東京駅のような旧駅舎、空港のような大空間、幅111mの巨大LED!韓国鉄道の玄関口「ソウル駅」を歩く



トップティアの世界都市を見学するシリーズ:ソウル編今回は韓国の長距離列車の中心駅「ソウル駅」をご紹介します。

駅前には東京駅を思わせる重厚な旧駅舎、その隣には全面ガラス張りの現駅舎が並びます。中へ入ると、国際空港の出発ロビーのような吹き抜けの大空間。壁面には最大幅111mの巨大LEDビジョンが設置され、ホームは鉄骨トラスの大屋根に覆われています。

歴史的な位置付けは東京駅、鉄道機能は新大阪駅、内部空間は国際空港、ホーム景観は大阪駅・・。ソウル駅は、日本の一つの駅だけでは説明できない、複数の性格を併せ持つターミナルでした。

ソウル駅の概要


項目 内容
主な役割 KTX・一般長距離列車の主要ターミナル
現駅舎 1999年着工、2003年末に本格稼働
駅舎規模 地下2階・地上5階、延床約9万5,172㎡
接続路線 地下鉄1・4号線、AREX、京義・中央線、GTX-A
旧駅舎 1925年完成、現在は「文化駅ソウル284」
巨大LED 「Platform111」、最大幅111m
KORAIL利用者 1日平均約11万8,000人※
※2025年上半期のKTX・一般列車利用者。地下鉄、AREX、GTX-Aなどは含みません。現駅舎は駅務施設だけでなく、商業・駐車機能を一体化した大規模な複合駅です。

東京駅を思わせる「旧ソウル駅舎」



まず目を引くのが、駅前広場に面して建つ旧ソウル駅舎です。

ソウル駅の歴史は、1900年に開設された南大門駅にさかのぼります。現在残る旧駅舎は、日本統治期の1922年に着工し、1925年に京城駅として完成しました。赤レンガ、花崗岩、半円形の大窓、中央ドームを組み合わせたルネサンス様式の近代建築です。1947年にソウル駅へ改称され、その後も長く首都の玄関口を担いました。



赤レンガとドームを用いた重厚な外観は東京駅を連想させます。ただし、両駅に直接的な設計上の関係が確認されているわけではありません。20世紀前半に建てられた、西洋式の首都中央駅という同時代性として捉えるのが適切です。



旧駅舎は2004年のKTX開業期に鉄道駅としての役割を終え、2009~2011年に創建当時の姿へ復元されました。現在は展示、コンサート、ワークショップなどを行う複合文化施設「文化駅ソウル284」として使われています。「284」は、旧駅舎に付けられた史跡番号に由来します。

旧駅舎の隣に建つ、全面ガラス張りの現駅舎



歴史駅舎の隣に広がるのが、現在のKTXソウル駅です。現駅舎は1999年に着工し、KTX開業を控えた2003年末に本格稼働しました。地下2階・地上5階、延床面積は約9万5,172㎡。駅務施設約1万5,992㎡、商業施設約3万2,431㎡、駐車施設約2万679㎡で構成され、鉄道駅、商業施設、駐車場を一体化した巨大な複合建築となっています。



外壁の大部分にはガラスが使われ、広大なコンコースまで自然光が入り込みます。韓国政府が開業時に公表した資料によると、上空から見た建物は「弓を引いた姿」、そこから出発する列車は「弦から放たれる矢」をイメージしたデザインです。重厚な旧駅舎から、ガラスと鉄骨を多用した大空間へ。この新旧駅舎の対比そのものが、ソウル駅最大の見どころです。

中に入ると、国際空港のような大空間



現駅舎へ入ると、まず空間の大きさに圧倒されます。

天井が高く、視界を遮る柱や壁が少ないため、駅というより国際空港の出発ロビーに近い印象です。細い通路や多数の改札口が複雑に積み重なる日本の巨大ターミナルとは異なり、広い待合・出発空間を中心に、乗客が各ホームへ降りていく構成となっています。

開業時のソウル駅は、従来駅舎に比べて駅務・利便施設を約3倍へ拡大。乗客は上層部の待合・出発空間から、エスカレーターなどで1階のホームへ移動する動線が採用されました。

大きなキャリーケースを持つ旅行者が多いこともあり、コンコースを歩いている感覚は、都市圏の通勤駅よりも空港ターミナルに近いものです。

最大幅111mの巨大LED「Platform111」



巨大コンコースで圧倒的な存在感を放つのが、壁面に沿って設置された超大型デジタルビジョン「Platform111」です。名称は鉄道の「Platform」と、最大幅「111m」を組み合わせたものです。駅内部をパノラマ状に包み込み、列車案内だけでなく、広告、K-POP映像、季節コンテンツ、メディアアートなどを表示します。
項目 内容
最大幅 111m
設置者 KORAIL流通
運営者 カカオモビリティ
運営名称 Seoul Panorama
本格運用 2025年9月
主な表示 列車情報、天気、広告、K-POP、メディアアート
映像機能 3Dアニメーション、没入型コンテンツ
 



従来の広告板は、背後から光を当てるライトボックス型でした。Platform111では統合コンテンツ管理システムを導入し、3Dアニメーションや没入型映像にも対応。単なる案内設備ではなく、駅そのものを巨大な映像空間へ変えるメディアファサードとして整備されました。

スタジアムや国際空港にありそうな映像設備が、鉄道駅の待合空間を横断するように設置されています。近年のソウルで目立つ、建築と巨大デジタルサイネージを一体化させる都市演出が、ここでも徹底されていました。

大屋根の下に並ぶKTX



コンコースからホームへ降りると、空間の印象が再び変わります。

複数のホームと線路の上には、鉄骨トラスと採光面を組み合わせた巨大な屋根が連続しています。大屋根の下に長いKTX編成が並ぶ光景は、非常にスケール感があります。



構造や設計思想が同じという意味ではありませんが、複数のホームと列車を巨大な建築空間で包み込む景観は、大阪駅の大屋根を連想させます。



ただし、駅の性格は大阪駅とは異なります。地上ホームの主役は、KTXをはじめとする都市間列車と一般長距離列車です。東京駅や大阪駅の在来線ホームのように、都市圏の通勤電車が数分間隔で到着し、大量の乗客が連続的に流れ出す光景は目立ちません。

2025年上半期、ソウル駅におけるKORAILのKTX・一般列車利用者は1日平均約11万8,000人。同社の駅では国内最多で、東大邱駅約5万2,000人、大田駅約5万1,000人を大きく上回りました。韓国の長距離鉄道における中心駅であることが、数字からも分かります。

都市鉄道と空港アクセスは地下へ

ソウル駅にはKTX・一般列車に加え、地下鉄1・4号線、AREX、京義・中央線、GTX-Aが接続しています。地上の大駅舎が都市間鉄道、地下・周辺駅が都市圏輸送と空港アクセスを担う、立体的な交通結節点です。GTX-Aは2024年12月に雲井中央―ソウル駅間が開業し、首都圏北西部からの高速通勤輸送も加わりました。

さらに、AREXソウル駅の地下2階には都心空港ターミナルがあります。

AREX直通列車の利用者は、対象となる航空会社・便であれば、ソウル駅で搭乗手続き、手荷物の預け入れ、出国審査を済ませてから仁川国際空港へ向かえます。ソウル駅は建築空間が空港に似ているだけでなく、空港の出発機能そのものを一部取り込んだ駅なのです。

東京駅の歴史性と、新大阪駅の機能を併せ持つ



ソウル駅の特徴を日本の駅に置き換えると、次のように整理できます。
視点 近いイメージ
旧駅舎と首都の玄関口としての歴史 東京駅
KTX中心の都市間鉄道機能 新大阪駅
巨大な待合・出発空間 国際空港
ホームを覆う鉄骨大屋根 大阪駅
111mの巨大映像設備 スタジアム・空港ターミナル
ソウル駅は、韓国最大の都市にある中央駅ですが、新宿や梅田のように都市圏の通勤電車と商業人流が一か所へ集中するターミナルではありません。

地上駅に限れば、役割はむしろ「首都中心部に置かれた巨大な新大阪駅」に近い。そこに東京駅を思わせる歴史建築、国際空港のような大空間、大阪駅を連想させる大屋根、最新の巨大デジタルビジョンが重なっています。

1925年の近代建築を保存しながら、その隣でKTX時代のガラス駅舎を運用し、さらに最大幅111mのメディアファサードを加える。ソウル駅は、韓国鉄道の玄関口であると同時に、歴史を残しながら都市の表情を猛烈な速度で更新する、現代ソウルを象徴する駅でした。

フォトギャラリー


























出典

Visited 44 times, 44 visit(s) today