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沖縄北部で観光再編が始まる──オリオンホテル モトブが都ホテルズに加盟、JUNGLIA開業と近鉄の参入がもたらす構造転換


出展:オリオンホテル モトブ リゾート&スパ

2025年7月1日、オリオンビールのグループホテル「オリオンホテル モトブ リゾート&スパ」が、近鉄グループ傘下の都ホテルズ&リゾーツに加盟します。この動きは、同年開業の大型テーマパーク「JUNGLIA OKINAWA」による観光需要の変化を見越した戦略的判断であり、近鉄グループの沖縄再参入とも重なります。単なるホテル提携にとどまらず、観光・宿泊・地域資本の再構築を視野に入れた包括的な連携です。

JUNGLIA OKINAWA──沖縄北部の観光構造を転換する起点


出展:ジャパンエンターテイメント

沖縄県今帰仁村に2025年7月開業予定の「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア・オキナワ)」は、約60ヘクタールの敷地に22種類以上のアトラクションを展開する大型テーマパークです。AR技術を活用した恐竜型ライドなどを備え、これまで観光開発が限定的だった北部地域に新たな観光動線を形成します。

運営会社の発表によれば、開業後15年間で約6.8兆円の経済効果と約88万人分の雇用創出(延べ人数)が見込まれており、県全体の観光と経済の再構築に大きな影響を与えるとされています。

オリオンホテル モトブの機能──JUNGLIAを支える宿泊拠点


出展:オリオンホテル モトブ リゾート&スパ

このJUNGLIAの公式ホテルの一つが「オリオンホテル モトブ リゾート&スパ」です。全室50㎡以上のオーシャンフロント設計で、天然温泉や屋内外プール、地元食材を使用したレストラン、クラフトビールバー、オリオングッズショップなどを備え、観光と滞在を両立する施設構成となっています。美ら海水族館や備瀬のフクギ並木から徒歩圏、JUNGLIAへは車で約26分という立地も強みです。

運営するオリオンホテル株式会社は、オリオンビールの観光・ホテル事業部門であり、北部地域への経営資源集中を進めています。

都ホテルズへの加盟──地域ブランドと都市資本の融合


出展:都ホテルズ&リゾーツ

2025年7月から都ホテルズ&リゾーツに加盟する本ホテルは、名称を変更せず「オリオンホテル モトブ リゾート&スパ」として運営を継続します。これは地域ブランド「オリオン」の認知度を維持しつつ、都ホテルズの運営支援やロイヤリティ制度「都プラス」を活用する機能連携型のモデルです。

都プラスは会員数約20万人を有し、宿泊や飲食に応じてポイントが加算されるほか、会員特典を通じてリピーター獲得につながる仕組みが整っています。

地域社会への波及効果──住民・観光客・自治体へのベネフィット


出展:オリオンホテル モトブ リゾート&スパ

この連携と施設整備は、事業者のみならず地域全体に以下のような恩恵をもたらします。

地元住民にとって

  • 雇用機会の拡大(ホテル・テーマパーク・飲食・交通分野)
  • 地域経済の活性化(観光消費による地元事業者への発注増)
  • 生活インフラ整備の促進(交通・通信・公共サービスの拡充)

観光客にとって

  • 高品質な滞在体験の提供(リゾートホテルと大型アトラクションの連携)
  • 北部観光の選択肢拡大とアクセス性向上
  • 一定水準のサービス保証(大手ホテルチェーンの運営)

自治体にとって

  • 税収と雇用の増加(宿泊税・法人税・所得税など)
  • 那覇・南部集中の緩和(地域分散型観光の推進)
  • 持続可能な観光政策の具現化(地域資本と外部資本の共創)

近鉄の本格回帰──「沖縄を未来の中核」に据える長期戦略


ウェスティン都ホテル京都

近鉄グループは、かつて沖縄都ホテルの運営実績があり、2023年にJUNGLIAの運営会社「ジャパンエンターテイメント」へ出資。2024年にはオリオンビールの株式約10%を取得し、観光・宿泊分野での資本業務提携を締結しました。

同グループが掲げる「長期ビジョン2035」では、沖縄を重点戦略エリアと明記。今回の取り組みは単なる一施設への投資ではなく、グループ内のホテル事業、旅行業(近畿日本ツーリスト・クラブツーリズム)、百貨店流通、鉄道インフラ、さらには新規事業領域との連携による多層的な観光経済圏の創出を視野に入れています。

両社の戦略実装フェーズ──現場レベルで進む連携の全貌


志摩観光 ザ ベイスイート

両社の資本業務提携に基づき、次のような具体的な施策が段階的に展開されています:
  • ホテル運営支援:都ホテルズによる予約システムの共有、CRMの導入、スタッフ教育プログラムの支援、人材派遣などにより、サービス品質の底上げと業務効率化を実現。
  • 販売促進と顧客獲得:都プラスとの連携によるポイント施策、近鉄沿線顧客へのターゲティング広告、都ホテルズ公式チャネルでの予約導線強化などを実施。
  • 送客体制の構築:KNT-CTホールディングス傘下の旅行会社と連携し、修学旅行・団体旅行・MICE市場への対応を強化。
  • 商品・流通連携:オリオンビール製品の近鉄百貨店・系列ホテル・レストラン・駅ナカ店舗での販路拡大、地域土産品との連携開発も検討中。
これらは単発の取引にとどまらず、近鉄グループとオリオンが長期的に共創する事業構造を築くための布石となっています。

観光の再構築は構造設計から始まる




今回の都ホテルズ加盟と地域資本・外部資本の連携は、個別施設の強化にとどまらず、「観光地そのものをどう運営するか」という構造的視点からのアプローチです。JUNGLIAを契機に、ホテル・交通・旅行・流通の連動が生まれ、沖縄北部は新たな観光経済圏として再設計されつつあります。

出典元:
 

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