『ガストロノミーツーリズム世界フォーラム』は、スペイン・マドリッドに本部を置く国連世界観光機関(UNWTO)が主催し、2015年から毎年、世界各都市を会場に開かれている国際会議です。
奈良県は2020年1月にスペインで誘致活動を行うなど積極的な招致活動を行い、観光庁の支援を得て昨年のベルギー大会で、2022年の日本・奈良県開催が決定しました。開催日程は当初の2022年6月から延期されましたが、12月13~15日の3日間にわたり奈良県コンベンションセンターで世界的な会議が開催される予定です。
【出展元】
→日本の食文化を世界に発信!食と観光の世界大会を日本初開催!~UNWTOガストロノミーツーリズム世界フォーラムin奈良~
出展:国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所
前回のベルギー大会は2021年10月31日から11月2日まで同国の古都ブルージュで開かれ、政治関係者や民間団体、ジャーナリストらが集まり、オンラインと合わせて135カ国、約2060人が参加。「ガストロノミーツーリズム・地方観光と地域振興の推進」をテーマに意見交換が行われました。ガストロノミーツーリズムとは?
ガストロノミーツーリズムとは、その土地の食文化に触れることを目的としたフードツーリズムの1つです。その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、食文化に触れることを目的としたツーリズムで、欧米を中心に世界各国で取り組まれています。食の振興を観光と結びつけた動きで「おいしい」で地域経済を活性化させる取り組みとして注目を集めています。
ツーリズムは「所得の地方移転」
地方の観光振興は大都市に集中している所得の均霑(きんてん)を図る効果があり、ツーリズムは「所得の地方移転」と考えられ、中でも「宿泊」と「食」はツーリズムにおいて最も大きな経済効果を生み出すアイテムと言えます。
世界的な観光地である奈良県は、ホテルが少なく通り過ぎるだけの観光になっていた面があり、ツーリズムがもたらす経済効果を享受できていませんでした。
さらに志賀直哉の「奈良に美味いものなし」のとの一文が一人歩きし、おいしいものについては評価を受けてきませんでした。つまり、以前の奈良県は世界的な観光地であるにも関わらず、ツーリズムの2大要素である「宿泊」と「食」が抜け落ちている、あり得ない状況となっていました。
マリオット最高級ホテルが高稼働!
JWマリオットホテル奈良の客室奈良県は、そういった状況を打破する為に、宿泊施設の整備や、おいしい食づくりに取り組んできました。
県コンベンションセンターに誘致したマリオット系の最高級ブランド「JWマリオット奈良」は、1泊4~5万円からの高額な宿泊料にも関わらず、高稼働率をたたき出しており盛況です。JWマリオットを見ると富裕層やアッパーマス層が泊まれる高品質・高価格帯ホテルに対する潜在的なニーズは確実にありそうです。今後、さらに高級ホテルの誘致を進め旅行者の選択肢を増やす必要があります。
奈良に美味しいレストランが増えている
食に関しては、県内外を結ぶ物流網の整備により環境が大きく変わりました。内陸県である奈良県は物流網が脆弱な時代は、新鮮な魚や食材の供給面で面でハンディがありました。しかし、名阪を結ぶ三本の高速道路が整備され、京奈和自動車が開通し和歌山方面と直結された事で生鮮食料品の供給面でのハンディは大きく改善されました。
食材の手配が他府県と同等になれば、大阪や京都に比べて相対的に安い物件賃料により、同じ提供価格であれば食材により多くのコストを掛ける事ができます。その為ミシュランガイドにも掲載される様な「おいしいレストラン」が増えてきています。
また県は、奈良県産農産物の認証制度によるブランド化やフードフェスティバルなどイベントの開催を通じ、食の振興に取り組んできました。さらに「なら食と農の魅力創造国際大学校」(NAFIC=ナフィック)などで食を支える担い手の育成、強化や情報発信機能の充実を推進しています。
奈良の食を見直す好機到来!
会議を主催する 国連世界観光機関(UNWTO)には159カ国が加盟、準加盟国も6地域あり、フォーラムには各国の観光大臣級や政府関係者、観光関連事業者、シェフなど国内外から約600人、3日間で延べ1800人の参加が見込まれています。そうした国際会議を開くことで、世界に向けて奈良県の観光、食などをアピールする効果が期待できます。フォーラムは奈良県の食の魅力を国内外に発信する絶好の機会となります。
「奈良に美味いものなし」と言われることがある奈良県で、世界的な美食の会議が開催される事はいろいろ感慨深いものがあります。県内には、おいしいものが随分と増えてきており、「奈良に美味いものなし」という過去からの呪縛を解き放ち、奈良の食を見直す機会にしてほしい、と思いました。