神奈川県、横浜花博(園芸博)で大屋根リング木材を小規模に再活用 出展計画から読み解く再利用の考え方


2027年3月に横浜市で開幕する GREEN×EXPO 2027(国際園芸博覧会、横浜花博・園芸博) に向け、神奈川県は県出展エリアのイメージパースを公表しました。
今回の発表で注目されているのが、**大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」**で使用された木材を、園芸博の会場で再活用する計画です。

本記事では、神奈川県の出展計画をもとに、「どの木材が」「どこで」「どのように」使われるのかを整理し、再利用の規模や、その背景にある判断の考え方を解説します。

1.神奈川県出展エリアの全体像


まず、県出展エリアの構成を整理します。


  • 出展エリア面積:約5,000㎡

  • 構成


    • 屋外庭園

    • 屋内展示施設

屋内展示施設

  • 木造2階建て

  • 建築面積:約700㎡

  • 県産木材を使用

  • 神奈川の海をイメージした曲線的な意匠

  • 壁面足元にミラー素材を採用し、庭園の緑が映り込む外観

屋内では、県の出展サブテーマである


  • 共生社会の実現

  • 持続可能な社会づくり

  • 未病(ME-BYO)の改善

について、分かりやすく発信する展示が行われる予定です。また、県内市町村などによる短期間のスポット展示も計画されています。


屋外庭園

  • 神奈川県内各地域の花や緑を植栽

  • 神奈川県土を使用

  • 中央の花壇では、県内の子どもたちが育てた花を植える取り組みを予定

この屋外庭園が、大屋根リング木材の再活用場所となります。

2.大屋根リング木材はどこに使われるのか

最初に整理しておくと、大屋根リングの木材は、屋内展示施設(いわゆるパビリオン)の構造材には使用されません。再活用されるのは、県出展エリア中央に配置される屋外庭園です。

3.再活用される木材の内容

神奈川県は、日本国際博覧会協会(万博協会)が実施した公募に応募し、大阪・関西万博の大屋根リングで使用されていた板材を取得しました。


  • 取得した木材:板材 10枚

  • 1枚あたりのサイズ


    • 長さ:約8.2m

    • 幅:約2.4m

    • 厚さ:約9cm

  • 取得方法:公募による落札

  • 譲渡条件:無償譲渡予定

これらの木材は、屋外庭園において


  • 花壇の縁材

  • ウッドデッキ

として再活用される計画です。

展示用のモニュメントや記念碑として設置されるのではなく、来場者が歩き、立ち止まり、日常的に使う部材として組み込まれる点が特徴です。

4.再利用の規模と、その使い方が選ばれた理由

今回の大屋根リング木材の再活用は、規模としては限定的です。大屋根リング全体は、数万立方メートル規模の木材を用いた巨大構造物でした。一方、神奈川県が再活用するのは板材10枚にとどまり、全体量から見ればごく一部に過ぎません。資源循環や環境負荷低減の効果という観点だけで見ると、大きなインパクトがあるとは言いにくい規模です。ただし、この規模は偶然ではなく、制約条件を踏まえたうえで選ばれた現実的な判断と考えられます。

まず、万博建築で使用された部材を、別の建築物の構造材として再利用する場合


  • 構造安全性の再確認

  • 建築基準法への適合確認

  • 加工・保管・管理に伴う追加コスト

といった実務上のハードルが生じます。
こうした点を踏まえると、屋内展示施設(パビリオン)の構造材として大屋根リング木材を活用することは、一般的な事業判断の下では現実的な選択肢になりにくいと考えられます。

そこで神奈川県は、再利用先を屋外庭園に限定しています。花壇やウッドデッキであれば、構造的な制約が比較的少なく、維持管理もしやすいうえ、来場者が直接触れ、使うことができます。また、大屋根リングという「万博の象徴」を、園芸博会場で再び主役にするのではなく、庭園の一部として溶け込ませる使い方が選ばれた点も特徴と言えるでしょう。

5.神奈川県が示した再活用の位置づけ

今回の取り組みは、再利用量の最大化を目的としたものではありません。


  • 説明しやすい

  • 実装しやすい

  • 維持管理がしやすい

  • 批判が生じにくい

といった条件を満たす形で、「再活用の具体例」を示すことに重きが置かれています。

県が掲げる


  • 共生社会の実現

  • 持続可能な社会づくり

  • 未病(ME-BYO)の改善

といった抽象的なテーマを、花を植える、歩く、使うといった具体的な体験に落とし込む構成でもあります。

6.まとめ


  • 大屋根リング木材は、屋内展示施設ではなく屋外庭園で再活用されます

  • 再利用規模は小さいものの、実装しやすさを重視した現実的な判断と整理できます

  • 記念碑化を避け、来場者が日常的に使う部材として組み込まれる点が特徴です

神奈川県の事例は、万博建築の再利用を巡る議論において、「どこまでが現実的なのか」を具体的に示したケースとして位置付けられるでしょう。






出典・参考資料

  • 神奈川県 記者発表資料
    「GREEN×EXPO 2027 神奈川県出展エリアのイメージパースについて」(2026年1月28日)

  • 神奈川新聞
    「『大屋根リング』園芸博で再活用 神奈川県、出展エリアのイメージ公表」(2026年1月29日)

  • 大阪・関西万博 関連公表資料

  • GREEN×EXPO 2027 公式サイト

Visited 36 times, 36 visit(s) today