関空に49台・神戸空港に4台の専用端末!訪日客の免税制度が大転換、「出国時リファンド方式」で空港の旅客動線はどう変わる?

2026年11月1日、日本の訪日外国人向け消費税免税制度が大きく変わりました。これまでの「購入時に消費税を免除する方式」から、税込価格で商品を購入し、出国時に税関が持ち出しを確認した後で消費税相当額を払い戻す「リファンド方式」に移行しました。

制度改正に対応するため、関西国際空港には合計49台、神戸空港には4台の専用端末が整備されました。台湾の聯合新聞網(UDN)も、新制度の手続きや注意点を詳しく報じています。

今回の改正で注目したいのは、買い物のルール変更が、国際空港の設備や旅客動線にも影響することです。これまで市中の店舗を中心に処理されていた免税手続きに、空港での税関確認と払い戻しという新たな工程が加わります。

なぜ免税制度が変わったのか? 国内転売を防ぐための抜本改革

従来の制度では、対象となる外国人旅行者が免税店でパスポートを提示すれば、原則として消費税を差し引いた価格で商品を購入できました。

しかし、免税品を国外へ持ち出さず、日本国内で転売する不正が問題になっていました。購入時点で消費税を免除する仕組みでは、その後の商品流通を把握することが難しかったためです。

そこで政府は、商品が実際に国外へ持ち出されることを税関が確認してから、免税を成立させる方式に変更しました。
項目 従来方式 新方式
購入時の支払い 税抜価格 税込価格
免税の成立 原則として購入時 出国時の税関確認後
空港での手続き 必要に応じて税関検査 専用端末等による確認が必要
消費税の払い戻し 購入時に免除 税関確認後、店舗・返金事業者が払い戻し
新制度が適用されるのは、2026年11月1日以降の購入分です。10月31日以前に購入した商品には、従来の方式が適用されます。

一方、店舗側では一般物品と消耗品の区分や、消耗品の特殊な包装要件などが見直されます。従来必要だった細かな商品管理を簡素化し、免税店の事務負担を減らす狙いもあります。

関空49台、神戸空港4台。税関確認と現金払い戻しを分離


出展:https://www.sendai-airport.co.jp/

関西エアポートは新制度に合わせ、関空と神戸空港に税関確認用端末と現金払戻用端末を整備しました。
空港 税関確認用端末 現金払戻用端末 合計
関西国際空港 28台 21台 49台
神戸空港 2台 2台 4台
関空の税関確認用端末は、第1ターミナル4階の国際線出発フロアに24台、第2ターミナルに4台を設置。第1ターミナルには現金払い戻しの有人カウンターも設けられています。

神戸空港では、国際線が発着する第2ターミナルに税関確認用端末と現金払戻用端末をそれぞれ2台配置しました。

両空港に共通するのは、税関確認をチェックイン・手荷物預け入れ前に行い、現金払い戻しを出国審査後に行うという配置です。

旅行者はまず一般エリアで免税品の持ち出し確認を受け、その後、通常のチェックインや出国手続きを済ませます。現金での払い戻しを希望する場合は、制限エリア内の専用端末などを利用します。

実際の手続きはどう変わる? 5つのステップ



新制度で旅行者が行う手続きは、次のとおりです。

① 免税店で商品を購入する

パスポート等を提示し、税込価格で商品を購入します。基本的な免税対象は、同一店舗での1日当たりの購入額が税抜5,000円以上の場合です。店舗や利用するサービスに応じて、クレジットカードなどの返金先も登録します。

② 購入した商品を90日以内に国外へ持ち出す

購入日から90日以内に、出国する空港などで税関確認を受ける必要があります。新制度では消耗品の特殊な包装要件が廃止されますが、日本国内で飲食・消費してよいわけではありません。特に注意したいのは、税関確認が原則としてレシート等の購入記録単位で行われる点です。同じ購入記録に含まれる商品の一部でも所持していなければ、その購入記録全体が払い戻しの対象外となります。

③ 空港で手荷物を預ける前に税関確認を受ける

空港に到着したら、免税品を入れたスーツケースを航空会社に預ける前に、専用端末でパスポートを読み取ります。

端末には税関の判定結果が表示されます。
  • GREEN: 実物検査は不要。税関確認が完了します。
  • RED: 指定された税関検査場所で商品を提示し、持ち出し確認を受けます。
一度預けた手荷物を免税手続きのために引き戻すことはできないため、手続きの順番が重要です。

④ チェックイン、保安検査、出国審査へ進む

税関確認を終えた後は、通常の出発手続きを行います。なお、関空では対象となる外国人旅行者が「Visit Japan Web」と空港内の手続き専用Wi-Fiを利用し、スマートフォンからオンラインで税関確認を行うことも可能です。

オンライン方式を利用できるのは、在留資格が「短期滞在」「外交」「公用」の人に限られます。関空を含む全国7空港が対応していますが、神戸空港は現時点で対象外となっています。

⑤ 現金またはキャッシュレスで払い戻しを受ける

税関確認後、店舗や返金事業者を通じて消費税相当額が払い戻されます。

対応するサービスで現金受け取りを選んだ場合は、出国審査後の専用端末などで日本円を受け取ります。一方、クレジットカード等への返金を選択した場合は、登録した方法で後日払い戻されます。

なお、関空・神戸空港で現金払戻サービスを提供するキャッシュジャパンは、原則として返金事業者から指示された金額の10%をサービス手数料としています。これは現金受け取りに伴う料金であり、すべての返金方法に適用されるものではありません。

同社のキオスク端末は1回当たり10万円が払戻上限で、それを超える場合は指定の有人カウンターでの手続きが必要となります。利用する空港や返金方法によって対応が異なるため、事前確認が必要です。

また、出国審査後の免税店で購入した商品については、今回のリファンド方式による払い戻し手続きは不要です。

海外ではすでに普及。シンガポール・フランス・韓国の事例

出国時に商品の国外持ち出しを確認し、付加価値税を払い戻す仕組みは、海外では珍しくありません。シンガポール、フランス、韓国では、それぞれ異なる方法で制度を運用しています。
国 主な制度 特徴
シンガポール eTRS パスポートで購入情報を一括照合。セルフ端末で税還付を申請
フランス PABLO 免税書類のバーコードを空港端末で読み取り、税関認証を電子化
韓国 空港還付+店舗即時還付 空港での事後払い戻しに加え、対象店舗での即時還付も利用可能

シンガポール:旅客動線を考慮した電子還付システム

シンガポールでは、電子観光客税還付制度「eTRS」が導入されています。

対応店舗で購入した商品の情報をパスポートとひも付け、空港のセルフ端末でまとめて呼び出す仕組みです。

特徴的なのは、商品の持ち運び方によって確認場所を分けていることです。預け入れ荷物に入れる商品はチェックイン前に確認しますが、高額品などの機内持ち込み商品については出国審査後の確認も設けられています。

旅客の移動順序と税関検査を組み合わせた仕組みで、日本の空港運用を考える上でも参考になる事例です。

フランス:バーコードによる税関認証「PABLO」

フランスでは、免税書類に付与されたバーコードを空港のPABLO端末で読み取り、税関による輸出確認を電子化しています。

認証が完了すると、その情報を使って販売店などが払い戻し手続きを行います。フランスでは店舗で税額を控除する取り扱いもあり、日本と購入時の課税方法が完全に同じではありませんが、空港の税関が輸出を確認する点は共通しています。

韓国:即時還付と空港還付を併用

韓国では、一般的な空港での事後払い戻しに加え、一定の購入金額などの条件を満たせば、対象店舗で消費税相当額を即時還付する方式も残されています。

訪日客の免税を出国確認後に移行した日本に対し、韓国は店舗での利便性も維持する併用型です。

海外事例を比較すると、税の不正還付を防ぐという目的は共通していても、旅行者の負担をどこまで減らすかについては異なる考え方があることが分かります。

得られる効果は? 不正防止に加え、空港内商業にも新たな機会



制度改正によって期待される効果は、大きく3つあります。

第一は、免税品の国内転売などの不正抑止です。 商品が実際に国外へ持ち出されなければ免税が成立しないため、不正な免税購入を難しくできます。制度の公平性を高め、税収の流出を防ぐ効果が期待されています。

第二は、免税店の事務負担軽減です。 従来の一般物品・消耗品の区分や特殊な包装など、一部の販売要件が廃止・緩和されます。店舗にとっては商品管理の簡素化につながりますが、新たな購入情報や返金情報の登録作業も必要となるため、実際の効果はシステムの使いやすさに左右されます。

第三は、空港内消費への波及です。 出国審査後に日本円で払い戻しを受けた旅行者が、その現金を搭乗前の飲食や買い物に使う可能性があります。

現金払い戻しの利用率や返金額によって効果は変わりますが、市中での買い物に伴う税還付が、空港内の新たな購買機会につながる点は興味深いところです。

課題はチェックイン前の混雑。関空と神戸空港で異なる対応



一方、空港運営にとっての課題は、新たに発生する税関確認の需要です。

これまでの国際線旅客は、空港に到着するとチェックイン、保安検査、出国審査へと進んでいました。新制度では免税品を購入した旅行者に限り、その前段階で税関確認が必要になります。特に国際線の出発が集中する時間帯には、端末の操作待ちや実物検査が重なる可能性があります。

関空では税関確認用端末28台を配置したうえで、Visit Japan Webによるオンライン確認を導入しました。大阪税関も、端末の混雑を避ける方法としてオンライン手続きを推奨しています。

一方、神戸空港では税関確認用端末が2台で、オンライン確認には対応していません。現時点の旅客規模に応じた設備構成ですが、今後、国際線の便数や利用客が増加した場合には、処理能力の検証が必要になるでしょう。

重要なのは、端末の台数だけではありません。税関検査が必要になる旅行者の割合、多言語での案内、手荷物預け入れまでの誘導なども、空港全体の処理能力を左右します。

まとめ:買い物の制度変更が、国際空港のインフラを変える



2026年11月に始まったリファンド方式は、国内転売などの不正対策を目的とした制度改正ですが、その影響は空港運営にも及びます。関空では49台、神戸空港では4台の専用端末が整備され、税関確認から払い戻しまでの新しい手続きが始まりました。

海外ではすでに電子還付システムが普及していますが、各国で異なるのは、税の適正な徴収と旅行者の利便性をどう両立させるかという制度設計です。

日本でも今後は、不正防止の成果に加え、どれだけ短時間で、分かりやすく、ストレスなく払い戻しを受けられるかが重要になります。

免税制度の変更によって、空港は新たな手続きと商業機会を担うことになりました。今回の関空・神戸空港の設備整備は、その第一歩といえそうです。




出典・参考資料

日本の制度・空港設備
報道
海外の制度

Visited 512 times, 512 visit(s) today