと言えます。

まとめ

この計画の本質は、万博の木材を再利用すること自体にあるのではありません。問われているのは、巨大イベントの象徴を、被災地の暮らしへどう着地させるかです。珠洲市の「(仮称)大谷町団地」は、その問いに対するひとつの具体的な答えになろうとしています。

能登の復興案件として重要であることはもちろん、万博レガシーの価値を閉幕後にどう示すのかという点でも、見逃せないプロジェクトです。今後の焦点は、設計の具体化、木材活用の実装方法、そして最終的にどのような住環境として結実するかに移っていきます。






参考・出典

・珠洲市「珠洲市買取型復興公営住宅整備事業[(仮称)大谷町団地](大阪・関西万博大屋根リング活用事業)」
・珠洲市「珠洲市買取型復興公営住宅整備事業について」
・大阪・関西万博公式サイト「万博会場のシンボル『大屋根リング』がギネス世界記録™に世界最大の木造建築物として認定」
・大阪・関西万博公式サイト「大屋根リング」
・MUIC Kansai「大屋根リングを活用した石川県珠洲市復興事業の支援に関する協定締結」

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