大阪府茨木市は、阪急茨木市駅西口に立地する老朽ビル2棟について、地権者主導による自主建替え方式での再整備を進めています。24階建てを含む住宅・商業複合ビルへの建替えにより、駅前空間の再構成と都市機能の更新を図る計画です。
1970年の大阪万博を契機に整備された「茨木ビル」と「永代ビル」は、いずれも築50年超が経過し、老朽化や耐震性の課題が顕在化していました。2023年度に地権者が自主建替え方針を決定し、現在は事業協力者として阪急阪神不動産と大林組が参画。都市計画手続きを経て、2026年度以降の着工を見込んでいます。
再整備後の計画概要
項目 | 永代ビル跡地 | 茨木ビル跡地 |
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敷地面積 | 約1,417㎡ | 約3,413㎡ |
建物構造 | RC造・13階建て | RC造・24階建て |
建物高さ | 約43m | 約86m |
住宅戸数 | 107戸 | 212戸 |
住宅専有面積 | 約7,200㎡ | 約15,000㎡ |
商業専有面積 | 約970㎡ | 約2,180㎡ |
建物はいずれも低層部に商業施設、高層部に住宅を配置する複合型で、1階には民間整備の広場を設け、茨木市が整備する駅前広場と一体的に活用できる構成です。2階には歩行者デッキを設けて動線を立体化し、カフェや医療・福祉関連機能などを商業用途として想定しています。
本件は再開発ではなく、あくまで地権者主導の「自主建替え」であることが特徴です。茨木市の「中心市街地整備基本計画」や「超高層建築物の立地に関する基本方針」とも整合し、立地性・公共性・持続可能性の3点で都市計画上の適合も確認されています。今後は2026年1月に都市計画審議会での審議、同年2月の地区計画決定を予定しています。
駅前整備が先行する他沿線の主要駅

これまで駅前再整備が進んできたのは、主にJR京都線や京阪本線の沿線でした。特にJR沿線では、駅前にまとまった土地が残っていたことや、開発そのものが他路線に比べて遅れていたという背景もあり、再開発が一気に加速しています。
一方の京阪本線では、沿線に拠点を置いていた家電メーカーの縮小や撤退により、駅周辺の商圏が縮小し、街の活力が失われつつあるという危機感が自治体側に強くあります。京阪としても沿線価値を引き上げたいという意図が明確で、ここ数年、再開発が同時多発的に進んでいます。利用者をつなぎ止めるための再整備とも言えるかもしれません。
JR京都線では、高槻駅、茨木駅、千里丘駅、岸辺駅、新大阪駅など、主要な駅前が再構成されつつあります。京阪本線では、枚方市駅、樟葉駅、光善寺駅、香里園駅、門真市駅などで、駅前の建替えや広場整備が急ピッチで進行中です。
これらの沿線では、鉄道事業者と自治体が共通して「都市の顔」である駅前空間の更新を重要課題と捉え、商業、住宅、交通広場を一体的に再設計する動きが加速しています。対照的に、阪急京都線沿線では再整備の動きは限定的でした。理由は単純で、空き地が少なく、すでに出来上がった市街地再開発するには、難度が高かったからです。
阪急京都線沿線でも、駅前再編の波が本格化する起点に

阪急茨木市駅の再整備は、老朽ビルの更新という範囲を超え、駅前広場・住宅・商業機能を一体的に再構成する都市型プロジェクトです。しかも再開発ではなく、地権者が主導する“自主建替え”という形式で進められる点に新しさがあります。
これまで動きが少なかった阪急京都線沿線において、本件は明確な突破口と位置づけられます。今後、高槻市駅、淡路など他の主要駅にも再整備の波が波及する可能性があり、いよいよ阪急沿線都市全体の再構築フェーズが始まろうとしています。
この駅前ビル、いずれもだいぶくたびれてきてて、建て替えは喫緊の課題だったことでしょう…