
Osaka Metroは2026年6月29日に、「鉄道駅バリアフリー料金制度に関する整備等計画の進捗状況等」を発表しました。同社は、すべての利用者がより便利で快適に、安心して地下鉄を利用できる環境づくりを目的に、駅のエレベーターや可動式ホーム柵などの整備・維持に同制度を活用しています。
2025年度のバリアフリー料金徴収額は67億9,900万円。一方、同年度のバリアフリー整備費は150億3,700万円でした。徴収額の約2.2倍にあたる規模が、ホームドア、エレベーター、段差・隙間対策、案内設備などに投じられました。
鉄道駅バリアフリー料金制度により、普通券・IC利用では10円、通勤定期券では大人1か月380円が加算されています。利用者負担は少し増えましたが、その負担は駅の安全性と移動しやすさを高める形で、着実に還元されています。
徴収額を上回る規模で駅に再投資
今回の資料でまず押さえたいのは、徴収額と整備費の関係です。| 項目 | バリアフリー料金徴収額 | バリアフリー整備費 | 読み解き |
|---|---|---|---|
| 2025年度単年 | 67億9,900万円 | 150億3,700万円 | 徴収額の約2.2倍を整備に投入 |
| 2021〜2025年度累計 | 185億7,300万円 | 411億6,900万円 | 5年間累計でも徴収額を大きく上回る投資規模 |
利用者に追加負担を求める制度だからこそ、使途の透明性は重要です。その点で、今回の実績は分かりやすいものです。集めた料金を上回る規模で、駅の安全対策とバリアフリー化に投資していることが数字で確認できます。
2025年度はホームドア20駅40番線を供用開始

2025年度の主な整備実績を見ると、ホームドアは20駅40番線で供用開始しました。対象は大日ほか19駅で、これにより計画上のホームドア整備は進捗率100%に到達しています。
エレベーターは7駅8基で、東三国、なかもず、中崎町、野田阪神、日本橋、今里、大正が対象です。段差・隙間縮小に資する設備は20駅41番線で整備されました。さらに、淀屋橋、本町、天王寺、弁天町、谷町四丁目の5駅では音案内の整備も行われています。
| 2025年度の主な整備 | 実績 | 主な内容 |
|---|---|---|
| ホームドア | 20駅・40番線 | 大日ほか19駅 |
| エレベーター | 7駅・8基 | 東三国、なかもず、中崎町、野田阪神、日本橋、今里、大正 |
| 段差・隙間縮小設備 | 20駅・41番線 | 太子橋今市、花園町、緑橋ほか |
| 音案内 | 5駅 | 淀屋橋、本町、天王寺、弁天町、谷町四丁目 |
5年間でホームドア98番線、エレベーター11駅12基

2021年度から2025年度までの累計では、ホームドアは48駅98番線で整備され、進捗率100%となりました。エレベーターも11駅12基で、こちらも進捗率100%です。
段差・隙間縮小設備は、計画37駅76番線に対し、2021〜2025年度時点では36駅74番線、進捗率97%でした。ただし、未完了分も2026年4月4日に整備完了済みとされています。
| 2021〜2025年度累計 | 計画数 | 実績 | 進捗率 |
|---|---|---|---|
| ホームドア | 48駅・98番線 | 48駅・98番線 | 100% |
| エレベーター | 11駅・12基 | 11駅・12基 | 100% |
| 段差・隙間縮小設備 | 37駅・76番線 | 36駅・74番線 | 97% |
二経路以上確保駅も、2023年度の1駅から、2024年度3駅、2025年度7駅へと増えました。5年間の累計は11駅です。整備は後半に集中しましたが、結果としてホームドアとエレベーターは計画通り完了しました。
2035年度までにさらに1,060億円規模を投資
Osaka Metroのバリアフリー投資は、ホームドア整備の完了で終わるわけではありません。同社のバリアフリー整備・徴収計画では、2026年度から2035年度までの10年間に、1,060億8,900万円を投じる計画です。2021年度から2025年度までの計画額414億5,500万円と合わせると、総整備費は1,475億4,400万円にのぼります。
一方、鉄道駅バリアフリー料金の徴収期間は2023年4月から2036年3月までの13年間で、総徴収額は757億1,500万円です。長期計画で見ても、徴収額を上回る整備投資を行う構図は変わりません。
| 区分 | 期間 | 金額 |
|---|---|---|
| 2021〜2025年度の整備計画 | 2021年4月〜2026年3月 | 414億5,500万円 |
| 2026〜2035年度の整備計画 | 2026年4月〜2036年3月 | 1,060億8,900万円 |
| 総整備費 | 2021年4月〜2036年3月 | 1,475億4,400万円 |
| 総徴収額 | 2023年4月〜2036年3月 | 757億1,500万円 |
さらに、御堂筋線では18編成180両の車両更新を行い、ホームと車両の段差解消を目的とした低床化を進める計画です。今後の1,060億円規模の投資は、駅設備だけでなく、車両を含む移動環境全体のバリアフリー化に広がっていきます。
| 整備内容 | 2026〜2035年度の計画 | 整備費 |
|---|---|---|
| エレベーター整備 | 20駅・33基 | 150億円 |
| エスカレーター整備 | 15駅・20基 | 63億円 |
| 段差・隙間縮小設備 | 11駅・22番線 | 9億円 |
| 音案内設備 | 112駅 | 10億円 |
| 御堂筋線車両更新・低床化 | 18編成・180両 | 360億円 |
| 維持管理費 | — | 202億2,700万円 |
次の焦点は二経路化

今後の計画で特に注目されるのが、二経路以上確保駅の整備です。Osaka Metroは、2026年度から2030年度までに10駅、2031年度から2035年度までにさらに10駅、合計20駅を整備する計画です。
| 期間 | 二経路以上確保駅の整備計画 | 年度別の進め方 |
|---|---|---|
| 2026〜2030年度 | 10駅 | 2駅、1駅、3駅、2駅、2駅 |
| 2031〜2035年度 | 10駅 | 毎年度2駅ずつ |
| 2026〜2035年度合計 | 20駅 | 10年間で段階的に整備 |
複数ルートが確保されれば、車いす利用者、ベビーカー利用者、高齢者、大きな荷物を持つ旅行者にとって、駅の使いやすさは大きく変わります。ホームドアでホーム上の安全性を高めた後は、駅構内をどれだけ安定して移動できるかが次のテーマになります。
利用者負を、都市交通の価値に変える

鉄道駅バリアフリー料金制度は、利用者に追加負担を求める制度です。そのため、「値上げ」として受け止められやすい面があります。
しかし、今回の実績は、その負担がどのように駅と車両へ戻っているのかを数字で示しました。徴収額を上回る規模で整備を進め、さらに今後は二経路化や御堂筋線車両の低床化にも投資を広げていきます。
これは単なる制度対応ではなく、都市鉄道の品質を長期的に高める再投資です。Osaka Metroのバリアフリー整備は、ホーム上の安全対策から、駅全体、さらに車両を含む移動品質の向上へ進んでいます。
利用者負担を伴う制度だからこそ、その負担を上回る規模で利用者に返している点は、今回の公表で最も伝えるべきポイントといえます。
出典・参考資料
- Osaka Metro「鉄道駅バリアフリー料金制度に関する整備等計画の進捗状況等について」
- Osaka Metro「2025年度 バリアフリー整備等実績」
- Osaka Metro「2021年度〜2025年度 バリアフリー整備等実績」
- Osaka Metro「鉄道駅バリアフリー料金制度を活用したバリアフリー整備・徴収計画」
- Osaka Metro「鉄道駅バリアフリー料金制度の活用によるバリアフリー設備の整備等について」
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