関西エアポート株式会社は、第1ターミナルの大規模改修プロジェクト「T1リノベーション」の最終段階となるPhase4について、詳細を発表しました。国際線出国エリアをさらに拡張し、物販16店舗、飲食7店舗の計23店舗が新たに出店します。開業は2026年夏を予定しており、これをもって長期にわたるリノベーション工事が完了します。
リノベーションの概要と狙い
関西国際空港第1ターミナルは、1994年の開港以来、日本を代表する国際拠点空港として機能してきました。しかし、近年の急速なインバウンド増加と航空需要の多様化により、従来の施設では十分に対応できない課題が浮き彫りになっていました。
そこで2021年に着工されたのが「T1リノベーション」です。基本コンセプトは、
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国際線キャパシティの強化
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エアサイドエリアの充実
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旅客体験の向上
の3点に集約されます。
改修により、国内線と国際線の配置を抜本的に見直し、国際線を南北一体で運用できるレイアウトに再設計。国際線ビル面積は25%拡大、スポット数は6カ所増加し、関西国際空港全体の国際線キャパシティは年間約4000万人に達する見込みです。これは2019年度実績(約2200万人)の約2倍にあたり、ポスト万博期の需要増加にも十分対応できる規模となります。
また、新国際線出発エリアの面積は改修前比で60%拡大。出国後の商業ゾーンは「Fun」「Peaceful」「Active」「Curious」といった複数のムードゾーンに分けられ、旅行者が気分に合わせて滞在を楽しめる設計としました。さらに、スマートレーンなどの最新技術を導入し、保安検査や手続きの効率化を図ることで、利便性と快適性を両立させています。
これまでの歩み
リノベーションは4つのフェーズに分け、段階的に整備が進められてきました。各フェーズで焦点が異なり、少しずつ空港体験を高めてきたのが特徴です。
Phase1(2022年10月)

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新国内線エリアのオープン
国内線のチェックインカウンターや搭乗口を移設・再編。これにより国際線エリア拡張の余地を確保しました。 -
動線の改善
国際線と国内線の導線を明確に分離し、利用者のわかりやすさを向上。 -
ラウンジ新設
ANA・JALが利用する共用ラウンジを整備。国内線利用者の快適性を高めました。
このフェーズは「国際線拡張のための基盤づくり」と位置づけられます。
Phase2(2023年12月)

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出国審査場を中央に集約
南北に分散していた出国審査場を中央に統合し、効率化を実現。 -
大型免税店(約2500㎡)の開設
出国後すぐに利用できるウォークスルー型免税店を設置。利便性と収益性を強化しました -
ムードゾーニング導入
「Fun」「Peaceful」「Active」「Curious」の4つの雰囲気で区分。過ごし方の多様性を提供しました。
このフェーズで空港は「移動のための場所」から「過ごす場所」へと変化し始めました。
Phase3(2025年3月)

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新国際線保安検査場の稼働
スマートレーンを導入し、検査待ち時間を短縮。大阪・関西万博に向けた重要な整備でした。 -
新ラウンジの開業
「KIX Lounge Kansai」「KIX Lounge Premium」が登場し、利用者層に応じた選択肢を提供しました。 -
商業機能の拡充
フードコート「Tasty Street」を含む13店舗をオープン。多彩な食事が可能となり、出発前の時間価値を高めました。
この段階で主要機能がほぼ完成し、万博需要に対応する体制が整いました。
Phase4(2026年夏予定)

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国際線出国エリアを南北に拡張
物販16店舗、飲食7店舗の計23店舗が新規出店。 -
国内空港初や関西初、新業態が多数
モンクレールやユニバーサル・スタジオ・ストアなど、話題性のあるブランドが加わります。
Phase4はリノベーション全体の完成形であり、空港の国際競争力を高める最終ステップです。
Phase4の詳細
出店エリアと店舗構成
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Wall Side(ブランド)
バーバリー、ロエベ、ジェントルモンスター(国内空港初)、スウォッチ、オメガ、ティファニー、イッセイミヤケ、モンクレール(国内空港初) -
Magnet(食・土産・アパレル)
ウルフギャング・パック・キッチンカウンター(新業態)、クリスタル・ジェイド(関西初)、Taste of Japan 関西旅日記、ユニクロ、食彩通り(和食フードコート)、フレッシュ(関西初) -
Fun(エンタメ・飲食)
ユニバーサル・スタジオ・ストア(国内空港初)、カワイイ バズ(国内空港初)、サクラ ボヤージュ、コビスト ― ビフテキのカワムラ(関西初・新業態) -
Peaceful(和・ヘルスケア)
べっぴんさん。(空港初・ヘルス&ビューティー専門)、釜めしとお抹茶 紬(新業態)、福寿園(宇治茶)、マツモトキヨシ -
Apron Side(カフェ)
タリーズコーヒー
注目ポイント
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国内空港初出店:モンクレール、ジェントルモンスター、ユニバーサル・スタジオ・ストア、カワイイ バズ
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関西初出店:クリスタル・ジェイド、フレッシュ、ビフテキのカワムラ(新業態)
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新業態:ウルフギャング・パック・キッチンカウンター、釜めしとお抹茶 紬
今後の展望
Phase4完成後、関西国際空港第1ターミナルは、移動のための施設から体験型ゲートウェイへと進化します。国際線キャパシティは大幅に拡大し、2025年の大阪・関西万博を経て訪日客がさらに増加するポスト万博期にも対応できる体制が整います。
ラグジュアリーブランドから関西の食文化、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのオフィシャルショップまで、多彩な店舗が揃うことで、空港そのものが「観光の入り口」として機能します。国内外の旅行者は、搭乗前から関西の魅力を凝縮した空間で時間を過ごすことが可能となります。
関西エアポートグループは、地域社会や関係者と連携し、空港を単なる交通拠点ではなく、新しい体験を生み出す場として発展させていく姿勢を示しています。
出典元
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関西エアポート株式会社 プレスリリース「関西国際空港第1ターミナルビル リノベーション Phase4 新規出店について」(2025年9月19日発表)【J_250919_PressRelease_Phase4_newopen.pdf】
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関西エアポート株式会社 過去発表資料(Phase1~3関連リリース、2022年10月・2023年12月・2025年3月)
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大阪・関西万博関連公式資料(会場整備・訪日客需要見通し)