串本IC周辺「道の駅・公園・火葬場」PFIが再始動 42.8億円で再公募、優先交渉権者取り消しから仕切り直し



和歌山県串本町は、串本IC周辺に「道の駅」「公園」「火葬場」を一体整備する官民連携事業(PFI)について、事業者の再公募を開始しました。

サービス対価の上限は42億8,000万円(税込)。参加表明書は2026年9月30日、提案書は11月30日まで受け付け、2027年1月下旬に優先交渉権者を決定する予定です。この事業では2026年4月に優先交渉権者を選定しましたが、その後、コンソーシアムの構成企業1社が撤退を表明。町は6月、優先交渉権者の決定を取り消しました。

今回の再公募は、一度白紙となった大型PFIを、事業スキームを維持したまま再始動させるものです。

串本IC周辺の高台に3施設を集約

事業名称は「(仮称)串本IC周辺地域活性化施設整備に関する官民連携事業」。紀勢自動車道・串本IC周辺の高台に、道の駅、公園、新火葬場を一体整備します。
項目 内容
事業主体 和歌山県串本町
対象施設 道の駅、公園、火葬場
事業手法 PFIを中心とした官民連携
サービス対価上限 42億8,000万円(税込)
参加表明期限 2026年9月30日
提案書提出期限 2026年11月30日
優先交渉権者決定 2027年1月下旬予定
事業期間 契約締結~2047年3月末
特徴は、性格の異なる3施設を別々に整備するのではなく、設計・建設から維持管理、運営まで一つの官民連携事業として束ねる点です。

道の駅は海抜約50mの防災・観光拠点



道の駅の敷地は約1万2,800㎡、海抜約50m。物販、飲食、観光案内、交流機能に加え、南海トラフ巨大地震などを想定した防災機能を持たせます。太陽光発電や非常用発電設備を導入し、災害時にも照明や情報提供など必要な機能を約72時間稼働できる計画です。

このほか、かまどベンチ、マンホールトイレ、一時避難スペース、24時間利用可能な駐車場・トイレなどを整備。国道42号に接続する「一体型道の駅」として、国が整備する駐車場や情報提供施設との連携も図ります。

公園は平時の交流拠点、災害時は仮設住宅用地に

公園は約1万7,300㎡、海抜約55m。大型複合遊具や水遊び機能などを備え、子どもから高齢者まで利用できる交流空間を整備します。一方、災害時には一部を応急仮設住宅の建設用地として活用します。平時のにぎわいと非常時の防災機能を兼ねる計画です。

火葬場も海抜約54mの高台へ移転



新火葬場の敷地は約3,600㎡、海抜約54m。火葬炉2基を整備し、老朽化した既存施設の機能を移転します。計画地周辺には崖地や高圧鉄塔があり、上空には77kV特別高圧送電線も通過しています。また予定地は道路に直接接していないため、公園内に進入路を確保する必要があります。施設配置や動線計画には、通常の公共施設以上の設計条件が課されます。

いったん決まった優先交渉権者が白紙に

前回公募は2025年10月に始まり、2026年4月24日、「(仮称)人見・小森・アクア・オリコン・コンソーシアム」が条件付き優先交渉権者に選定されました。
区分 企業
代表企業 人見建設
構成企業 小森組
構成企業 アクアイグニス
構成企業 オリエンタルコンサルタンツ
協力企業 宮本工業所
協力企業 五輪
提案価格は42億81万8,000円(税込)。BTO方式を中心に、指定管理者制度や独立採算事業を組み合わせた提案でした。

しかし、優先交渉権者決定後の条件調整中に、構成企業1社がコンソーシアムからの撤退を表明します。

募集要項では、参加表明後の構成企業・協力企業の変更は、町がやむを得ないと認める合理的理由がある場合を除き原則不可としていました。

町は撤退理由の説明を求めましたが、期限までに認められる合理的理由が示されなかったとして、6月11日に優先交渉権者の決定を取り消しました。

ただし、PFI法に基づく「特定事業」の選定そのものは維持しています。

つまり、計画を見直したのではなく、事業者選定だけをやり直す判断です。

再公募でも「構成企業変更は原則不可」

今回の再公募でも、参加表明後の構成企業・協力企業変更は原則認めないという基本ルールを維持しています。

前回の取り消し原因となった条件を緩和するのではなく、長期にわたり安定したコンソーシアムを組成できる事業者を改めて選ぶ方針です。

42.8億円の上限価格はほぼ据え置き

今回のサービス対価上限は42億8,000万円。前回の優先交渉権者による提案価格42億81万8,000円との差は約7,918万円、率にして約1.9%です。事業費の枠組みは大きく変わっていません。

一方、実際のサービス対価には、人件費や建設資材価格などの物価変動を一定のルールで反映します。

BTOからPark-PFIまで柔軟に提案可能

事業方式は一律に固定せず、
  • BTO
  • BOT
  • BOO
  • コンセッション
  • Park-PFI
  • 指定管理者制度
  • 借地権方式
などを組み合わせて提案できます。資金調達についても、サービス購入型、JV型、独立採算型に加え、SIBやインパクト投資など幅広い手法を想定しています。串本町の試算では、公共が直接整備・運営する従来方式に比べ、PFI導入により事業期間全体の財政負担を約10.9%削減できるとしています。

以前から指摘されていた「企業グループ形成」の難しさ

今回の優先交渉権者取り消しは突発的な事象にも見えますが、国土交通省が実施した過去の官民対話では、この事業特有の難しさがすでに指摘されていました。

民間事業者からは、

「用途の異なる複数施設を一括するハードルが高い」

「火葬場を含めると炉メーカーが限定され、チーム形成が難しい」

「火葬場運営のノウハウがない」

「SPC内部でのリスク分担が難しい」

といった意見が出ていました。

道の駅、公園、火葬場では求められる専門性が大きく異なります。建設会社だけでなく、商業・観光施設運営、公園管理、火葬炉メーカー、施設運営会社、設計コンサルタントなどを束ね、約20年間にわたる事業体制を構築しなければなりません。

今回、実際に構成企業1社の離脱で優先交渉権者決定が白紙になったことは、この事業が抱えていた組成リスクが現実化したものとみることができます。

当初は公営住宅を含む4施設構想だった

計画初期の国交省調査では、対象は 道の駅+公園+火葬場+公営住宅 の4施設でした。その後、公営住宅を外し、現在の3施設に絞り込まれています。

当時から民間側には、用途の異なる複数施設を一括整備することへの慎重論があり、現在の事業スキームは、検討過程で対象を整理しながら組み立てられてきたものです。

串本IC周辺を「高台の新拠点」に



串本町は、紀勢自動車道の延伸を背景に、串本IC周辺を新たな地域拠点として整備する構想を進めています。

道の駅による観光・物販、公園による交流、火葬場という公共サービスを高台に集約し、災害時には避難・防災拠点として機能させます。海抜50mを超える立地は、南海トラフ巨大地震や津波への備えが重要な紀南地域にとって大きな意味を持ちます。

一方、事業成立の鍵を握るのは、異なる専門分野を束ね、長期間にわたって安定運営できる民間事業者グループを再び組成できるかどうかです。一度は優先交渉権者決定まで進みながら白紙となった串本IC周辺PFI。9月30日の参加表明締め切りで何グループが名乗りを上げるのか、2027年1月下旬に予定される再選定が次の焦点となります。




出典

串本町
「(仮称)串本IC周辺地域活性化施設整備に関する官民連携事業」募集要項・要求水準書・特定事業選定資料・優先交渉権者選定結果・優先交渉権者決定の取消しについて

国土交通省
串本町官民連携事業導入可能性調査 関連資料

建設通信新聞
串本IC周辺地域活性化施設の再公募に関する報道

建通新聞
串本IC周辺地域活性化施設PFI・優先交渉権者取消し関連報道

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