サッカーJ2・モンテディオ山形の新スタジアム建設計画がいよいよ本格始動します。天童市山王の県総合運動公園南側で進められる事業は、2025年10月から造成工事に入り、12月には本体工事に着工します。竣工は2028年4月、同年8月の開業を目指しており、総事業費は約158億円に達します。新スタジアムは単なるサッカー専用スタジアムではなく、地域の経済・文化・交流を担う複合的な「地域インフラ」として整備されます。
工事と交通対応
建設予定地は現本拠地・NDソフトスタジアム山形の南側特設駐車場です。造成工事に伴い、約5000台の駐車場のうち2200台が使用できなくなります。天童市は市役所やスポーツセンターなど公共施設に2600台分の代替駐車場を確保し、試合やイベント開催時には無料シャトルバスを運行します。工事期間中の交通渋滞や騒音が市民から懸念されていますが、市は駐車場分散や交通整理を通じて安全性の確保を図る方針です。
新スタジアムの概要
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構造:S・RC造3階建て、延床面積約25,000㎡
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収容人数:約15,000人
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屋根:観客席の一部に設置し、寒冷地対応や雷対策も考慮
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周辺整備:広場を整備し、試合日以外も市民が憩える空間に
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イベント活用:コンサートや展示会など多目的利用を想定
天童市は、新スタジアムによる経済波及効果を年間約24億円と試算しています。これは現行スタジアムの約3倍にあたり、地域全体の飲食・宿泊・交通への波及効果が期待されます。
財政支援と事業体制
総事業費は約158億円で、県と天童市はそれぞれ15億円を国の補助金を活用して拠出します。インフラ整備として市道改良(約8.6億円)、下水道整備(約5.4億円)、敷地造成(約2.7億円)など約31.7億円が計画されており、このうち13.3億円は国費で補助される予定です。
設計・施工は清水建設グループ(清水建設、市村工務店ほか)が担い、運営主体は2024年に設立された「株式会社モンテディオフットボールパーク」です。株主にはモンテディオ山形に加え、NECキャピタルソリューションやJTBなど民間大手が参画しており、資金・ノウハウの両面での連携が見込まれます。
新しい資金調達「CLUB2160」
注目される取り組みが市民参加型の資金調達「CLUB2160」です。ピッチを2160区画に分け、1区画(約1坪)を10万円で保有できる仕組みで、建設中の現場見学ツアーや限定イベント参加の特典が付与されます。9月14日正午から募集開始予定で、Jリーグクラブとしては初の試みです。最大で2.16億円規模の資金調達が可能であり、数字以上に「自分の区画を持つ」という体験を通じ、市民や企業の当事者意識を高める狙いがあります。
なぜ新スタジアムが必要なのか
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Jリーグライセンス基準への対応
Jリーグはスタジアム基準を厳格化しており、屋根のカバー率や高輝度照明、ホスピタリティ設備、アクセシビリティ改善などが求められています。老朽化したNDソフトスタジアムでは対応が難しく、新施設が不可欠となっています。 -
収益モデルの強化
専用スタジアムは臨場感を高めるだけでなく、飲食・グッズ・VIPラウンジなどの収益源を拡充し、クラブ経営の安定化に寄与します。スタジアムを資産として「稼ぐ力」を育てる狙いがあります。 -
365日稼働の拠点化
年間20試合前後の使用に限られていた既存スタジアムに対し、新スタジアムは広場や商業施設を備え、日常的に利用できる「まちの拠点」となります。スポーツ以外のイベントや観光を取り込むことで、地域交流と消費を促進します。 -
地域経済への波及効果
天童市の試算では年間24億円の経済効果。宿泊・飲食・交通など幅広い分野で消費拡大が期待され、雇用創出にもつながります。 -
寒冷地対応と安全性
積雪や雷対策、避難動線の整備など、最新基準を満たす安全性の高い設計が採用されます。冬季や豪雨時でも安心して利用できるスタジアムとなります。
市民の声と今後の展望
市民説明会では「工事による交通渋滞や騒音への対策を」といった懸念も寄せられましたが、同時に「地域が元気になる契機になる」との期待も広がっています。運営会社は「スタジアムを山形のシンボルにし、県全域に波及する交流・文化拠点としたい」としており、ホテルや商業施設の併設も構想されています。
新スタジアムは単なる競技場ではなく、スポーツ・観光・まちづくりを結合する「地域の未来インフラ」として整備されることになります。
出典元
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山形放送「モンテディオ山形の新スタジアム 10月から造成工事」2025年9月9日配信
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建設通信新聞「J2モンテディオ山形 新スタジアム整備説明会」2025年9月10日掲載
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モンテディオフットボールパーク公式サイト「新スタジアムプロジェクト」2025年9月更新