岡山電気軌道「ハレノワ線」が軌道特許を申請!約600mの新線で都心を環状化、2027年度着工へ



岡山市中心部で計画されている岡山電気軌道「ハレノワ線(仮称)」が、整備に向けて具体化しています。

岡山電気軌道は2026年7月23日、軌道法に基づく特許を国へ申請しました。9月17日には岡山市議会が、道路管理者として特許申請に同意する市の意見を了承。さらに岡山市は国道250号などの道路詳細設計をエイト日本技術開発に委託し、岡電側でも軌道や新設電停上屋の設計発注が進んでいます。計画段階から、着工を見据えた実施設計のフェーズへ移りつつあります。

ハレノワ線は、清輝橋線「大雲寺前」と東山線「西大寺町」を、岡山芸術創造劇場ハレノワ前経由で結ぶ約600mの新線です。完成すると既存2路線がつながり、岡山駅―大雲寺前―ハレノワ―西大寺町―岡山駅を循環する環状系統が形成されます。

項目 計画内容
路線名 ハレノワ線(仮称)
区間 大雲寺前―ハレノワ前―西大寺町
新設距離 約0.6km
軌道 単線・左回り
新設電停 ハレノワ前
運行頻度 ピーク時3本/時以上
想定利用 ハレノワ前 約700人/日
一部区間 サイドリザベーション方式
概算事業費 約27.4億円
工事着手 2027年度
完成・運行開始 2029年度末目標

なぜ600mの新線を整備するのか


出展:岡山市 岡山芸術創造劇場 ハレノワ

岡山市は、岡山駅周辺に集中する人流を表町・千日前方面へ広げ、中心市街地全体の回遊性を高めることを事業目的に掲げています。2023年9月には表町三丁目に岡山芸術創造劇場ハレノワが開館。大劇場1,753席、中劇場807席、小劇場最大300人を備える新たな集客拠点が誕生しました。

ハレノワ線は、この新しい集客拠点を既存の路面電車ネットワークへ組み込みます。
現在の課題・状況 ハレノワ線整備後
岡山駅周辺に人流が集中 表町・千日前方面へ人流を広げる
東山線と清輝橋線が分かれている 約600mを接続して環状化
ハレノワへの鉄軌道アクセスがない 「ハレノワ前」電停を新設
岡山駅―表町・千日前間の移動経路が限定的 都心を循環するルートを形成

岡山駅を起点とする約3.4kmの環状系統へ



現在の岡山電気軌道は、岡山駅から東山方面へ向かう東山線と、清輝橋方面へ向かう清輝橋線で構成されています。

ハレノワ線が完成すると、

岡山駅 → 大雲寺前 → ハレノワ前 → 西大寺町 → 岡山駅

という左回りの環状運転が可能になります。

新設区間の一部では、軌道を道路中央ではなく歩道側へ配置する「サイドリザベーション方式」を採用。ハレノワ前には新しい停留場を設けます。岡山駅、表町、千日前、ハレノワを一本の系統として結ぶことで、単純な点と点の移動から、中心市街地内を循環する交通体系へ変わります。

最新動向:道路詳細設計に着手、3交差点も改良へ

事業はすでに具体的な設計段階へ入っています。

岡山市は「路面電車延伸環状化に伴う国道250号ほか詳細設計等業務」をエイト日本技術開発中国支社に委託しました。設計対象は約0.78kmで、2027年7月30日までに取りまとめる予定です。
道路詳細設計 内容
対象延長 約0.78km
国道53号 約60m
国道250号 約520m
県道岡山吉井線 約200m
平面交差点設計 3カ所
対象交差点 大雲寺、新京橋西、西大寺
設計完了予定 2027年7月30日
軌道区間は約600mですが、道路側は軌道敷設に伴う車線再編や交差点改良が必要になるため、約780mが設計対象となっています。岡電側でも軌道部分や「ハレノワ前」電停上屋の設計を発注しており、契約手続きが進む見通しです。2026年度当初予算には、地質調査、道路詳細設計、軌道基本・詳細設計などとして9,090万円が計上されています。

事業費27.4億円、「みなし上下分離」で整備

概算事業費は約27.4億円。軌道関係約20.2億円、道路関係約7.2億円で、整備費は国と岡山市が半分ずつ負担します。

特徴的なのが「みなし上下分離」と呼ばれる支援方式です。

施設の整備・所有・管理・運行は岡電が担う一方、インフラ部分を市が所有したものとみなし、市が整備費や維持管理費などを支援します。
項目 事業スキーム
概算事業費 約27.4億円
国負担 約13.7億円
岡山市負担 約13.7億円
岡電の役割 整備・所有・管理・運行
維持管理費 市が負担
維持管理費想定 約800万円/年
固定資産税相当額 約500万円/年を市が負担
営業赤字の場合 赤字額の50%を市が支援
営業黒字の場合 黒字額の50%を市へ納付
背景には岡電の経営環境があります。岡山市によると、路面電車の利用者はコロナ禍前の約85%までの回復にとどまっています。また、従来の民設民営を前提とした協議では費用負担で合意に至らず、国の補助制度拡充を受けて今回の方式に組み替えられました。

2027年度着工、軌道工事は2028年度上期へ

2021年9月の都市計画決定から約5年を経て、2026年に事業化が本格的に動き始めました。
時期 主な動き
2020年2月 岡山市路面電車ネットワーク計画に位置付け
2021年9月 都市計画決定
2023年9月 岡山芸術創造劇場ハレノワ開館
2026年1月 岡山市と岡電が事業実施で合意
2026年6月24日 都市・消防政策審議会が事業の妥当性を確認
2026年7月23日 岡電が軌道特許を申請
2026年8月 道路詳細設計を発注
2026年9月17日 岡山市議会が特許申請に関する意見に同意
2027年7月 道路詳細設計完了予定
2027年度下期 道路工事・工事施行認可手続きへ
2028年度上期 軌道工事着手想定
2029年度末 完成・運行開始目標
岡山市は公式には2027年度の工事着手を示しています。一方、最新の施工スケジュールでは、まず道路側の工事を進め、軌道工事は工事施行認可を経て2028年度上期から着手する想定です。

つまり2027年度から現地工事が始まり、道路改良と軌道整備を段階的に進め、2029年度末の運行開始につなげる工程となります。

2027年3月には岡山駅前広場へ乗り入れ



ハレノワ線を単独の新線として見るだけでは、岡山市が進める路面電車再編の全体像は見えにくくなります。その前段として進んでいるのが、路面電車のJR岡山駅東口広場への直接乗り入れです。岡山市は2027年3月の運行開始を予定しています。

2027年3月:岡山駅東口広場へ直接乗り入れ
→ 2027年度:ハレノワ線関連工事に着手
→ 2029年度末:ハレノワ線運行開始目標


岡山駅側ではJRとの乗り換え利便性を改善し、中心市街地側では清輝橋線と東山線を接続して環状化する。二つの事業が完成すると、岡山電気軌道の路線網は現在とは大きく異なる形になります。

ハレノワ線は延長約600mというコンパクトな新線ですが、その役割はハレノワへのアクセス確保にとどまりません。既存2路線の間に残る区間を接続し、岡山駅、表町、千日前、ハレノワを循環できる交通ネットワークへ組み替えるプロジェクトです。

軌道特許の申請に続き、道路・軌道の設計も具体化しました。今後は特許取得、工事施行認可、道路工事へと進み、2029年度末の運行開始に向けて現地での動きが本格化していくことになります。




出典

・岡山市「路面電車の延伸環状化(ハレノワ線[仮称])について」
・岡山市「令和8年1月26日 市長記者会見」
・岡山市「令和8年9月提案理由」
・岡山市「令和8年度当初予算(案)主要施策・事業補足資料」
・岡山市「路面電車の延伸環状化(大雲寺前~ハレノワ~西大寺町間)について」
・岡山市「岡山芸術創造劇場ハレノワについて」
・建通新聞「岡山市 路面電車延伸環状化道路設計エイト、岡電軌道設計契約へ」2026年10月1日
・NJSS「路面電車延伸環状化に伴う国道250号ほか詳細設計等業務委託」

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