滋賀県初の高専が本格着工!野洲に178億円の新キャンパス、2028年4月開校へ 「ものづくり県なのに高専がない」を解消


出展:滋賀県立高等専門学校

滋賀県野洲市で、県内初となる「滋賀県立高等専門学校」の建設が本格化しました。2026年8月2日に起工式が行われ、約5haの敷地に延床約1万8500㎡のキャンパスを整備。文部科学省の設置認可を前提に、2028年4月の開校を目指します。

滋賀県は県内総生産に占める製造業比率が41.8%で全国1位という「ものづくり県」でありながら、これまで県内に高専がありませんでした。

今回の新設は、その空白を埋め、県内産業を支える技術者を地域の中で育てるための人材インフラ整備と見ると、その狙いがよく分かります。

滋賀県立高専の概要


項目 内容
所在地 滋賀県野洲市市三宅
開校予定 2028年4月
設置・運営 公立大学法人滋賀県立大学
入学定員 1学年120人
学生数 約600人
敷地面積 49,552㎡(約4.96ha)
延床面積 約18,500㎡
総事業費 約178億円
施設整備費 約152億円
学生寮 約50人
最寄駅 JR野洲駅から約1.3km
約5haのうち、校舎敷地は約3.66ha。約1.16haは森林を残す「環境保全・共生エリア」とします。

なぜ滋賀に高専なのか


出展:滋賀県立高等専門学校

滋賀県は京阪神と中京圏の中間にあり、機械、電気、化学、医薬品などの工場や研究開発拠点が集積しています。

一方、その製造業を支える高度な技術者を15歳から育成する高専は、県内に1校もありませんでした。

そこで県は高度専門人材の育成策を検討し、県立大学や経済界と連携して新設を具体化。今回の高専は、「学校を1校増やす」のではなく、滋賀県内で技術者を育成し、県内企業へつなぐ人材供給網を新たにつくるプロジェクトです。

全員がまず「情報」を学ぶ新しい高専

教育内容も、新設校らしい構成です。

1年次は120人全員が情報技術を基盤として学び、2年次から4分野に分かれます。
分野 主な領域
情報系 IT、AI、データ
電気電子系 電気、電子、制御
機械系 機械、ものづくり
建設・環境系 建設、環境、防災
ポイントは、機械系や建設系を含む全学生が情報技術を学ぶことです。

現在の製造業では、AI、IoT、データ解析、ソフトウェア、制御技術が機械や電気と不可分になっています。滋賀県立高専は、こうした産業構造の変化を前提に、「情報技術+専門工学」を教育の基本に据えます。

約300社が参加、企業と一緒に人材を育てる


出展:滋賀県立高等専門学校

企業との連携規模も大きな特徴です。

「県立高専共創フォーラム」には2026年7月末時点で450者が参加し、このうち企業は299社に達しています。

想定される連携は次の通りです。
分野 内容
教育 企業課題を扱うPBL、講義
実務 インターンシップ
研究 共同研究、技術相談
設備 実験・研究設備の共同利用
人材 卒業後の県内企業への接続
企業を単なる「就職先」とするのではなく、教育段階から産業界を組み込む考え方です。

滋賀県がこの高専を教育政策だけでなく、産業政策として位置付けていることが分かります。

なぜ野洲なのか。「通える高専」を重視



出展:滋賀県立高等専門学校

キャンパスはJR野洲駅から約1.3km。野洲駅は琵琶湖線の新快速停車駅で、京都方面からのアクセスにも優れています。

学生寮は約50人と、全学生約600人に対して小規模です。

つまり基本的には、県内各地や京都方面から鉄道で通う「通学型高専」を想定しています。

高専というと寮生活のイメージがありますが、滋賀県立高専は駅徒歩圏に立地させることで、広域から学生を集める構成です。

約5haに5棟、地域や企業にも開く



出展:滋賀県立高等専門学校

キャンパスには5棟を整備します。
施設 延床面積
校舎棟 約10,900㎡
図書交流・食堂売店棟 約2,400㎡
実習工場・実験室棟 約2,200㎡
体育館 約1,500㎡
学生寮 約1,500㎡
合計 約18,500㎡
各建物は屋根付きの「キャンパスモール」で接続します。

図書交流・食堂売店棟には、図書館、食堂、売店に加え、共同研究室、創作工房、ホール、グループワーク室などを配置。企業や地域住民の利用も想定します。

体育館は冷暖房を備え、災害時には避難所として活用する計画です。

グラウンドは隣接する「MIZBE」と共有

特徴的なのが、学校専用の大規模グラウンドを敷地内に設けないことです。

隣接地では、国と野洲市が「野洲川MIZBEステーション」を整備しており、高専はそこに整備されるグラウンドを利用する予定です。

学校内ですべての機能を抱え込まず、周辺の公共施設と共有することで、高専用地は校舎、実験設備、交流施設などに重点配分できます。

新設校ならではの合理的なキャンパス構成ですね。

実は着工まで難航した



今回の起工式には、別の意味でも大きな節目があります。

当初は民間資金やノウハウを活用するPFI・BTO方式で整備する計画でしたが、調達は難航しました。
時期 経緯
2023年11月 PFI方式で入札公告
2024年5月 全参加者が辞退、PFI中止
2024年6月 従来型の個別発注方式へ変更
2026年4月 校舎中心の第1工区が不落
2026年6月 再入札で施工者決定
2026年8月 起工式、本格着工
2027年12月頃 建物完成予定
2028年4月 開校予定
第1工区は戸田・奥田特定建設工事JVが39億4000万円で落札。第2工区は辻寅建設、第3工区は笹川組が受注しました。

今回の起工は、PFI中止→発注方式変更→建築入札不落→再入札 という難しいプロセスを乗り越え、ようやく計画が「構想」から「建設」へ移った瞬間でもあります。

事業費は101億円から178億円へ



出展:滋賀県立高等専門学校

建設費高騰などの影響で、事業費も大きく増えました。
計画段階 総事業費
基本構想1.0 約101億円
基本構想2.0 約119億円
基本構想2.1 約170億円
最新計画 約178億円
最新の内訳は、施設整備152億円、機械・備品17億円、用地造成8億円、インフラ整備1億円です。

当初構想から施設内容も具体化しているため単純比較はできませんが、建設コストが急騰する中でも計画を前に進めている点に、滋賀県の技術人材確保に対する危機感が表れています。

滋賀が「人材」まで自前で育てる



出展:滋賀県立高等専門学校

滋賀県立高専は、2026年10月に文部科学省へ設置認可を申請し、2028年4月の開校を目指します。

 

今回、約178億円を投じて高専を新設し、全学生に情報技術を学ばせ、約300社の企業を教育に巻き込みます。

この計画の本質は、

「滋賀県初の高専ができる」ことではなく、滋賀が次世代の技術者を自前で育てる仕組みをつくることです。

工場や研究拠点を誘致するだけでは、ものづくり県を維持できません。その産業を動かす人材まで地域の中で育てる。

野洲で始まった約5haのキャンパス整備は、滋賀県が次の数十年を見据えて行う「人への投資」と言えそうです。




出典

・滋賀県立高等専門学校「滋賀県立高等専門学校新築工事 起工式を執り行いました」
・滋賀県立高等専門学校「学校概要」「学科・コース紹介」「所在地とキャンパスマップ」
・滋賀県「滋賀県立高等専門学校キャンパス模型の展示について」
・滋賀県「滋賀県立高等専門学校基本構想」
・滋賀県立大学「滋賀県立高等専門学校施設整備事業について」
・滋賀県立大学「滋賀県立高等専門学校新築工事 入札結果」
・滋賀県立高等専門学校「県立高専共創フォーラム」

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