ヤンマースタジアム長居、大規模改修へ!大阪市が「日本を代表するスタジアム」を要求、完成像は2027年3月に判明

出展:大阪市


大阪市は、長居陸上競技場(ヤンマースタジアム長居)の大規模改修に向け、基本設計者を選定する公募型プロポーザルを実施しています。

計画には、老朽化した屋根や外壁、観客席、トイレ、空調設備の更新に加え、VIPラウンジや専用動線の新設、大型映像装置・音響設備の更新、選手用ロッカー室の改修などが盛り込まれています。

大阪市が設計者に求めているのは、単なる設備更新ではありません。国際大会や大型イベントに対応し、長居公園との一体性も備えた「日本を代表するスタジアム」への再構築です。

改修後の収容人数、総工事費、工期、休場期間は未定です。2026年8月下旬に基本設計者を選定し、2027年3月末までに基本設計をまとめる予定で、この段階で改修計画の全体像が見えてきます。

開業から30年、長居陸上競技場が大規模改修へ


出展:日本体育施設株式会社

長居陸上競技場は1996年に開業した、日本陸上競技連盟第1種公認の陸上競技場です。約5万人を収容し、2002年FIFAワールドカップや2007年世界陸上大阪大会、大型コンサートなどの舞台となってきました。

一方、開業から約30年が経過し、建物や設備の老朽化が進んでいます。バリアフリー、観客サービス、VIP対応、大規模イベントの運営など、現在のスタジアムに求められる機能への対応も課題となっています。

大阪市は2024年3月に改修基本計画を策定し、2025年には国際大会や大規模スポーツ大会への対応を追加検討しました。今回の基本設計は、これらの構想を具体的な図面や施工計画へ落とし込む段階に当たります。

改修要件はかなり具体的



大阪市が公表した仕様書には、現時点で想定されている改修項目が示されています。
分野 主な改修内容
長寿命化 屋根トラス塗装、外壁塗装、止水対策
屋根・外装 トップライト、樋、金物、建具の改修
観客エリア 観客席更新、スタンド・コンコース防水、サイン改修
バリアフリー トイレ改修、昇降機新設
VIP機能 専用動線、車寄せ庇、貴賓室、ラウンジ、個室、観覧席の整備
選手施設 選手用ロッカー室の改修
コンサート対応 防音幕設置用レール、防音扉の設置
機械設備 空調、換気、給排水、衛生、消火設備の更新
電気・映像 照明、大型映像、音響、監視、防災設備の更新
安全・法令 避雷設備、アスベスト調査、既存建物の法適合調査
特に目立つのがVIP機能の強化です。既存の貴賓室を改修するほか、VIPラウンジや個室、専用観覧席、専用動線を整備します。

大型映像装置や音響設備も更新し、コンサート時の騒音対策として、防音幕を設置するためのレールや防音扉を新設します。

大阪市が要求する「日本を代表するスタジアム」


出展:日本体育施設株式会社

大阪市は設計者に対し、施設の魅力と運営能力を高める提案を求めています。
提案テーマ 求められる内容
デザイン 日本を代表するスタジアムにふさわしい外観・空間
大会対応 国際大会や大規模イベントを誘致できる運営機能
動線 観客、選手、VIP、関係者、公園利用者の分離
観客環境 座席、通路、トイレ、案内表示の改善
選手環境 更衣室やバックヤードの機能向上
バリアフリー 車いす利用者や多様な来場者への対応
日常利用 長居公園と一体となった開かれた空間
維持管理 清掃、点検、修繕を行いやすい施設計画
審査では、「日本を代表するスタジアムにふさわしいデザイン」と「動線・ゾーニング」に高い配点が設定されています。

最近の成功例に共通する「365日型スタジアム」


長崎スタジアムシティ(ピース スタジアム)

近年のスタジアム整備では、試合開催日だけ使われる施設から、飲食、物販、観光、イベント、公園機能を組み合わせ、試合のない日にも人を呼び込む「365日型」への転換が進んでいます。
施設 日常的な集客機能 特徴
北海道ボールパークFビレッジ 飲食、温浴、宿泊、遊具、イベント、球場内の一部開放 球場を核に年間を通じて集客する複合型
長崎スタジアムシティ ホテル、商業、オフィス、アリーナ、飲食 スタジアムを中心に新しい街を形成
ひろしまスタジアムパーク 芝生広場、水辺、カフェ、ショップ、ミュージアム 都市公園と一体化したまちなか型
トッテナム・ホットスパー・スタジアム ツアー、屋上体験、カート、会議・イベント利用 スポーツ以外の体験も収益化
長居に最も近いのは、都市公園とスタジアムを一体化した「ひろしまスタジアムパーク」です。

一方、Fビレッジや長崎スタジアムシティは、商業や宿泊まで組み込んだ大規模複合開発であり、既存施設を改修する長居とは事業規模が異なります。

長居も「開かれたスタジアム」へ

大阪市は、平常時のコンコースや外周部を、長居公園と一体となった「開かれた空間」として活用する提案を求めています。

イベント開催時には、観客や関係者と一般の公園利用者の動線を分離し、安全性と運営効率を確保します。通常時は公園に開き、イベント時には有料エリアとして管理する考え方です。

現段階では、ホテルや大規模商業施設の整備までは示されていません。長居が目指すのは「スタジアムシティ」ではなく、既存の長居公園と連続する「公園一体型スタジアム」と見るのが正確です。
比較項目 長居陸上競技場 Fビレッジ・長崎
事業形態 既存スタジアムの大規模改修 新設を含む複合開発
日常利用 コンコースや外周部を公園と一体化 商業、宿泊、娯楽施設を常設
主な狙い 公園との連続性、国際大会対応、観客環境改善 年間集客と新たな街づくり
現在の段階 基本設計者の選定前 開業・運営中
ただし、空間を開放するだけでは日常的なにぎわいは生まれません。非イベント日の開放範囲や、飲食、物販、ツアー、市民向けイベントなどの運営方法も重要になります。

収容人数5万人の維持は条件ではない



現在のヤンマースタジアム長居は約5万人を収容できますが、大阪市は、改修後も現在の座席数を維持するとはしていません。座席幅の拡大、車いす席やVIP席の増設、通路や避難動線の改善により、収容人数が減る可能性があります。大阪市も、最低限確保すべき座席数は設定していないと回答しています。

基本設計者は2026年8月下旬に決定予定


時期 予定
2026年6月12日 基本設計者の公募開始
2026年7月10日 参加申請締め切り
2026年8月13日 企画提案書の提出期限
2026年8月下旬 プレゼンテーション審査
2026年8月下旬 選定結果公表、契約締結予定
2027年3月31日 基本設計業務の完了期限
基本設計業務の契約上限額は、税込み1億8,632万9,000円です。

これは改修工事費ではなく、建物調査、基本設計、法令調査、概算工事費の算定、施工工程の検討などに充てられる設計費です。

基本設計で何が明らかになるのか?


項目 基本設計で検討される内容
改修後の姿 外観、内装、座席、VIP諸室、コンコースの配置
収容人数 座席更新後の正式な収容規模
工事費 改修工事全体の概算事業費
工程 着工・完成時期、工事を分割する場合の施工手順
休場期間 全面休場か、部分利用を続けながら施工するか
法適合 増築や設備更新に伴う建築基準法への対応
既存設備 屋根、アスベスト、構造、設備の改修範囲
日常利用 非イベント日の開放範囲や公園との接続方法
イベントへの影響 陸上大会、サッカー、コンサートの開催調整
施工には、実施設計の段階から施工予定者が技術協力する「ECI方式」が採用される予定です。施工会社のノウハウを早期に取り入れ、工事費や工程の精度を高めます。

2027年3月、改修計画の全体像が見えてくる



第一の節目は、2026年8月下旬に予定される基本設計者の選定です。2027年3月末までに基本設計がまとまれば、改修後の姿、概算工事費、施工工程、休場期間が具体化します。長居陸上競技場が、国際大会への対応と日常的なにぎわいを両立する公園一体型スタジアムへ進化できるのか。基本設計者の提案内容が注目されます。




出典

  • 大阪市「長居陸上競技場大規模改修工事基本設計業務委託」
  • 大阪市「長居陸上競技場外1施設改修基本計画」
  • 大阪市「基本設計業務委託仕様書」
  • 大阪市「公募型プロポーザル募集要項・質問回答書」
  • 北海道ボールパークFビレッジ公式資料
  • 長崎スタジアムシティ公式サイト
  • ひろしまスタジアムパーク公式サイト
  • トッテナム・ホットスパー・スタジアム公式サイト

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