関西国際空港を運営する関西エアポートは2019年12月12日付けのニュースリリースで、大阪万博が開幕する2025年春までに空港全体での国際線旅客の受け入れ能力を、現在の年間3000万人から4000万人に引き上げる大規模改修計画を正式に発表しました。
関西空港の第1ターミナル(以下、T1)は、インバウンドの急増により受け入れ能力の限界を迎えており、国際線出発エリアの混雑 •、国内線施設のキャパシティと利用実態の乖離 、国際線手続き施設の南北分散といった課題を抱えています。その為、主力のT1を改修し国際線施設の大幅増強を行い急増する需要に対応する事になりました。
関西エアポート(KAP)は2021年5月28日に、T1改修工事の安全祈願祭と起工式を執り行い工事が始まりました。工事は大林組が担当し、2022年秋ごろから2026年にかけて順次運用を開始し、2025年に開かれる大阪万博までには主要機能を稼働させる計画が進行しています。
【出展元】→関西エアポート>関西国際空港 T1 リノベーション
→関西国際空港T1リノベーションにおける工事契約締結について
急増する国際線旅客、不足する処理能力
関西空港の旅客数の推移です。2012年頃から国際線旅客が急増しはじめ、前年度は過去最高となる2289万人を記録しました。特に外国人利用者が急増しています。
T1施設の取り扱い能力は、国際線1200万人・国内線1300万で設計されました。その後、施設の小規模な変更がありましたが2018年度の実績は国際線2060万人・国内線400万人と、施設と利用実態に大きなギャップが生じています。国際線は大混雑、国内線は空いている状態となっています。
施設と実態のギャップを埋め最適化を図る
今回のT1改修計画は、施設と実態のギャップを埋め最適化を図り、ターミナル全体の使用率を上げる事で受け入れ能力が限界に近い国際線の処理能力を引き上げる事を目的としています。
具体的な対応として、ファストトラベルの推進 、 国際線/国内線エリア配置の見直し 、ランドサイド/エアサイド比率の見直し 、国際諸施設の中央集約化 、天井、エスカレータ等の耐震補強 、 商業エリアの充実などが実施されます。
4Fの保安検査場を集約・拡張


国際線保安検査場は7〜15m増築され面積が拡大します。

床面を木質タイルに変更し、和のテイストを盛り込んだデザインとなります。
22台のスマートレーンで、より速く、より快適に、ストレスなく、 保安検査を通過できる様にします。
3Fに出入国審査場及び国際線ラウンジを配置


3Fは今回の改修で最も大きく変化します。現在、飲食点や物販店があるエリアを廃止し、出入国審査場及び国際線ラウンジが設置されます。
2F中央に国際線出発エリアを展開

現在国内線が配置されているT1中央部を国際線出発エリアに変更し、ウォークスルー型免税店を設置します。出国後のエリアは従来比 +60%増加します。
出発エリアを4つの異なった雰囲気にゾーニング
出発エリアは「和」をイメージさせるデザインで纏められています。
国内線保安検査場を1か所に集約しスマートレーンを導入

国内線は現在のT1中央部の一等地にありますが南側のウィングに移動します。

移設後の保安検査場の様子です。スマートレーンが導入されます。

商業店舗を大幅拡充・快適な空間が創出されます。
T1 リノベーション変更後工事スケジュール

T1リノベーション工事ですが、当初予定より半年遅れの2021年5月28日に安全祈願祭と起工式を行い着工しました。これにより、Phase4の2F 国際線出発エリア南北商業施設の運用開始が2026 年秋頃にずれ込む事になりました。
但し、国際線旅客の受け入れ能力を年間3000万人から4000万人に引き上げるPhase3の4F 新保安検査場及び 3F 国際線ラウンジの回収は2025 年春頃の完成予定で万博に間に合わせる計画で、Phase3により空港オペレーション機能は完成します。防災対策を含めて約1千億円の投資額は変更ありません。
2021 年 6 月頃 T1 リノベーション工事着工
2022 年秋頃 2F 新国内線エリア等(Phase1)運用開始
2023 年冬頃 2F 国際線出発エリア中央等(Phase2)運用開始
2025 年春頃 4F 新保安検査場及び 3F 国際線ラウンジ(Phase3)運用開始 ※空港オペレーション機能完成
2026 年秋頃 2F 国際線出発エリア南北商業施設(Phase4)運用開
T1の改修により今後5年程度の需要増に対応する事はできますが、7年、10年スパンで考えると今回の改修計画でも需要の伸びに対応できなくなります。抜本的な解決策は2期空港島にフルスペックの旅客ターミナルビルを建設するしかありません。
2022年10月に先行オープンした「新・国内線エリア」
2023年11月の様子

現地の様子です。前回の取材が2023年3月だったので、約8ヶ月振りの撮影です。長らく工事が行われてきた第1ターミナルビルの 2階国内線商業ゾーン(一般エリア)ですが、10月から一部のテナントがオープンしました。

新店舗は2023年8月に「1:スターバックス」「3:信州そば処 そじ坊」がオープン済。2023年10月1日(日)7 時に、「1:551HORAI 関西国際空港店」「3:すき家(24 時間営業)」がオープン。
12月頃に「元気商店(焼肉丼)」「大阪天満 すし処西屋」「COLOSSEO(イタリア料理)」「とんかつ和幸 恵亭」「ル・パン神戸北野」がオープンする予定です。

それでは早速、現地の様子を見ていきましょう!こちらは10月にオープンした551蓬莱です。非常に注目度が高くブログのアクセスも多かったです。

こちらはスターバックスコーヒーの様子です。想像以上に店舗が小さくで驚きました。スタバの左右・対面は12月オープン予定のテナントです。

スタバの隣にはCOLOSSEO(イタリア料理)がオープンします。

8月にオープンした、信州そば処 そじ坊。

10月にオープンした「すき家」。

かなり前にオープンしたマクドナルド。

その対面にはココカラファインがあります。

そば屋さんの対面には「とんかつ和幸 恵亭」「ル・パン神戸北野」がオープンします。

オープン済み店舗と12月に開店する「とんかつ和幸 恵亭」「ル・パン神戸北野」と位置関係はこんな感じです。

徐々にリノベーションが進む第一旅客ターミナルビル。12月5日には、新国際線出発エリア(セキュリティエリア)が開業し、リノベーションは大きな節目を迎えます。今回ご紹介している2階国内線商業エリア(一般エリア)も店舗が増えて賑やかになりそうです。
2023年3月の様子

現地の様子です。前回の撮影が2022年10月だったので、約5ヶ月振りの取材です。

こちらは2022年10月にリニューアルオープンした新・国内線エリア付近の様子です。

2階の中央部は工事中です。2階の一般エリアは商業施設に、壁を隔てた内部に広がるセキュリティエリアは、国際線のウォークスルー型免税店エリアになります。

2階一般エリアの工事中の箇所を側から見た様子です。

今回取材した中で大きな変化点は、2階一般エリア中央部にたエスカレーターが施設された事です。

新設されたエスカレーターの様子です。既設の建物を切って貼って・・。導線の作り替えは本当に大変な作業となります。

エスカレーターを昇って3階にました。グルリと廻り込んで4階に向かいます。3階の一般エリアはほとんど封鎖されおり、壁を隔てた内部には、出入国審査場及び国際線ラウンジが配置されます。今回の大規模リノベーションにおける、国際線エリア拡大の核心部分にあたる箇所となります。

新設されたエスカレーターを経て4階出発ロビーに到達しました!

3月26日から2023年夏ダイヤ(3月26日~10月28日)となり、出発ロビーに賑わいが戻ってきました!

出発ロビーの変化点を見て行きます。出発ロビーの北東付近にCHANELの店舗がありました。

少し前に特定天井改修工事が行われたので、PTB本館のシンボルである「オープンエアダクト」が美しくなりました。

こちらは北側にある出発口1の様子です。取材時には行列はなく、待ち時間は10分と表示されていました。

国際線出発エリアはご覧の通り工事中の箇所が多数あります。

続いて出発口3の様子です。こちらは待ち時間5分で通過可能でした。

PTBの南側に来ました。チェックカウンターG列〜はまだ閉鎖中でした。

出発ロビーをズームレンズで見通した様子です。

撮影ポイントを変えて、キャニオンを見下ろした様子です。

エスカレーターでキャニオンを下って行きます。

1階到着ロビーに移動しました。

1階にはインフォメーションカウンターが設置されていました。

国際線到着口付近の様子です。結構な賑わいがありました。

最後は関西空港駅の様子です。こちらもスーツケースを持った利用者がメチャクチャいっぱい居ました!関西国際空港の夏ダイヤは始まったばかりですが、旅客便658便/週は、2019年夏期比で回復率46%となっており、まだまだ利用者が増加する事になります。
2022年10月の様子

現地の様子です。前回の撮影が2021年7月だったので、約1年4月振りの取材です。

デジタルサイネージを活用した可変案内サインの様子です。取材した時の国際線はターミナルの南側が稼働中で、その他は閉鎖されていました。

PTBのアトリウムの様子です。北側の国際線到着口付近には到着した外国人旅行者が集まっていました。少しづつですが、関空が再始動を始めている事を実感しました。

こちらは先日ご紹介した、新国内線エリア側の様子です。2022年10月26日から供用を開始しました。

国内線が新エリアに移転したので、これから改修工事が始まります。

役目を終えた国内線チェックインカウンターの様子です。

機能変更に伴い、上下動線の付け替えが行われています。

これまで国内線エリアだった2階中央部は、国際線出発エリアとして、ウォークスルー型免税店を設置した新商業エリアに生まれ変わります。

旧国内線チェックインカウンターを反対側から見た様子です。」

撮影ポイントを変えて、4階国際線出発ロビーに移動しました。エスカレータや階段を閉鎖して、上下動線の付け替えが行われています。

国際線出発ロビーは閉鎖中ですが、この機を逃さずリノベーションが進行しています。

1年4ヶ月振りに取材した関西空港。10月26日に新国内線エリアがオープン、PHASE1が完成し国内線の機能が移転したので、これからはPHASE2として旧国内線エリアを国際線に転用する工事が本格的に始まります。
PHASE2:の新国際線商業エリアは2023年冬頃にオープンする予定です。
2021年7月の様子

現地の様子です。リノベーション工事は5月28日に起工式が執り行われ工事が始まりました!

こちらは2階の国内線チェックインカウンター付近の様子です。


カウンターの一部が閉鎖され仮囲いに覆われていました。

リノベーション後の国内線チェックインカウンターは正面むかって右側に集約されます。現在の国内線出発ロビーは国際線のウォークスルー型商業エリアに変更されるので、今回のリノベーションで最も変化が大きいエリアになりそうです。

今回取材して見つけたのがこちら。

スクープ写真です(笑)。リノベーション後の床材の設置テストが行われていました。木目調、大理石調、タイルカーペットの3タイプがありました。

大理石調の様子です。

タイルカーペットの様子です。

続いて4階出国ロビーの様子です。コロナ禍の影響で半分以上のエリアが閉鎖されていました。

先日お伝えした通り特定天井改修工事が行われ、オープンエアダクトが美しくなりました。

反対側から見た様子です。このエリアの床面がどうなるのかは不明ですが、タイルカーペット、もしくは木目調に変えると「新しくなった感」が出てくると思います。

出国ロビーには新型のベンチが置かれていました。

スマホやPCを充電する小さなテーブルがありました。

T1の各所に置かれているインフォメーション・ディスプレイの様子です。こちらも更新された様ですが、表示内容がメチャクチャ見やすくで驚きました。見栄えの為では無く「知りたい情報を強調する為にアニメーションが使われる」ハードよりもソフトが凄いと思いました。

あと、こんな感じの団体客向けのゾーンがありました。

撮影ポイントをさらに変えて、こちらはセキュリティエリア内、国内線の出発ロビーの様子です。リノベーション後は、国際線の商業エリアに生まれ変わります。

コロナ禍の中、無事に着工に漕ぎ着けた、関西空港T1リノベーション工事。とりあえずは2025年の大阪万博を目指して国際線のターミナルキャパシティを4000万人/年に引き上げる事で当面の利用者増加に対応するが可能になります。しかし、ポストコロナの時代が訪れ再びアジア各国の観光需要が伸び始めると、あっという間にキャパシティ・オーバーになると思います。
空港整備には10年スパンの長い時間がかかり、足りなくなってから着手しても手遅れでライバル空港に路線・旅客を奪われてしまいます。国内では国土交通省を中心に成田空港の拡張計画が進んでおり、2029年3月完成を目指して第3滑走路の整備が行われます。これにより、成田空港のキャパシティを年間40万回/6000万人程度に拡大、将来的には50万回/7500万人に対応させる構想です。
対する関西空港は現在の所、T1の改修が始まっただけで新ターミナルビルの整備は先送りされてしまいました。関西空港は24時間運用の強みを活かし、本格的なT3を二期空港島に整備して発着枠を拡大する事が出来れば、滑走路2本のままでも拡張後の成田空港に迫る旅客機を捌く事が可能です。実際に香港国際空港は滑走路2本で40万回/年、6800万人を捌いています(既に第3滑走路を建設中ですが)。
2030年代の世界第1級国際空港の条件は、滑走路3本、年間60万回、旅客数1億人が条件になると思われます。関西空港はタイミングを逸することなく2期空港島へのT3建設、北側誘導路の整備を行い、2030年代中頃までには第3滑走路を完成させて欲しいと思いました。











