国交省「第3次無電柱化推進計画」始動、大阪府内19区間を優先整備へ 予算・事業量は拡大も、幹線道路の進捗率は7年経って33%、課題は“電柱が消えるまでの遅さ”



国土交通省は2026年6月2日、2026~2030年度を対象とする「第3次無電柱化推進計画」を決定しました。電線管理者による単独地中化を含め、5年間で約1,000kmの整備完了、約4,000kmの計画策定を目指します。

大阪でも動きは加速しています。府内19区間が「優先整備区間」に位置づけられ、大阪府は予算と事業量を拡大。大阪市も緊急交通路の重点14路線について2028年度までの完了を掲げています。

ところが、大阪市の4車線以上の幹線道路では、公式進捗率が2018年も2025年も33%。船場の道修町では電線共同溝が完成しても電線・電柱の撤去が続き、あべの筋でも長期にわたって整備が続いています。

大阪は無電柱化をやっていないのではありません。予算も付き、工事も動いている。それでも、実際に電柱が消えるまでが長い。そこに最大の課題があります。

国は「電柱を増やさず、確実に減らす」へ



第3次計画は、「防災・強靱化」「安全・円滑」「景観・観光」を3本柱に据えています。依然として電柱が毎年増えている状況を踏まえ、国は「電柱は増やさず、確実に減らす」と明記しました。

特に重視されるのが防災です。能登半島地震では約3,480本の電柱が倒壊・損傷し、道路啓開にも支障が生じました。そこで、高速道路ICと県庁、防災拠点、病院などを結ぶ緊急輸送道路を「優先整備区間」として重点化します。
分野 主な取り組み
防災・強靱化 高速道路IC~主要防災拠点などを重点整備
安全・円滑 通学路、バリアフリー特定道路へ対象拡大
景観・観光 観光地・歴史地区を面的に整備
新設電柱 道路・市街地開発と連携して抑制
コスト・工期 多様な工法、発注・工程見直しで効率化
ただし、国が使う「整備完了率」には注意が必要です。防災分野では管路整備が完了した延長の割合を指しており、電線の切り替えや既設電柱の撤去まで終えた割合ではありません。

この「管路完成」と「電柱撤去」の時間差が、大阪の現状を読み解く鍵になります。

大阪府内19区間を重点化 あべの筋も広域防災ルートに

近畿地方整備局は第3次計画に基づき、大阪府内の19区間を優先整備区間に設定しました。高速道路IC、府庁、防災拠点、主要病院などを結ぶルートが中心です。

大阪都心に関係する代表的な区間は次の通りです。
主な拠点間 区間延長
森ノ宮IC・大阪府庁~万博記念公園 15.6km
大阪城公園~万博記念公園 22.1km
大阪城公園~大泉緑地 18.1km
大阪公立大学医学部附属病院~出来島地区 13.7km
大阪城公園―大泉緑地間には、あべの筋を構成する大阪和泉泉南線が含まれます。あべの筋の無電柱化は、都市景観だけでなく、巨大地震時の道路啓開を担う広域防災ネットワークとしても重要度が高まりました。

大阪市の幹線道路、7年経っても公式進捗率は33%

大阪市は長年、主要幹線道路を中心に無電柱化を進めてきました。

2018年3月末時点では、直轄国道を含む4車線以上の幹線道路844kmに対し、整備延長は275km、公式進捗率は33%でした。

2025年3月末には整備延長が284kmへ増えましたが、公式進捗率は依然として33%です。
大阪市・4車線以上の幹線道路 2018年3月末 2025年3月末
対象延長 844km 844km
整備延長 275km 284km
公式進捗率 33% 33%
両年度の集計条件が完全に同じとは確認できないため、「7年間で完成したのは9km」と単純には評価できません。それでも、同じ844kmを母数とした公式進捗率が7年間33%のままという数字は重いものがあります。

さらに、防災上最優先となる緊急交通路の重点14路線も、2024年度の63.4%から2025年度は64%へ。1年間の上昇は0.6ポイントにとどまりました。大阪市は2028年度までの完了を掲げており、今後の加速が問われます。

道修町が象徴する「共同溝は完成、でも電柱は残る」



大阪の課題を最も分かりやすく示すのが、船場の道修町線です。

大阪市資料では、道修町線の電線共同溝はすでに完成しています。しかし、電線・電柱撤去工事はその後も続いており、無電柱化そのものは完了していません。大手橋線や福島桜島線の福島区間も同様です。
路線 公表されている状況
道修町線 共同溝完成、電線・電柱撤去を継続
大手橋線 共同溝完成、電線・電柱撤去を継続
福島桜島線・福島区間 共同溝完成、電線・電柱撤去を継続
精華小学校前通線 電線・電柱撤去まで完成
大阪駅北1号線 無電柱化完成
共同溝の完成後も、電力・通信ケーブルの入線、沿道建物への引込切り替え、架空線撤去、抜柱という工程が残ります。

つまり、行政上の「共同溝完成」と、市民が実感する「電柱のない街」の完成には時間差があります。

2024年12月時点の大阪市資料では、道修町線の完成予定は2026年度です。

大阪の無電柱化が進んでいるように見えにくい最大の理由は、ここにあります。

あべの筋も「工事は進むが、完成までが長い」



あべの筋でも同じ構図が見られます。

大阪和泉泉南線の阿倍野区の一部は、現在も道路整備とあわせた電線共同溝の整備対象です。大阪市資料では、阿倍野筋1丁目~播磨町1丁目の道路延長2.8km、整備延長5.0kmが対象になっています。

さらに、阿倍野筋2~3丁目の長柄堺線では、190mの区間が2012年に事業認可され、現在の認可期間は2031年3月まで延長されています。

用地取得や道路拡幅、地下埋設物の移設を伴うため、単純な無電柱化工事とは比較できません。それでも、一本の幹線道路として電柱のない空間が完成するまで十数年単位を要していることは、事業速度を考えるうえで無視できません。

大阪府は巻き返しへ 過去「年1km」から事業量を拡大



一方、大阪府では足元で明確な変化が出ています。府の2022年改定計画によると、2011~2020年の無電柱化実績は約10km、年平均約1kmでした。

しかし、2026年度の無電柱化予算は8億7,400万円に増額。防災目的では2025年度までに約4kmが完成し、2026年度は約15kmを事業中、2030年度末までに約19kmの完成を目指します。

つまり、「大阪府はいまも年1kmしか進んでいない」と見るのは正確ではありません。過去の整備ペースは極めて遅かったものの、現在は予算と事業量を増やして巻き返しを図っています。焦点は、その事業量をどれだけ早く完成区間へ転換できるかです。

大阪府自身も「抜柱の遅さ」を課題視

そして重要なのは、「共同溝完成後も電柱撤去に時間がかかる」という問題を、大阪府自身が認識していることです。

府は2022年の無電柱化推進計画で、電線共同溝整備後の抜柱について、工程管理などに時間を要していると明記しました。そのため「抜柱会議」を設け、電線管理者との連携によって整備済み区間の抜柱を促進する方針を示しています。

つまり、大阪のボトルネックは地下の土木工事だけではありません。完成した管路へ電線を移し、既存の架空線と電柱を撤去する最終工程にも時間を要しているのです。

問うべきは「何km工事中か」ではなく「何kmで電柱を消したか」



大阪の無電柱化が止まっているわけではありません。

国の新計画が始まり、大阪府内では19区間が優先整備対象となりました。府は予算・事業量を増やし、大阪市も重点14路線の2028年度完了を目指しています。

動きはあります。問題は、完成までが遅いことです。

今後は「共同溝○km完成」「○km事業中」だけでなく、成果をより明確に示す必要があります。
指標 見える成果
共同溝・管路完成延長 土木工事の進捗
電線切替完了延長 地中化への移行
架空線撤去完了延長 空から電線が消えた距離
抜柱完了延長 街から電柱が消えた最終成果
大阪の問題は、無電柱化をやっていないことではありません。

やっている。しかし、電柱が消えるまでが遅い。

国の第3次計画と大阪府の予算増によって、これから事業量は増えていきます。だからこそ評価の物差しも、「何km工事中か」から**「何kmで本当に電柱を消したか」**へ変えていく必要があります。

大阪では、うめきた、御堂筋、なんば、船場などで都市空間が急速に更新されています。再開発ビルや駅前広場だけでなく、防災、歩行環境、観光景観を支える街路まで更新してこそ、都市の質は高まります。

第3次無電柱化推進計画で大阪に問われるのは、計画の規模ではなく、街から電柱が消える速度です。




出典・参考資料

  • 国土交通省「第3次無電柱化推進計画について」
  • 国土交通省「第3次無電柱化推進計画のポイント」
  • 近畿地方整備局「第3次無電柱化推進計画・優先整備区間」
  • 大阪府「大阪府無電柱化推進計画」
  • 大阪府「令和8年度 道路施策のポイント」
  • 大阪府「令和8年度 道路改良費(無電柱化)」
  • 大阪市「大阪市無電柱化整備計画」の整備状況
  • 大阪市「令和7年度 建設局運営方針・実績評価」
  • 大阪市「令和7年度 グリーンボンド・インパクトレポート」
  • 大阪市「都市計画道路 長柄堺線(阿倍野)」

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