
鳥取市は、JR鳥取駅周辺の再整備方針を具体化した「鳥取駅周辺再生整備計画(素案)」を公表しました。
2024年6月に策定した「鳥取駅周辺再生基本計画」では、交通結節機能の強化や駅前空間の再編といった将来像を示していましたが、今回の素案では、バスターミナルの移設、北口・南口広場、交通広場、複合施設の配置に加え、公共整備分の概算事業費約120億円、2030年度の着工目標まで踏み込みました。
鳥取市は9月1日から10月12日まで市民政策コメントを実施し、3D映像を活用したオープンハウス型説明会も開催しています。現時点では素案段階であり、市民意見や関係機関との協議を踏まえて、最終的な整備計画をまとめる方針です。
基本構想から事業化段階へ、駅前約2.5万㎡を再編

今回の素案では、鳥取駅周辺約2.5万㎡を対象に、交通施設、駅前広場、複合施設を一体的に再配置します。軸となるのは、交通処理を優先してきた駅前空間を見直し、鉄道・バス・タクシー・自家用車の乗り換え機能と、歩行・滞在・回遊の空間を再構成することです。
| 項目 | 主な整備内容 |
|---|---|
| 北口 | 駅前広場、交通広場、バスターミナル、複合施設を再配置 |
| バス | 現在の駅西側から北口東側へ移設・集約 |
| 歩行者 | 駅と中心市街地を結ぶ動線を強化 |
| 複合施設 | 公共機能と民間機能を組み合わせた施設を想定 |
| 南口 | 広場・交通広場を再編し、山白川との連続性を強化 |
| 公共整備費 | 約120億円 |
| 着工目標 | 2030年度 |
バスターミナルを北口東側へ移設、交通結節機能を再構築

再整備の中心となるのが、鳥取駅北口です。現在の鳥取バスターミナルは駅西側にあり、鉄道からバスへの乗り換えには一定の移動が必要です。素案では、バスターミナルを北口東側の現・風紋広場付近へ移設し、改札に近い位置へ路線バスや高速バスの機能を集約します。これにより、鉄道とバスの乗り換え距離を短縮するとともに、駅前で分散している交通機能を整理します。
一般車やタクシーについては南口を主な受け皿としつつ、北口西側にも交通広場を配置します。交通手段ごとの動線を分けることで、利便性と安全性の両立を図る考えです。
北口正面は広場を拡充、交通空間から滞在空間へ

北口正面では、交通空間の比率を見直し、イベントやマルシェ、日常的な滞在にも使える駅前広場を整備します。素案では、駅前約2.5万㎡について、環境空間57%、交通空間43%とする構成を想定しています。現状よりも環境空間の比率を高め、駅前を「通過する場所」だけでなく、「滞在する場所」として再構成します。
北口は、駅利用者を中心市街地へ導く玄関口として位置付けられます。駅正面から市街地側への見通しを確保し、歩行者動線を分かりやすくすることで、若桜街道方面への回遊を促します。デザインコンセプトには、鳥取砂丘を象徴する「風紋」を採用。砂丘をイメージした大屋根などを配置し、鳥取らしさを感じられる駅前景観をつくる計画です。
県道43号は平面横断を検討、駅と中心市街地の分断を緩和
鳥取駅北口と中心市街地の間には県道43号が通っており、歩行者動線を分断する要因の一つとなっています。素案では、駅北口から若桜街道方面へのアクセス性を高めるため、県道を地上で横断できる平面横断を基本に検討します。現在は地下道が主要な横断動線となっていますが、高齢者や車いす利用者などにとっては移動負担が大きくなる場合があります。平面横断を整備することで、駅から中心市街地までの移動をより直感的で連続性のあるものにします。一方、既存地下道については、存続、撤去、平面横断との併用など複数の選択肢が残されており、現時点で結論は出ていません。
北口西側には複合施設、公共空間と民間機能を一体化

北口西側の現・ケヤキ広場付近には、新たな複合施設を整備する計画です。1階の広場側には、北口広場と一体利用できる全天候型の屋内空間を設ける想定で、鉄道やバスを待つ利用者、学生、市民、観光客などが日常的に滞在できる空間を目指します。
鳥取市はこれまでの民間事業者への調査で、商業、業務、住宅、宿泊などの導入可能性を検討してきました。駅前広場と複合施設を隣接させることで、公共空間だけでは生み出しにくい日常的な人の滞留や消費を、民間機能と組み合わせて取り込む構成です。
ただし、施設規模や具体的な用途、入居する民間事業者は未定で、現在示されている建物形状も整備イメージの段階です。
南口は山白川とのつながりを生かした「日常の駅前」へ

南口では、北口とは異なり、日常利用や憩いを重視した空間整備を進めます。駅南側を流れる山白川と連続する広場や歩行空間を整備し、水辺を感じながら過ごせる環境をつくります。交通面では、一般車、タクシー、送迎バスの乗降位置を整理し、駅コンコースから利用しやすい配置へ見直します。北口をにぎわいと回遊の起点、南口を日常的な滞在と憩いの場として位置付け、南北それぞれの特性を生かす構成です。
公共整備費は約120億円、北口側が約8割

今回の素案では、公共整備分の概算事業費も示されました。総額は約120億円で、このうち北口側が92億円、南口側が28億円を占めます。
| 施設 | 概算事業費 |
|---|---|
| バスターミナル | 22億円 |
| 北口広場 | 24億円 |
| 北口交通広場 | 11億円 |
| 県道 | 3億円 |
| 複合施設・公共整備分 | 32億円 |
| 北口側計 | 92億円 |
| 南口広場 | 20億円 |
| 南口交通広場 | 7億円 |
| 南口駐車場 | 1億円 |
| 南口側計 | 28億円 |
| 合計 | 120億円 |
複合施設については、PFIやリース方式、官民が共同で事業を進めるLABVなど、公民連携による整備手法も検討されています。公共投資だけで施設を整備するのではなく、民間資金や民間ノウハウをどこまで組み込めるかが、今後の事業設計で重要になります。
2030年度着工、北口側は2035年度完成を目標

今後は、市民政策コメントや説明会で寄せられた意見、関係機関との協議を反映しながら、整備計画を確定します。現時点では、2026年中に整備計画をまとめ、2030年度の着工を目指すスケジュールが想定されています。北口側については2035年度の完成を目標としており、駅やバスターミナルの機能を維持しながら、段階的に工事を進めることになります。
計画規模を考えると、用地、交通処理、民間事業者の参画、事業費の精査など、着工までに調整すべき項目は少なくありません。今後は、素案で示された配置や事業費がどこまで具体化されるかが焦点になります。
鳥取駅を「交通拠点」から「都市再生の起点」へ

今回の素案によって、鳥取駅周辺再整備は、将来像を示す段階から、施設配置、事業費、工程を伴う事業化フェーズへ一歩進みました。人口減少が進む地方都市では、駅前に新しい施設を整備するだけでは、人の流れを生み出し続けることは容易ではありません。
その点で鳥取市の計画は、交通結節機能の改善、広場整備、歩行者動線の再編、複合施設の導入を一体で進め、駅前で生まれた人流を中心市街地へつなげようとしている点に特徴があります。
約120億円の公共投資を呼び水として、どこまで民間投資を引き込み、駅周辺に日常的な滞在と消費を生み出せるか。鳥取駅周辺再生は、駅前整備にとどまらず、中心市街地の再生と都市構造の再編を見据えた長期プロジェクトとして、次の段階に入りつつあります。
出典
鳥取市「鳥取駅周辺再生整備計画(素案)」鳥取市「鳥取駅周辺再生基本計画」
鳥取市「鳥取駅周辺再整備の進捗状況について」
鳥取市 市長定例記者会見資料
山陰放送(BSS)
山陰中央新報
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