北陸鉄道は2026年3月30日、石川線に2027年度から導入予定の新造車両6編成について、デザイン投票を実施すると発表しました。新造車両の外観デザインを利用者や地域住民の投票で決めるもので、投票期間は2026年4月1日から5月31日まで。結果は2026年7月上旬に公表される予定です。
今回の新造車両は、単なる老朽車両の更新にとどまりません。沿線の自然や文化、歴史を車両デザインに落とし込み、石川線そのもののイメージ刷新にもつなげようとする取り組みとして注目されます。
コンセプトは「結美(Musu-Bi)」 地域に根付く美を車両で表現

新造車両のデザインコンセプトは「結美(Musu-Bi)」です。これは、地域に根付く美を結ぶという意味を持ち、沿線の「ひと」「まち」「自然」「文化」をつなぐ存在として新車両を位置付けたものです。
車両の正面形状は、白山比咩神社や白山手取川ジオパークの扇状地を連想させるシルエットを採用。側面デザインには、加賀百万石を象徴する米俵を想起させる意匠を取り入れています。地域性をわかりやすく可視化し、日常の移動手段である鉄道に土地の記憶や個性を重ねようとする設計思想が読み取れます。
デザイン案は3案 加賀の風土や勢いをそれぞれ表現
今回示されたデザイン案は3案です。いずれもステンレス車体をベースに、ラッピングでカラーリングを施す方式が採用されます。
1案目は「加賀百万石の地」

1案目は、米俵の俵縄を思わせる縦方向のスリットラインを取り入れたデザインです。加賀百万石の豊かさや歴史性を視覚的に表現した案で、編成ごとに異なるカラーリングを採用します。色は「加賀五彩」と北陸鉄道のオレンジをイメージした計6色で構成され、さらに金箔生産全国1位の地域性を踏まえて金色も組み合わせた配色とされています。
2案目は「空に始まり、海へ続く」

2案目は、白山連峰から日本海へとつながる石川の地勢をイメージしたデザインです。横方向のスリットラインを用い、沿線の広がりや流れを感じさせる構成となっています。こちらも1案目と同様に、編成ごとに異なる6色展開が採用されます。
3案目は「街を熱する飛ぶ力」

3案目は、獅子吼高原に集う獅子頭の力強さや勢いをモチーフにしたデザインです。野を駆け、空を飛ぶようなダイナミックさを打ち出しているのが特徴で、3案の中では最もインパクト重視の方向性といえそうです。なお、この案のみ6編成すべてが共通デザインとなります。
利用者参加型で最終デザインを決定 紙投票にも対応
投票は2026年4月1日から5月31日まで実施されます。方法はGoogleフォームによるオンライン投票と、北陸鉄道の有人駅での紙投票の2種類です。紙投票の実施駅は、北鉄金沢駅、内灘駅、野町駅、新西金沢駅、鶴来駅。オンライン投票にはGoogleアカウントが必要です。
鉄道車両のデザイン決定を利用者参加型で進める手法は、単に見た目を選ぶ企画ではありません。日常的に路線を使う人や、地域に愛着を持つ人を巻き込みながら、新しい石川線の顔を共につくるプロセスそのものに意味があります。
車両更新と地域ブランディングを一体で進める動き
今回の発表で印象的なのは、北陸鉄道が新造車両の導入を、設備更新だけでなく地域ブランディングの機会として位置付けている点です。石川線は地域の日常を支える生活路線である一方、沿線には白山信仰や自然景観、歴史文化など、対外的に打ち出せる要素も多くあります。
新車両のデザインにこうした地域資源を織り込むことで、沿線の魅力を再発見するきっかけをつくる狙いがあるとみられます。加賀五彩や金箔、白山、日本海、獅子頭といったモチーフの選定からも、石川らしさを視覚的に伝えることへの強い意識がうかがえます。
2027年度の導入へ向けて、石川線の新しい顔づくりが始まる
2027年度に6編成が導入される予定の石川線新造車両は、移動のための新しい器であると同時に、地域の物語をまとった新しいシンボルにもなりそうです。3案はいずれも方向性が異なっており、重厚感のある地域表現を重視するのか、風景の広がりを映すのか、あるいは力強さと躍動感を前面に出すのかで印象は大きく変わります。
今回の投票は、北陸鉄道の新車両をどのような存在として地域に迎えるのかを考える機会でもあります。結果発表は2026年7月上旬の予定で、石川線の新しい顔がどの案に決まるのか注目が集まります。


