南海和歌山市駅に建設された複合施設「キーノ和歌山」に入居する「和歌山市民図書館」がグランドオープンしました。和歌山市民図書館は、「TSUTATA(ツタヤ)」を展開する「カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)」が市から運営を委託されています。
エントランス付近の様子です。入館者は体温チェックが行われていました。
フロア構成
4階 子供の成長を育む場 |
図書資料だけでなく知育玩具を常設し、子供たちが自由に遊び、多様な学びが体験できる。また、子育て世代の方が気軽に集え、交流できる「地域子育て支援室」を設置。 | ゆったり座ることのできる階段状になった「えほんの山」や、ひみつの「本のどうくつ」など、わくわくするスペースでおはなし会などを開催。「もぐもぐスペース」は持ち込みの弁当が食べられる。和歌山市地域子育て支援拠点施設を併設。 |
3階 自分を高める場 |
専門的な資料を中心に配置。市民図書館がこれまで収蔵してきた貴重な「移民に関する資料」を閲覧できる移民資料室を設ける。 | 静かな環境で学習に専念できる学習室のほか、座ってお食事のできるテラス席、パソコンが利用できるオープン型の学習席を用意。席数が多くゆったりと読書出来る環境がある。 |
2階 日々の生活の充実を育む場 |
料理・健康・趣味などの生活に身近な資料と小説を配置。多目的ルームや、郷土作家である有吉佐和子さんの関連資料が閲覧できる有吉佐和子文庫を設ける。 | 静かな空間で落ち着いて読書ができる座席、多目的ルームを用意、イベントセミナーを実施。 |
1階 コミュニケーション&まちの玄関 |
一般図書のエリアに加え、【スターバックス】と【蔦屋書店】を併設。 書店では文具や雑貨、和歌山の選りすぐりの物産を取り扱う。 | “和歌山の上質品” をコンセプトに和歌山で作られた特産品、名産品を幅広く取り揃え。文具・雑貨をセレクトして提案。カフェのドリンクは一部のエリアを除いて館内のどのフロアにもお持ち込み可能。 |
住所 | 〒640-8202 和歌山県和歌山市屏風丁17番地 |
電話 | 073-432-0010 |
開館時間 | 午前 9 時から午後 9 時まで |
休館日 | 年中無休 |
1階:蔦屋書店とスターバックスコーヒーがメイン
エントランスを抜ける高い天井が気持ちいい、あかるい空間が広がっていました。1階は図書館ではなく「蔦屋書店」と「スターバックスコーヒー」をメインに県産品をセレクト販売する情報発信基地だと理解しました。
店内フォトジェニックなデザインで纏められています。
スターバックスコーヒーの様子です。これは凄い・・。
「書店」「カフェ」ゾーンである1階から「図書館」である2階に向かいます。
1階の壁面上部は書庫になっています。必要な時は通路があるので容易に取り出せます。
2階、3階は真面目な図書館
エスカレーターを上がると図書館ゾーンに入ります。蔦屋書店と図書館の境目が曖昧なのは狙っての事でしょうか?
フロアに一角にはこんな緑のスポットがありました。
館内の大部分はこんな感じでデザインが良い機能的な書架が並んだ出来の良い図書館です。
書架にはロケーションナンバーが細かく設定されており、利用者の案内や在庫管理も考えられています。
大判の図書を痛めない様に開いて見られる台付きの書架。
関心したのが利用者の読書環境がとても優れている事です。こちらはテラス席の様子ですが、見るからに気持ち良さそうです。
テラス席の内側はこんな感じです。
4階の子ども図書館はちびっ子を連れてきたくなる場所
4階は子ども図書館。ゆったり座ることのできる階段状になった「えほんの山」や、ひみつの「本のどうくつ」など、わくわくするスペースでおはなし会などが開催。「もぐもぐスペース」は持ち込みの弁当が食べる事が出来ます。また、和歌山市地域子育て支援拠点施設を併設するなど子育て支援機能付き図書館といった感じでしょうか。4階の書架の様子です。天然木をつかった優しい素材。角が取れた丸い書架はよく考えられています。
ちびっ子の遊び場、プレイスペースの様子です。「もぐもぐスペース」には、子供向けの流し台があり、食後にお弁当箱を洗ったり、親子の共同作業や食育を考えた造りになっていて、これも関心しました。
本を踏みつけている様で不愉快、との意見がある「絵本の山」。現地を見ると印象がかなり変わりました。まず、このエリアは土足厳禁で靴を脱いで上がります。
上から見るとこんな感じです。ちびっ子達から見ると「大きな遊具の中に絵本がちりばめられている」様に見えるのではないでしょうか。子ども目線で考えると印象が180度変わりました。段差をよじ登り遊びながら「絵本をみつける」。親子で腰掛けて本を読む。利用者は楽しそうに時間を過ごしていました。
屋上庭園はノンビリ
「ほんの山」を登り切ると、そこは屋上庭園が広がっていました!これは気持ちいいですね。
ここでも主役は子どもたち。まあ、楽しそうでした(笑)
例えばこんな図書館
1つの物事に対して人それぞれ、様々な意見があると思います。感じ方、捉え方、切り口は千差万別で捉え方は人それぞれです。万人を満足させる事はできません。例えばこの図書館。韓国・ソウルのCOEXモール内にある「ピョルマダン図書館」です。この写真を見て「本が取れない」「機能性を無視」「映えだけを意識してる」「本に対する冒涜」といった意見が出ると思います。しかし、この図書館の本当の目的を知ると見方が変わるかもしれません。
韓国政府の文化体育観光部が2017年11~12月に実施した、全国の成人6,000人、小中高生3,329人を対象に実施した「2017年国民読書実態調査」によると、成人、小中高生ともに、年間の読書率と読書量が15年に比べ減少していたそうです。
この図書館は有名ショッピングモールの真ん中に位置しており非常に多くの人の目に触れます。スマホネイティブ世代で紙の本から遠ざかってしまった人々もフォトジェニックな施設なら注目を集める事が出来ます。「映える話題の図書館にふらっとよって、立ち読みする」行動が促されます。
ピョルマダン図書館は機能ではなく、読書離れが指摘される韓国で「ビジュアル的にキャッチーな施設で人目を引いて、読書に興味を持ってもらう」わずかでも読書離れに歯止めをかけられれば。そんな目的を持って設置されました。偶然面白い本と出会う機会を作って、本や読書への「入口」を作る事がこの図書館の真の目的だそうです。
こちらは金沢市の「海みらい図書館」です。素晴らしい建築デザインが注目を集めた有名な図書館です。
岐阜市にある、みんなの森 ぎふメディアコスモスの様子です。「市立中央図書館」、市民活動交流センター」、「多文化交流プラザ」及び「展示ギャラリー」で構成された複合施設です。
中国の天津濱海図書館(浜海新区図書館) 。ここまでぶっ飛ぶと比較対象にはならないか・・。
再び、和歌山市民図書館の様子です。「えほんの山」は本を踏みつけている様に見えるかもしれませんが、子供たちは楽しそうに本を読んでいました。いろいろな意見があると思いますが、この場所のターゲットであるちびっ子は大喜びで場を楽しんでいました。
誰に喜んで欲しいか?何を知ってほしいのか?その目的は? 様々な意見があって当然だと思います。僕は「和歌山市民図書館」がTSUTAYA図書館という呼称で「えほんの山」がネット上で批判炎上をしているのを見て「自分の目で見てみよう」と思い取材してきました。この施設をデザインされた方がどなたかは知りませんが、この場の主人公である子供たちは楽しそうに本を読んでいました。それを伝えたくてこの記事を書きました。
南海和歌市駅ビルは赤レンガつくりで高島屋などが入って昔は賑わっていましたが、和歌山市の人口減などで寂れ、JR和歌山駅前と比べても場末駅のような印象でした。JR側が和歌山市の表玄関、南海側が勝手口に見えました。高島屋も5、6年前に撤去し、ますます寂れていると思っていたら、こんな起死回生があったのですね。図書館と書店の見事な一体化です。うめきた2期の中にこんなのが入ったらいいと思います。
中之島の子ども図書館の開館はまだですか。和歌山の「絵本の山」の方が安藤デザインより子どもが楽しめるような感じがします。中之島は箱だけづくってこれからどう活用してしていくか、ビジョンがもう一つ分かりません。