2025年6月2日、博覧会協会は、大阪・関西万博の最新の来場実績とチケット販売状況を発表しました。これにより、開幕日である4月13日から5月31日までの累計来場者数が明らかになり、会期序盤の約1か月半における「実績値」が出そろった形です。
2週間前に実施したシミュレーション段階でも、すでに日別来場者数の底打ちと回復傾向は見え始めていましたが、この2週間でその流れが一気に加速しました。5月下旬には1日あたり15万人に迫る来場が複数日観測され、週間の来場者数も初めて100万人を突破。累計来場者数は580万人を超え、明らかにトレンドが変わりつつあります
大阪・関西万博|週別来場者推移(第1週〜第7週)
| 週 | 期間 | 一般 (週計) |
AD証 (週計) |
総来場者 (週計) |
一般 (累計) |
総来場者 (累計) |
一般 (1日平均) |
総来場者 (1日平均) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第1週 | 4/13〜4/19 | 52.5万人 | 11.5万人 | 64.0万人 | 52.5万人 | 64.0万人 | 7.5万人 | 9.1万人 |
| 第2週 | 4/20〜4/26 | 61.9万人 | 12.1万人 | 74.0万人 | 114.4万人 | 138.0万人 | 8.8万人 | 10.6万人 |
| 第3週 | 4/27〜5/3 | 63.1万人 | 12.3万人 | 75.4万人 | 177.5万人 | 213.3万人 | 9.0万人 | 10.8万人 |
| 第4週 | 5/4〜5/10 | 64.5万人 | 12.7万人 | 77.2万人 | 242.0万人 | 290.5万人 | 9.2万人 | 11.0万人 |
| 第5週 | 5/11〜5/17 | 75.5万人 | 12.4万人 | 87.9万人 | 317.4万人 | 378.4万人 | 10.8万人 | 12.6万人 |
| 第6週 | 5/18〜5/24 | 82.9万人 | 12.3万人 | 95.2万人 | 400.3万人 | 473.6万人 | 11.8万人 | 13.6万人 |
| 第7週 | 5/25〜5/31 | 94.0万人 | 12.8万人 | 106.8万人 | 494.3万人 | 580.4万人 | 13.4万人 | 15.3万人 |
第7週のデータを加味した最新シミュレーション
| シナリオ | 一般来場者数 | 総来場者数 | 総収入(億円) | 黒字幅(億円) | 必要日平均(一般) | 実現性 | 黒字の期待 | 政策的インパクト |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 目標(一般2,300万人) | 23,000,000人 | 26,528,258人 | 1,490.4 | +330.4 | 133,753人/日 | ◎ | 十分確保 | 既定路線を守れる |
| 中位(現状維持ベース) | 23,075,286人 | 26,615,093人 | 1,495.3 | +335.3 | 134,311人/日 | ◎ | さらに上乗せ | 既定路線を守れる |
| 高位(後半加速) | 25,193,301人 | 29,058,017人 | 1,632.5 | +472.5 | 150,000人/日 | ◯ | 強い黒字 | 万博=経済活性の証左に |
| 大成功(一般2,800万人) | 28,000,000人 | 32,295,271人 | 1,814.4 | +654.4 | 170,790人/日 | △ | 歴史的収益 | “万博復権”の象徴 |
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実現性:「◎」は達成圏、「◯」は強い努力が必要、「△」は現実的には挑戦的
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黒字の期待:収支超過分が多くなるほど、未来投資に充てられる余地も拡大
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政策的インパクト:万博後の都市開発・広報効果・国際的評価に直結する側面
開幕前の大阪・関西万博には、数々の悲観的な予測が取り巻いていました。「参加国が次々に撤退」「ボランティアもアルバイトも集まらない」「建設が間に合わない」「チケットは売れない」、「撤退ドミノで空き地だらけのみすぼらしい博覧会」といった言説です。中には「トイレは2カ所しかない」「電気も通っていない」「延期の確率はほぼ100%」とまで報じたメディアも存在しました。しかし、ふたを開けてみれば、そうした“既定路線”とされたネガティブな予測のほぼすべてが外れる結果となっています。
開幕から7週間、2025年5月31日時点での累計来場者数は580万人を突破。第7週(5月25日〜31日)には週間来場者数が初めて100万人を超え、1日平均でも15万人を上回る日が出るなど、来場ペースは明確に上昇傾向にあります。実際、会場は「ガラガラ」どころか、ピーク時間帯には混雑対策や動線整理が必要となる場面も多くなってきました。
この変化は、単なる販促効果や短期的イベントによるものではありません。実際に足を運んだ人々が、SNSでリアルな体験を発信しはじめたことにより、「想像以上に楽しかった」「もっと早く来ればよかった」といった口コミが波紋のように広がりつつあります。かつてテレビが世論を左右していた時代から、今は“体験者の声”が空気をつくる時代へ──その構造変化が、来場動機そのものの質を静かに変え始めています。
こうした実績の積み上げを踏まえれば、博覧会協会が掲げる「チケット販売2,300万枚」という目標は、もはや高望みとは言えません。チケット収入に加えて場内消費を含めた収益構造を考慮すれば、一般来場者2,300万人ラインで収支黒字が見込める現実的なシナリオとなっており、会場での熱気と数値の双方がその可能性を強く裏付けています。






