大阪・心斎橋のランドマーク「心斎橋OPA本館」は、1994年の開業以来、若者ファッションの拠点として親しまれてきました。しかし、建物の老朽化と消費行動の変化に伴い、運営するイオンモールは「心斎橋オーパ」(本館・きれい館)を2026年1月12日で営業を終了し(業種により終了日は一部異なる場合あり)、すると発表しました。本館の延床は約27,000㎡、きれい館は約4,900㎡で、御堂筋のブランド街と心斎橋筋商店街に近接する一等地に立地しています。
ユナイテッド・アーバン投資法人の売却スキーム
オーナーであるユナイテッド・アーバン投資法人(UUR)は、2025年9月29日に約431億円で本館を売却する契約を締結しました。帳簿価額の約215億円に対し、倍額に近い条件です。譲渡先は国内事業法人2社ですが、名称は開示されていません。
この取引の特徴は以下の通りです。
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建物は一括譲渡
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土地は6回に分割して譲渡
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2026年6月~2029年5月まで「一時使用賃貸借契約」を締結
初回の譲渡は2026年6月に117.8億円(建物+土地20%)で行われ、その後2029年まで毎年60億円台(土地16%ずつ)で土地持分を移転します。UURは売却益を6期に分散計上し、投資主還元の安定化を図ります。一方で買い手は所有権を段階的に取得しながら、開発準備を進めることができます。2026年春の閉店後、オーパ跡がどうなるかは現時点では不明ですが、一時使用賃貸借契約は、将来の再開発に向けた規制緩和の実現と合意形成のための時間としての意味合いがありそうです。
規制緩和の可能性
近隣の「心斎橋プロジェクト」ではすでに容積率約1,400%までの緩和が認められた事例があり、オーパ跡地でも同等、あるいはそれ以上の緩和が見込まれます。現在のビルは天井が低く導線も良くないため、長期的な利活用は難しいと思われます。あくまで僕の推測ですが、立地特性を考えると、低層はハイブランドを想定した商業施設、高層はラグジュアリーホテルを配置する案が有力だと予想しています。
外資ホテルチェーンの動向
外資系ホテルチェーンは、大阪都心の再開発と連動して布陣を強化しています。
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ハイアット:難波千日前でセントリック導入予定。他にも大阪都心で複数施設出展を表明。
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IHG:大阪都心の何処かに最上級ブランド「リージェント」導入を視野。
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マリオット/ヒルトン:既存多数出店に続き、都心再開発で新拠点を模索。
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アコー:他ブランドに出遅れるも参入余地あり。
「低層商業×高層ホテル」の複合開発は各社にとって理想的であり、オーパ跡地は外資ホテル誘致の有力候補とみられます。
万博からIRへ。大阪発展の時間軸
心斎橋オーパ再開発の時間軸は、大阪全体の都市戦略と連動しています。
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2025年:大阪・関西万博閉幕
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2026年:オーパ閉店、テナント撤退
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2026~2029年:一時使用期間、同時に再開発に向けた準備検討
- 2030年以降:大阪IR開業効果を受け止める再開発を実施
まとめ
ユナイテッド・アーバン投資法人による心斎橋OPA本館の売却は、単なる資産入れ替えではなく、約3年間を開発準備期間に充て、外資資本や新たな需要を呼び込むための布石と考えられます。2030年の大阪IR開業を見据え、大阪都心の再開発は再び活発化し、御堂筋・心斎橋は世界屈指のラグジュアリーストリートへと、さらなる進化を遂げることになりそうです。
出典元:
・国内不動産信託受益権の譲渡及び土地賃貸借契約に関するお知らせ(心斎橋OPA本館)
・イオンモール>「心斎橋オーパ」営業終了のお知らせ