奈良・王寺町に森林商業施設「TOUP(トープ)」開業!木造ZEBの飲食棟を核に、約50haの陽楽の森でナナツモリなど4店舗+森林体験を展開



奈良県王寺町に、森と暮らしをつなぐ複合施設「TOUP(トープ)」が2026年9月2日にグランドオープンしました。

場所は、王寺町と上牧町にまたがる約50haの里山「陽楽の森」。上牧町で約19年間営業してきた「ナナツモリ」の移転を軸に、コーヒー、ジェラート、パンを加えた4つの飲食業態を集約しました。



中心となる飲食棟は、奈良県・吉野地域の木材を活用した木造2階建て・延床約481㎡の『ZEB』建築です。TOUPは単なるカフェの移転ではなく、飲食、建築、森林体験、環境保全を組み合わせ、都市近郊の里山を日常利用へ開くプロジェクトとして整備されています。

TOUPの概要


項目 内容
施設名 TOUP(トープ)
所在地 奈良県北葛城郡王寺町畠田2丁目84-1
開業 2026年9月2日
プレオープン 2026年8月13日〜30日
運営 株式会社青春
飲食棟 木造2階建て・延床約481㎡
設計 伊藤立平建築設計事務所
ZEBオーナー 谷林業株式会社
環境性能 『ZEB』
最寄駅 JR和歌山線「畠田駅」徒歩約12分
背後の森林 陽楽の森・約50ha
※約50haは陽楽の森全体の面積で、TOUP単体の敷地面積ではありません。

ナナツモリを核に、食堂・コーヒー・ジェラート・パンを集約



TOUPには、食事、コーヒー、ジェラート、パンという利用目的の異なる4店舗が入ります。
店舗 主な内容
食堂喫茶 ナナツモリ ナナツモリプレート、チキン南蛮、森のスパイスカレー、酒類など
MÖLLER COFFEE スペシャルティコーヒー、オーガニックティー、ドーナツ、焼き菓子
森のジェラート mocca 店内製造のクラフトジェラート約10種類。「週末シトロン」など
パン屋 霧とマッチ 国産小麦の食パン、カンパーニュ、惣菜パン、サンドイッチなど

食堂喫茶 ナナツモリ



施設の中心店舗となる食堂喫茶 ナナツモリは、2007年に上牧町片岡台で開業。旧店舗を2026年6月末で閉じ、TOUPへ移転しました。

旬の野菜や副菜を組み合わせたナナツモリプレートを中心に、チキン南蛮、森のスパイスカレーなどの食事を提供します。旧店のカフェ的な雰囲気を引き継ぎつつ、TOUPでは「食堂」としての役割をより明確にしています。

MÖLLER COFFEE



MÖLLER COFFEEは、スペシャルティコーヒーを軸に、オーガニックティー、ドーナツ、焼き菓子などを提供するコーヒーショップです。



ランチを目的としない短時間利用にも対応し、森を眺めながらコーヒーを楽しめる場所として、ナナツモリとは異なる来訪動機をつくります。

森のジェラート mocca



森のジェラート moccaでは、パティシエが店内で仕込むクラフトジェラートを約10種類展開します。ナナツモリの人気商品をモチーフにした「週末シトロン」など、施設内ブランドを横断した商品も用意。食事を伴わず、散歩やドライブの途中でも気軽に利用できる店舗です。

パン屋 霧とマッチ



パン屋 霧とマッチは2026年9月5日にオープンしました。

国産小麦を使った食パンやカンパーニュを中心に、ナナツモリの料理と連携した惣菜パンやサンドイッチを展開。通常は8時から17時まで営業し、将来的には薪窯の導入も計画されています。



東京の「パン屋塩見」がレシピや運営面に関わっており、施設内の付属売店ではなく、独立したベーカリーとして展開していく考えです。

4店舗を組み合わせることで、朝はパン、午前はコーヒー、昼は食堂、午後はジェラートと、時間帯ごとに来訪目的をつくっています。食事だけでなく「パンを買う」「コーヒーだけ飲む」といった日常使いを取り込めることが、TOUPの商業施設としての特徴です。

王寺駅から1駅、JR畠田駅から徒歩圏



TOUPのもう一つの強みは、約50haの里山を背後に持ちながら、市街地からアクセスしやすい立地です。最寄りはJR和歌山線畠田駅で徒歩約15〜20分。畠田駅は、大和路線の快速停車駅である王寺駅から1駅。車では西名阪自動車道・香芝IC方面からアクセスしやすく、施設には広い駐車場も設けられています。

 



ただし、施設入口の看板や駐車場への進入路が非常に分かりにくく、注意していたにもかかわらず通り過ぎてしまいました。写真左の坂を上り、右に曲がると駐車場が見えてきます。



王寺町、上牧町、香芝市の住宅地に近接しながら、そのすぐ裏手にまとまった森林が広がる。「山奥へ出かける」のではなく、生活圏の延長で本格的な里山に触れられる距離感がTOUPの大きな特徴です。

吉野の木でつくった木造ZEB



中心となる飲食棟には、奈良県・吉野地域の木材が使われています。建物は木造2階建て、延床約481㎡。設計は伊藤立平建築設計事務所が担当し、省エネルギー性能と太陽光発電を組み合わせた『ZEB』として整備されました。谷林業によると、吉野地域の森林から伐り出した木材も使用しているとの事です。



館内で使われていたのは、listude(リスチュード)の14面体スピーカー「sight(サイト)」。木の内装になじむ美しいデザインと、空間を心地よく満たす上質な音色が印象的でした。

listudeは、2007年に奈良・学園前で「sonihouse」として誕生したブランドです。現在は山梨県北杜市に拠点を移しています。



森林資源を単に建材として消費するのではなく、地元の木で建物をつくり、その建物を人が森へ入る入口として使う。TOUPでは、建築そのものがプロジェクトの考え方を象徴しています。

約50haの「陽楽の森」。一部は自然共生サイトに認定



TOUPの背後に広がる陽楽の森では、以前から森林整備、自然観察、薪づくり、木工、福祉活動、マルシェなどが行われてきました。2010年前後から作業道の整備などが進み、2023年度には森の一部約10haが環境省の「自然共生サイト」に認定されています。


店舗よりも高い箇所で整備工事が進む。ここはBBQエリア?ピクニックエリア?

TOUPの開業に合わせて森の一部をピクニックエリアとして開放。今後も森林整備を進めながら、散策や自然体験など利用できる範囲を段階的に広げる計画です。

約50haすべてを一度に公園やレジャー施設へ転換するのではなく、既存の里山環境を残しながら、人が安全に使える場所を増やしていく考え方がベースになっています。

カフェ開業ではなく、「森林を事業化する」プロジェクト


店舗周辺では引き続き整備工事が行われている

TOUPの本質は、人気店を森の中へ移したことだけではありません。陽楽の森を活用する取り組みは、中小企業庁の「ローカル・ゼブラ地域実証事業」にもつながっており、飲食・物販のほか、森林体験、イベント、企業向け研修、森林宿泊、サテライトオフィスなどへの展開が構想されています。



背景にあるのは、全国の里山が抱える維持管理の問題です。森林には間伐、倒木処理、作業道整備、安全管理など継続的な費用と人手が必要ですが、保全だけでは収益を生み出しにくい。そこでTOUPでは、まず飲食や買い物で日常的に人を呼び、その来訪を森林体験や企業利用などへ広げることで、森の維持に必要な経済活動をつくろうとしています。



この仕組みで重要なのは、最初から「森林保全」を来訪者に求めていないことです。ランチを食べる。コーヒーを飲む。ジェラートを楽しむ。パンを買う。その延長で森を歩く。入口を日常的な消費行動に置くことで、森林に強い関心を持たない層まで利用者を広げられます。

森を保存するだけではなく、適切に使うことで維持する。

TOUPは奈良の新しい飲食スポットであると同時に、都市近郊に残る約50haの里山を、商業・体験・環境保全が循環する場所へ転換できるかを試すプロジェクトでもあります。

王寺駅から1駅という都市近郊の立地で、この仕組みがどこまで定着するのか。今後の展開にも注目したい施設です。




出典・参考資料

  • TOUP公式
  • 株式会社青春/ナナツモリ
  • 谷林業株式会社
  • 環境共創イニシアチブ(SII)
  • 環境省「自然共生サイト・陽楽の森」
  • 中小企業庁「ローカル・ゼブラ地域実証事業」
  • Narakko!
  • 号外NET 生駒市・香芝市
  • 関西ニューオープン情報
  • 関西ナビ

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