京都市営地下鉄・烏丸線、未設置11駅のホーム柵が本体工事へ 日本信号が27.17億円で落札、2030年度に全駅化



京都市営地下鉄・烏丸線で、長年の懸案だったホーム柵整備が本体工事の段階へ進みます。

京都市交通局が発注した国際会館駅など11駅の可動式ホーム柵設置工事を、日本信号が2026年8月19日に**24億7,000万円(税別)、27億1,700万円(税込)**で落札しました。

2027年度からホーム柵の製作を進め、2028年度から各駅への設置・順次供用を開始。2030年度上半期には烏丸線全15駅でホーム柵が稼働する予定です。

東京や大阪ではすでに全駅整備が完了しており、ホームドアは都市地下鉄の「先進設備」から「標準設備」へ変わりました。京都もようやく、その水準へ追いつくことになります。

烏丸線11駅、ホーム柵整備の概要


項目 内容
工事名 高速鉄道烏丸線国際会館駅他10駅可動式ホーム柵設置工事
対象 未設置11駅
対象駅 国際会館、松ヶ崎、北山、鞍馬口、今出川、丸太町、五条、九条、十条、くいな橋、竹田
落札者 日本信号
落札額 24.70億円(税別)/27.17億円(税込)
予定価格 26億868万5,000円(税別)
工事内容 可動式ホーム柵、関連する配線・配管
本体工事工期 契約翌日~2030年3月29日
概算事業費 約45億円
製作開始 2027年度~
設置・供用 2028年度~順次
全駅供用 2030年度上半期
入札には日本信号と京三製作所が参加。日本信号の24億7,000万円に対し、京三製作所は29億2,000万円で予定価格を上回りました。

なお、27.17億円は今回発注されたホーム柵本体・関連配線などの契約額であり、事業全体の総額ではありません。

京都市が示す11駅分の概算事業費は約45億円で、別途、ホーム構造照査、停止位置変更、点字タイル改修、工事監理などの関連業務・工事も進められています。

8月26日には、これらを含む工事監理業務も予定価格4億1,980万円(税別)で公告されました。計画・設計中心だったプロジェクトが、本体工事の契約と製作準備へ移ったことが分かります。

なぜ京都のホーム柵整備は遅れたのか



地下鉄烏丸線のイメージ

烏丸線15駅のうち、現在ホーム柵が設置されているのは北大路、烏丸御池、四条、京都の4駅です。

一方、東西線は開業時から全駅に設置されています。

烏丸線について京都市は当初、ATO(自動列車運転装置)を整備し、列車のドアとホーム柵を連動させる方式で全駅化する計画でした。

ところが新型コロナ禍で地下鉄利用者が急減し、交通局の経営が悪化。安全設備への大型投資も延期されました。

その後、計画を再検討した結果、ATOの整備完了を待つ場合は、ホーム柵全駅化が2036年度末までずれ込む見通しとなりました。

そこで京都市は方針を転換します。
段階 全駅化の想定
コロナ前の当初計画 2028年度中
コロナ禍 財政悪化で整備延期
ATO完成を待つ場合 2036年度末
現在の手動方式 2030年度上半期
ATO完成を待たず、既設4駅と同様に乗務員がホーム柵を手動操作する方式を採用することで、2036年度末から約6年半前倒しします。

言い換えれば、

「完全自動化を待つより、ホームからの転落・接触事故を防ぐ安全設備を先に整備する」

という現実的な判断です。

手動化で所要時間は約2分延びる

一方、手動操作にはデメリットもあります。

乗務員によるホーム柵操作のため、各駅の停車時間は現在より約10秒長くなる想定です。その結果、国際会館―竹田間では所要時間が約2分延びます。

ただし京都市は、竹田駅での折り返し時間短縮や、近鉄直通列車を含むダイヤ調整によって、現在の運行本数を維持する方針です。

安全性を優先する代わりに、数分程度の所要時間増を受け入れる形になります。

地下鉄では「全駅ホームドア」が全国標準に


京都が整備を急ぐ背景には、全国の都市鉄道を取り巻く環境の変化があります。

2026年3月には東京メトロとOsaka Metroが相次いで全駅ホームドア化を達成しました。

主要地下鉄事業者を見ると、全駅化できていない事業者はすでに少数派です。
事業者 ホームドア整備状況
札幌市営地下鉄 ✅ 全駅
仙台市地下鉄 ✅ 全駅
東京メトロ 全180駅
都営地下鉄 ✅ 全駅
横浜市営地下鉄 ✅ 全駅
Osaka Metro 全134駅
福岡市地下鉄 ✅ 全駅
名古屋市営地下鉄 上小田井駅のみ未設置
神戸市営地下鉄 △ 海岸線を整備中、2027年度末完了予定
京都市営地下鉄 △ 烏丸線11駅、2030年度上半期完了予定
※東京メトロは全180駅で整備完了としていますが、大規模改良中の南砂町駅では一部番線が今後の整備対象です。

主要10地下鉄事業者で見ると、7事業者がすでに全駅化済み。未完了は名古屋、神戸、京都の3事業者だけです。

しかも名古屋は名鉄管理の上小田井駅を残すのみ。神戸も2027年度末に完了予定です。

京都が完成する2030年度頃には、地下鉄でホームドアがない駅は極めて珍しい存在になっている可能性があります。

モノレールでも全駅設置が広がる

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モノレールでも同様です。
事業者 状況
東京モノレール ✅ 全駅
多摩都市モノレール ✅ 全駅
大阪モノレール ✅ 全18駅
沖縄都市モノレール「ゆいレール」 全19駅
千葉都市モノレール △ 全駅化未達
湘南モノレール △ 全駅化未達
北九州モノレール △ 全駅化未達
沖縄都市モノレール「ゆいレール」も全19駅にホームドアを備えており、都市型モノレールではホームと軌道を物理的に分離する方式が広く定着しています。

こうして比較すると、京都市営地下鉄は主要都市鉄道の中でも、ホームドア整備が遅れている側に残っていました。

「先進投資」ではなく、ようやく全国標準へ



出典:Wikipedia

京都市営地下鉄は利用者回復などを背景に、2025年度の地下鉄事業で32億円の黒字を確保しました。

とはいえ、企業債残高はなお3,000億円近くあります。財政的に余裕があるから45億円規模の投資を始めるわけではありません。

むしろ、

財政危機で先送りしていた安全投資を、これ以上遅らせることが難しくなった

と見る方が実態に近いでしょう。

ホームドアは転落や列車との接触を物理的に防止できる設備です。東京、大阪、札幌、仙台、横浜、福岡などで全駅整備が完了した現在、エレベーターなどと同様に都市鉄道の基礎インフラになりつつあります。

今回の整備は、京都市営地下鉄が特別に先進的な設備を導入する話ではありません。コロナ禍で止まっていた安全投資を再開し、全国標準へ追いつくプロジェクトです。そして今回の最大の変化は、「いつか設置する」という計画ではなくなったことです。

2026年8月、日本信号が11駅分の本体工事を落札。その直後には工事監理業務も発注されました。

京都市営地下鉄でも、ようやく「全駅ホームドア」が具体的な工事工程に乗りました。

今後の工程


年度 主な動き
2025~2026年度 設計・ホーム照査・本体工事発注
2026年8月 日本信号が11駅分を落札
2027年度~ ホーム柵製作
2028年度~ 各駅への設置、完成駅から順次供用
2030年3月 本体工事工期末
2030年度上半期 烏丸線全15駅で供用開始予定




出典

  • 京都市交通局「高速鉄道烏丸線国際会館駅他10駅可動式ホーム柵設置工事」入札結果
  • 京都市交通局「高速鉄道烏丸線国際会館駅他10駅可動式ホーム柵設置工事」入札公告
  • 京都市「烏丸線全駅への可動式ホーム柵設置に関する発表資料」
  • 京都市長記者会見(2025年1月14日)
  • 京都市交通局「可動式ホーム柵設置工事監理業務委託」
  • 京都市交通局「令和7年度市バス・地下鉄事業決算概要」
  • 東京地下鉄「全180駅ホームドア整備完了」
  • Osaka Metro「全134駅可動式ホーム柵設置完了」
  • 名古屋市交通局「可動式ホーム柵」
  • 神戸市交通局「海岸線ホームドア設置工事」
  • 大阪モノレール「バリアフリー情報」
  • 沖縄都市モノレール「安全報告書」

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