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ユニクロ柳井氏がノーベル賞の京大・本庶氏、山中氏に100億円寄付!巨額の寄付は強い危機感の表れか


出典:京都大学

iPS細胞は、細胞を培養して人工的に作られた多能性の幹細胞のことです。2006年8月に京都大学の山中伸弥教授らは世界で初めてiPS細胞の作製に成功し、2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。

iPS細胞は皮膚などに分化した細胞にある遺伝子を組み込むことで、あらゆる生体組織に成長できる万能な細胞を作ることが出来ます。これから研究が進むと、将来、神経細胞や肝臓など、さまざまな組織や臓器の再生ができる可能性があり、今後の再生医療や創薬研究に役立つことが期待されています。

【出展元】
→京都大学>柳井正氏からの寄附による京大基金:柳井基金「PD-1阻害がん免疫療法に対する研究助成」の設置について
再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト

 

 

ユニクロ柳井氏が100億円を寄付!


出展:https://www.cira-foundation.or.jp/j/

「ユニクロ」などのブランドで知られるファーストリテイリングの会長兼社長の柳井正氏が、個人として京都大学に巨額のを寄付を行う事が明らかになりました。京都大学は2020年06月24日に柳井会長個人から2人のノーベル賞受賞者、本庶氏と山中氏が取り組む研究に対し、総額100億円の寄付を受ける旨を発表しました。

本庶氏に対しては「柳井基金」を設置し、2020年4月22日から2030年4月21日の10年間、毎年5億円を寄付。2020年4月に設立された京都大学医学研究科付属がん免疫総合研究センター(CCII)におけるがん免疫療法に関する研究に充当されます。

山中氏に対しては、新型コロナウイルスの調査やワクチン開発などの研究に5億円、京都大学iPS細胞研究財団に対して、2021年度から9年間にわたって毎年5億円、計45億円を寄付する予定です。

柳井会長は、「ビジネスも研究も最終的目標は、世の中のため、人のため、そして常識を越えるため。本当は国からもっと、本質的な課題や問題の研究に対して自由に使えるお金が出ないといけない」と指摘しました。京大への100億円の寄付はその金額以上に、柳井会長の強いメッセージが込められています。

 

 

iPS細胞の予算打ち切り報道に唖然

 

昨年末に驚いたのが、医療政策を担う内閣官房の幹部らが京大を訪れ、来年度から研究開発費を打ち切る可能性を山中教授に伝えた、というニュースです。

2019年8月9日、首相補佐官と厚生労働省の官房審議官が京都大iPS細胞研究所(CiRA)を訪れた際、山中伸弥教授に対し、『(予算停止は)私の一存でどうにでもなる』とiPS細胞ストック事業の予算カットを迫りました。世界中から注目を集め、日本の将来を左右するほどの重要な研究に対する予算を一介の官僚が公の議論も経ず、独断的に補助金打ち切りをほのめかす事など本来有り得ない話ですが、これが日本の現実です。

山中教授は記者会見を開き「いきなり支援をゼロにするのは相当に理不尽」と窮状を訴え、世論の批判が高まったので予算の打ち切りは見送られました。それでも当初の予定通り2022年度で補助金は終了します。

 

 

iPS細胞の拒絶反応を減らす「ストック事業」


出展:http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/

iPS細胞の研究は再生医療と薬の開発の二つに分かれますが、日本は再生医療の分野で世界トップの位置にあります。パーキンソン病、目の病気、脊髄、心臓、血液、がん、軟骨、筋肉と非常に多くの病気が対象になり、つぎつぎに臨床研究に入り、一部は治験の段階に入りました。

山中教授らは再生医療での拒絶反応が減るように多くの日本人に適したタイプの細胞をとりそろえ、高品質なiPS細胞をあらかじめ備蓄する「ストック事業」を進めてきました。

患者に最適な細胞を使い分け、高品質なiPS細胞を備蓄する「ストック事業」は「再生医療を実用化する基盤」と位置づけています。なぜなら、一種類のiPS細胞をあまねく病気、患者を対象に使用すると、患者が拒絶反応をおこし免疫抑制剤など多くの負担を強いる事になるからです。

 

早期に収益化したい国と財界



しかし、政府・財界から見ると、タイプ別の細胞を取りそろえる「ストック事業」は、国際競争下にあるiPS細胞の研究開発において、コストを優先して巨額の利益を得ようとする企業ニーズと相反します。

近年、iPS細胞から移植用の細胞をつくる企業は、移植用の細胞ががん化する可能性や別の細胞の混入を確かめて安全性を型ごとに確認することに手間と費用がかかることから、1種類のiPS細胞だけを使って免疫抑制剤で拒絶反応を抑える方向で事業を進める事が主流となりつつあります。

拒絶反応を押さえ、iPS細胞が持つポテンシャルをフルに発揮して日本主導で実用化に漕ぎ着けたい山中教授と、アメリカなどのメガファーマ(巨大製薬会社)の意向に沿って、安くて拒絶反応が高いiPS細胞で早期に収益化したい、主に官僚サイドと方向性にアンマッチが生じています。また、iPS細胞の治療で免疫抑制剤など多くの治療薬が使われれば製薬会社はさらに利益を上げる事が出来ます。

補助金打ち切り騒動は、もちろん一官僚の驕りは問題ですが、それよりもiPS細胞の可能性を引き下げてでも早期に収益化したいメガファーマと長期戦略が描けずそれに迎合してしまう、政府財界の短絡的な思考が問題で根本的な要因である事が透けて見えます。

 

※さらに根本的な原因は、中央官僚の劣悪な労働環境「ブラック官僚問題」にあると思っています。特に実働部隊の方々は、とても中長期的な戦略を描ける動労環境とは思えません。それについては別の機会に記事化したいと思います。

基礎研究軽視で日本の科学力が衰退


出展:http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/

【出展元】
京都大学iPS細胞研究財団
日本の科学研究はこの10年間で失速していることが、Nature Index 2017日本版から明らかに

 

数年前のニュースですが、「Nature Index 2017 Japan」よると、2005年~15年までの10年間で、日本からの論文がほぼすべての分野において減少傾向にあることがわかりました。

Nature Indexに収録されている高品質な科学論文に占める日本からの論文の割合は、2012年から2016年にかけて6%下落。高品質の自然科学系学術ジャーナルに掲載された日本の論文数は過去5年間で8.3%減少。スコーパス・データベースに収録されている全論文数は、2005年から2015年にかけて約80%増加しましたが、日本からの論文数は14%しか増えておらず、全論文中で日本が占める割合は7.4%から4.7%へと減少しました。

日本政府は大学が職員の給与に充てる補助金を削減したため、各大学は長期雇用の職位数を減らし、研究者を短期契約で雇用する方向へと変化させました。短期契約で雇用されている40歳以下の研究員の数は、2007年から2013年にかけて2倍以上に膨れ上がっています。日本の若い研究者たちは厳しい状況に直面しており、フルタイムで働けるポジションも少なくなっています。

世界各国が科学技術予算を増大させてきた中で、日本では2001年以来科学への投資が停滞しており、その結果、日本の機関では高品質の研究を生み出す能力に悪影響が表れ、衰えが見えてきてきました。

 

 



ノーベル賞受賞者の山中所長は各地のマラソン出場はもとより、テレビの科学番組や報道番組への出演やプロ野球の始球式など、みずからが広告塔となって寄付集を募り研究費用を捻出しています。ノーベル賞受賞者、それも世界をあっと言わせたiPS細胞研究の第一人者が研究費用を捻出するために寄付集めに奔走する姿は、他の先進国からはどう見えるのでしょうか。

「このままじゃ続かない。10年後、20年後に日本の科学の力が、どんどん低下しちゃうんじゃないかなと非常に心配です」

山中氏の危惧は、他のノーベル賞学者を含む科学界全体の真情を代表しています。

4 COMMENTS

Reena

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神奈川県人

国が御金を出さなければいけないのを柳井社長に出して頂いて感謝ですね。
それと、官僚は患者さんの為に奮闘している山中先生達を御金の削減と脅しをしたと
報道がありましたが絶対に許せないですし、自分は何様だと言いたいです。

ポチ

UNIQLO服買った事ないけど、柳井さんに敬意を表したいと思います。
その厚生官僚はひどく近視眼的で、天下る事しか考えてないのだろう。柳井氏とは器が違い過ぎた。
そして日本を代表する人物の一人である山中さんには、心ある多数の国民の後押しがあります。恐らく沢山の国々の様々から誘いがあるのは想像に難くないが、日本で頑張る姿は本当にすごいとしか言い様がない。
ご自身の望みが叶う事を願います

大阪淀屋

コロナ専門家会議に京大、阪大医学部から一人も入っていないのはなぜか不思議でしたが、厚生省の医務技官のトップは慶大医学部出身者であり、慶大、東大が中心となっているのがわかり、納得したものでした。
ある報道では官僚による山中教授に対して補助金打ち切り通告の争いにはIPS研究に対して京大、阪大が成果を上げているのに対して、慶大、東大が成果を上げていないためこれ以上無駄と、打ち切りを通告したとあります。国立感染症研究所はじめ多くの国立医療研究所が東京に造られ、武田はじめメーカー本社、研究所を東京移転した現状から京大、阪大の沈下を懸念していましたが、今回の寄付で考えが変ったくらいの快挙でしたね。

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