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大阪が世界観光都市ランキング1位!「体験価値」が評価される時代が到来。インフラから感情へ、観光評価軸のパラダイムシフトが進む



世界191都市を対象にした「Yanolja Attractiveness Index 2025」で、大阪が初の世界1位に選出されました!SNSを通じて収集された観光客の“体験評価”をベースにしたこの新指標は、観光都市の価値基準が大きく転換していることを示しています。

「都市の体験価値」を可視化──新たな評価基準の登場


韓国ソウルを拠点とするYanolja Researchは、2025年7月2日、「Yanolja Attractiveness Index」を初公開しました。本指標は、アメリカ・パデュー大学、韓国・慶熙大学、英国のBrandwatchと共同で開発されたもので、191の世界観光都市を対象に、訪問者の主観的体験に基づいて評価しています。

評価に用いられたのは、14言語に対応したSNSの投稿データです。分析対象期間は2023年6月から2025年5月までの直近2年。感情分析技術により、都市ごとのポジティブ言及比率(Tourism City Attractiveness)と話題量(Tourism City Reputation)を抽出し、それらを掛け合わせて総合スコアを算出する仕組みです。

インフラから感情へ──観光評価軸のパラダイム転換


従来のランキングが宿泊数や交通インフラ、政策支援など供給側の要素に偏っていたのに対し、今回の指標は観光客の「実感」に注目しています。ここでは「どれだけ施設があるか」ではなく、「その都市で何を感じたか」が問われており、“エモーショナル資本”が都市の価値を図る新たな基準となりました。

評価は次の4つのディメンションで構成されています。


  • 都市の美しさと自然景観(30%)

  • 文化・歴史的価値(30%)

  • 体験型コンテンツ(30%)

  • ホスピタリティ(10%)

大阪が1位に──日本勢の強さとアジアの台頭

出展:Yanolja Attractiveness Index

大阪は前年の3位から一気に2ランク上昇し、世界1位を獲得しました。これに続く京都(3位)、沖縄(10位)、福岡(11位)、東京(12位)、札幌(18位)と、日本からは6都市がトップ20入り。国別で最多ランクインとなりました。

大阪が評価された理由は、都市のコンテンツ力とSNS拡散性にあります。ユニバーサル・スタジオや道頓堀のネオンサインなど、視覚的に印象に残る素材が豊富であり、さらに地元住民の親しみやすさや、コンパクトな都市構造も高く評価されました。万博の開催に伴うポジティブ投稿の増加も、話題性を押し上げる要因となりました。

欧州のブランド都市に変調──“共感される都市”が選ばれる時代へ

パリ(2位)、ロンドン(6位)、ローマ(8位)などの欧州都市は依然として高いブランド力を誇るものの、バルセロナ(25位)、マドリード(29位)などは順位を下げています。一方で、東南アジアのバンコク(7位)、チェンマイ(20位)が急浮上しており、“体験の語られやすさ”が都市の評価に直結していることが明らかです。

成熟都市は「感動の新鮮さ」に欠ける傾向があり、投稿数やポジティブ度が相対的に鈍化することもあります。この構造的課題は、京都のような都市にも見られ、「ブランド疲労」のリスクとして認識されています。

【さらに深堀り】「大阪1位」の意味を正確に読み解く


評価指標の本質は「空気感のトレンド分析」

Yanolja Attractiveness Indexは、定量的かつグローバルな指標である一方、SNSの特性から“瞬間的な盛り上がり”に影響されやすい面も持っています。中国(Weibo)や米国(Facebook/X)、日本(Instagram/X)など、国によってSNS文化が異なることは、投稿の偏りや地域間バイアスを生む可能性があります。

また、万博などの大型イベントが短期的にポジティブ投稿を増やすこともあります。したがって、このランキングは「世界で最も優れた都市を決めるもの」ではなく、「今、どの都市が世界で共感されているか」という“空気のスナップショット”と捉えるのが妥当です。


大阪が評価された構造的要因

要因 解説
万博効果 現地体験者によるSNS投稿が急増し、話題性を上昇させた
SNS映えする都市風景 道頓堀、USJ、心斎橋など視覚的訴求が強い
人の印象 「親しみやすい」「外国人に優しい」といった情緒的評価が高い
アクセスの良さ 関空~なんばの直結性など、導線がシンプル
コンパクト都市 滞在効率が良く、短時間でも濃密な体験が可能

今後の懸念と持続戦略への課題


一方で、ポジティブな印象が過熱した都市には「冷め」もやってきます。


  • 万博終了後の「投稿減退」リスク

  • 過度な期待値と実体との乖離

  • リピーター主導による偏った評価構造

  • 京都に続く「観光公害」の潜在リスク

大阪の都市ブランドが、SNSにおける偶像的イメージに依存しすぎると、評価と実態のズレが炎上を招くリスクもあります。


評価されるのは「完成度」より「心を動かす力」


この都市ランキングが示すのは、「いま、この都市が人の心を動かしているかどうか」です。都市のブランドはハード面だけでは形成されず、SNS時代においては“共感される空気”の設計が、観光誘導・投資誘導・人材誘導に波及するファクターになっています。

大阪は「都市として完成された」から1位になったのではありません。「多様性に富み、展開が読めず、誰かに語りたくなる街」という今の時代の空気と一致したからこそ、世界で最も“好かれた都市”になったのです。

まとめ:「都市の完成度」から「体験の再現性」へ

都市の評価軸は、施設の数や規模ではなく、そこに訪れた誰かが「また来たい」「誰かに教えたい」と感じたかどうか?という体験価値に変わりつつあります。

大阪が問われるのは、ここからです。


  • 感動体験の再現性をどうデザインするか

  • ポジティブな空気の“持続可能性”をどう担保するか

  • 訪問者の期待値と誠実に向き合う戦略

都市ブランドは一度形成されれば自動的に維持されるものではありません。評価の“上昇”には理由があり、“失速”にも必ず構造があり、立ち止まる事なく磨き続ける必要があります。





出典:


1 COMMENT

ガンマ

「感動的体験」はやはり「人」ではないでしょうか。
活気があって賑わっていて、気さくな感じで老若男女問わず話しかけてくる。街並みは新旧混ぜ合わせアジア感もあり、しかも整然として人々は礼儀正しい。
これはもう異文化中の異文化ではないでしょうか。
そして日本で一番体感できるのは大阪を中心とした近畿地区なのかもしれません。

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