近鉄は2025年に開催される大阪万博の会場となる「夢洲」と奈良方面を結ぶ直通特急の運行を検討しています。近鉄奈良線の生駒駅付近で、大阪メトロ中央線に乗り入れている「けいはんな線」に接続する渡り線を設置し、両線を直通させる特急を導入する計画です。以前の報道では、奈良線の「パンタグラフ方式」と、メトロ中央線の「第三軌方式」の2つの終電方式に対応した「ハイブリッド車両」を導入すると伝えられましたが、別の選択肢として走行中は外部から電気を取る必要がない「蓄電池車両」の導入を検討していることが明らかになりました。
近鉄、蓄電池車両の導入も検討 万博会場行き直通列車で https://t.co/NnIld9UJuo
— 朝日新聞・鉄道取材班 (@asahi_rail) June 13, 2019
近鉄奈良線と大阪メトロ中央線の直通には様々な課題が
1:集電方式と電圧の違い
大阪メトロ各線は、路面電車を発展させた経緯から、阪急と相互直通運転を行っている堺筋線を除くと第三軌条方式を採用している路線が多いです。大阪メトロ中央線もサードレールから集電する第三軌条方式(直流 750 V)を採用しています。対して近鉄はパンタグラフから集電する一般的な架線方式(直流1500V)を採用しています。その為、集電方式が異なる両線を直通する車両は、パンタグラフと第三軌条の2つの集電装置と電圧に対応した機器を装備する必要があります。もしくは終電装置は第三軌条のコレクターシューのみにして、蓄電池を搭載し奈良線内はバッテリーで走行する車両になるかもしれません。いずれにせよ、技術的な難易度が高い新型車両の開発が必須となります。2:車両限界とドア数の違い
大メトロ中央線の車両は、全長18,700 mm、全幅2,880 mm。近鉄は、全長20,500 mm、全幅2,800 mm(何れも中間車の代表例)と異なっています。また、ドア数も異なる為、今後設置が進むホームドアについても対策が必要となります。3:中央線内に待避設備が無い
中央線は各駅停車しかなく待避可能駅がほとんど無い(けいはんな線の新石切と森ノ宮が2面3線)ので、先行列車の追い越しができません。その為、中間駅を通過する特急を設定するとしても、相当スジを寝かせた平行ダイヤとなりそうです。4:過密ダイヤと複雑な運転経路
近鉄奈良線は相当な過密ダイヤである事、一大ジャンクション駅である西大寺駅の列車捌きが更に大変になります。新型名阪特急投入に続く近鉄特急網再編のきっかけに
近鉄は2020年春を目処に名阪特急に新型車両を投入する予定です。新型車両の投入により、現在のアーバンライナーが名阪乙特急(主要駅停車タイプ)に充当され、老朽化が進んだ古参の特急車が廃車されると思われます。また、大阪メトロ中央線に直通するハイブリッド車両や、異なる軌間を行き来できる「フリーゲージトレイン」など、近鉄特急は様々な話題が提供されています。これらがすべて実現するとは思いませんが、近鉄がは大阪万博やIRをきっかけに、特急網を大幅に更新するのではないでしょうか。
夢洲へむけた直通列車、新たな観光特急_近鉄の計画が明らかに(鉄道チャンネル)
https://tetsudo-ch.com/11455929.html
近畿日本鉄道などの近鉄グループホールディングスは、2022年以降に新たな観光特急の運行を計画。また、夢洲と近鉄沿線観光地を直通で結ぶ列車の運行を継続検討していく。