王子公園15.8haを「一体運営」へ 神戸市が民間参入調査、飲食・案内施設も新設



神戸市が大規模再整備を進める王子公園で、完成後を見据えた「運営」の検討が本格化しました。

神戸市は2026年9月1日、約15.8haの王子公園を対象に、民間事業者とのサウンディング型市場調査を実施すると発表しました。施設ごとに分かれてきた管理運営を見直し、指定管理者制度等を活用した公園全体の一体的なパークマネジメントが可能かを探ります。

阪急王子公園駅側には、飲食と公園案内機能を備えた「にぎわい施設」を民設民営で導入する構想も示されました。

今回のポイントは単なるカフェ新設ではありません。動物園、スポーツ、広場、文化施設、駐車場などを横断して運営する事業モデルの検討が本格化したことにあります。

王子公園15.8ha、一体運営の可能性を調査


項目 内容
公園面積 158,373.70㎡、約15.8ha
管理運営 指定管理者制度等による一体的マネジメントを検討
対象例 立体駐車場、スポーツ施設、神戸文学館、物販施設など
にぎわい施設 飲食+公園案内、民設民営を想定
主な調査項目 参入可能性、対象範囲、事業期間、方式、採算性、新規事業など
民間ヒアリング 2026年10月21~28日
結果公表 2026年12月頃予定
神戸市は、一体運営によるスケールメリット、施設間の相乗効果、利用者サービスの向上、管理運営の効率化を狙います。

ただし、15.8haすべてを民間へ委ねるわけではありません。大学ゾーンや児童館は指定管理の対象外で、王子動物園についても動物飼育、種の保存、環境教育、調査研究などの根幹機能は引き続き神戸市が担います。

プロジェクトの現在地―「計画」から「実行」へ



王子公園再整備は、すでに構想段階を抜けています。

2024年3月に基本計画を策定した後、スポーツゾーン、広場・園路、立体駐車場などについて設計・施工一括発注を実施。事業者を決定し、契約額は約156億円、事業期間は2030年度末までとなっています。
分野 2026年9月時点の状況
基本計画 策定済み
公園・スポーツ施設 設計・施工フェーズ
王子弓道場 2026年2月着工、2027年春供用予定
動物園 サバンナゾーン・爬虫類館を整備中、2027年夏開業予定
大学用地 関西学院へ引き渡し済み
神戸キャンパス 2031年4月開設予定
管理運営 今回のサウンディングで具体化へ
公園再整備 基本計画上は2030年度に計画概成予定
大学ゾーン約3.5haは2025年9月30日に関西学院へ引き渡され、旧王子スタジアム等の解体も進みました。関西学院は2026年6月、新拠点の名称を「神戸キャンパス」とし、2031年4月に開設すると発表しています。

つまり現在は、公園・スポーツ・動物園の整備を進めながら、完成後の運営方式を詰める段階に入っています。

「施設管理」から「エリア経営」へ



王子公園再整備基本方針の策定時点では、市直営、指定管理、設置・管理許可、管理委託など、複数の運営方式が施設ごとに併存していました。

再整備後は、新スタジアム、スポーツ施設、緑の広場、神戸文学館、駐車場、動物園など、多様な機能が一体的な空間に再構成されます。
従来 今後の方向性
施設ごとに管理 公園全体を横断的にマネジメント
維持管理が中心 利用促進・イベント・収益事業まで視野
個別施設を最適化 エリア全体を最適化
管理主体が分散 施設間の連携を強化
一体運営が実現すれば、動物園の来園者を広場や飲食へ誘導したり、スポーツイベントと物販を連動させたりと、施設横断型の企画が可能になります。

管理コストの削減だけでなく、回遊と滞在時間を増やし、公園全体の利用価値を高めることが狙いです。

大学と飲食が「日常利用」を補完

再整備後の王子公園では、施設ごとに利用者や時間帯が異なります。
機能 主な需要
動物園 ファミリー、休日・昼間
スポーツ 競技者・観客、夕方・休日
大学 学生、平日・昼間
緑の広場 地域住民、日常利用
飲食 学生・来園者・地域住民
イベント 休日・夜間にも展開可能
特に大学は、休日需要の強い動物園やスポーツ施設とは異なり、平日に継続的な人流を生みます。複数用途が時間帯を補完することで、公園全体の日常利用を底上げできます。その接点となるのが、阪急王子公園駅側の「緑の広場」と「にぎわい施設」です。

現在の平面駐車場を立体化し、その跡地などに芝生、イベントスペース、親水空間を整備。飲食・案内機能を加え、

王子公園駅 → 緑の広場 → 飲食 → 動物園・スポーツ施設

という動線を形成します。

飲食施設は収益源であると同時に、公園に滞在する理由をつくる機能を持ちます。駅前一帯は、再整備後の王子公園へ人を送り込む新たな玄関口になります。

神戸市の公園PPP、その次の段階へ



神戸市では、東遊園地や須磨海浜公園などで民間活力を取り入れた公園再整備を進めてきました。

東遊園地ではPark-PFIを活用して飲食、イベント、野外図書館などを組み合わせた「URBAN PICNIC」を導入。須磨海浜公園では、公園、水族館、ホテル、飲食、駐車場などを組み合わせた大規模な官民連携事業を展開しています。

王子公園でも2025年度、国土交通省の官民連携調査の支援対象となり、維持管理・運営・にぎわい創出についてPPP/PFI導入可能性を検討する調査が計画されました。

流れを整理すると、

再整備基本計画


→ 官民連携の検討
→ 民間サウンディング
→ 運営方式の具体化
→ 事業者公募


となります。

現時点で神戸市が示しているのは、指定管理者制度等による一体的な管理運営と、民設民営によるにぎわい施設です。最終的な事業方式は未定です。

一方、都市公園には無料の休憩空間、子どもの遊び場、地域活動、防災、緑地など、直接収益を生まない機能もあります。重要なのは単純な収益最大化ではなく、民間収益を公園全体のサービスや空間価値へどう還元するかです。

計画概成まで約260億円、将来整備まで含め約330億円



王子公園再整備基本計画では、計画概成期間の概算事業費を約260億円としています。
項目 概算事業費
動物園・第1フェーズ 約70億円
スポーツ施設 約90億円
公園施設 約100億円
計画概成期間 約260億円
動物園全体 約140億円
将来整備まで含む全体規模 約330億円
※基本計画策定時点の概算で、物価水準や今後の設計・協議などにより変動する可能性があります。

基本計画では2024~2030年度を計画概成期間としています。一方、関西学院大学の神戸キャンパスは2031年4月開設予定です。現時点では、2030年度に公園・スポーツ施設などが概成し、2031年に大学が加わる時間軸で見るのが分かりやすいでしょう。ハード整備の姿はかなり見えてきました。次の焦点は、誰が、どこまで、どの条件で一体運営を担うのかです。

2026年12月頃に予定されるサウンディング結果は、完成後の王子公園が単に「新しくなった公共施設」で終わるのか、動物園・大学・スポーツ・広場・飲食が有機的につながる都市拠点へ育つのかを占う重要な材料になりそうです。




出典

・神戸市「王子公園再整備における管理運営等に関するサウンディング型市場調査」
・神戸市「王子公園再整備基本計画」
・神戸市「王子公園再整備基本方針」
・神戸市「王子公園再整備事業」
・神戸市「王子公園再整備に関する工事のお知らせ」
・神戸市「王子公園再整備にかかる大学設置・運営事業」
・関西学院大学「新キャンパス名称は『神戸キャンパス』神戸市灘区王子町に2031年4月開設予定」
・国土交通省「王子公園における賑わい創出のための基盤整備検討調査」

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