神戸空港島に航空機工場!新明和工業が1.75haに進出へ、救難飛行艇「US-2」の組み立て・航空宇宙関連部品の生産拠点を2029年に整備


出展:新明和工業

神戸空港島に、新たな航空機生産拠点が誕生します。

神戸市は2026年10月15日、空港島北西部の産業用地について、新明和工業(兵庫県宝塚市)を優先交渉権者に選定したと発表しました。同社は約1.75haの敷地に、海上自衛隊の救難飛行艇「US-2」の組み立てや、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いた航空宇宙関連部品の製造・組立を担う工場を建設し、2029年の操業開始を目指します。

今回の進出は、神戸市が推進する航空機関連産業の集積に向けた具体的な一歩です。国際化が進む神戸空港島に製造機能が加わることで、既存の航空機産業との連携や地域経済への波及が期待されます。

神戸空港島北西部の約1.75haに新工場を整備


出典:神戸市「神戸空港島用地貸付事業者の募集」

計画地は神戸空港島の北西部、海に面した約2.4haの公募対象地の一部です。神戸市は航空機関連の製造業を対象に事業者を募集し、唯一応募した新明和工業を選定しました。

事業計画の概要

項目 内容
事業名 神戸空港島用地貸付事業
所在地 神戸市中央区神戸空港12番の一部
立地 神戸空港島北西部
公募対象面積 約24,000㎡(約2.4ha)
提案貸付面積 17,500㎡(約1.75ha)
事業者 新明和工業株式会社
主な事業 救難飛行艇の組み立て、航空宇宙関連部品の製造・組立
主な素材 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)など
貸付方式 事業用定期借地権
提案貸付期間 50年間
土地賃料 年間約1億1,550万円(公募条件から試算)
操業開始 2029年予定
建築規模・投資額 未発表
事業は神戸市が土地を長期貸付し、民間事業者が独立採算で施設を整備・運営する方式です。公募時の賃料単価は月額550円/㎡で、新明和工業の提案面積に換算すると年間約1億1,550万円となります。

選定委員会は、事業計画や資金計画の実現性に加え、同社の経営基盤や航空機製造の実績を評価しました。現時点では優先交渉権者の決定段階であり、正式な借地契約や工場の建築計画については今後具体化されます。

US-2と民間航空機部品、二つの事業領域を強化


出典:Hunini/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

新明和工業は、国内唯一の飛行艇メーカーとして、神戸市東灘区の甲南工場を中心に航空機事業を展開しています。

主力製品の「US-2」は、海上自衛隊が運用する救難飛行艇です。優れた短距離離着水性能と外洋での運用能力を備え、洋上での人命救助を担っています。同社は2026年2月に9号機を引き渡し、2026年3月期には10号機の製造契約を締結しました。11号機以降についても継続受注を目指しています。

民間航空機分野では、ボーイング787の主翼構造部材、777/777Xの翼胴フェアリング、エアバスA330neoの主翼関連部品などを製造しています。新拠点で計画されているCFRP部品の製造・組立は、軽量化や高強度化が求められる航空宇宙分野に対応するものです。

航空機事業の業績も拡大しています。2026年3月期の受注高は前期の428億円から660億円へ増加し、売上高は337億円から415億円となりました。

同社は今後の重点施策として、ボーイング向け製品の増産対応、熱可塑性複合材の研究開発、次期航空機の軽量化・生産効率化に関する研究などを掲げています。

新工場は、こうした事業拡大を支える生産基盤の一つになると考えられます。ただし、US-2の生産数量や甲南工場から移管する工程、新工場で製造する個別の航空機部品については、現時点で明らかにされていません。

航空機産業の集積で地域経済への波及を狙う

出展:新明和工業

神戸市が新工場の誘致で重視しているのは、航空機関連産業の集積と地域経済への波及効果です。

航空機製造は、精密機械加工、金属加工、複合材成形、電子機器、品質管理など、多様な技術と企業が関わる裾野の広い産業です。新明和工業は市内の既存工場と連携しながら事業を展開し、新規雇用の創出や地元企業との取引拡大を目指します。

神戸には航空機製造に関する技術や産業基盤が蓄積されています。既存メーカーの生産機能を拡張し、関連企業との取引を広げることは、地域内で生み出される付加価値を高めるうえでも意味があります。

一方、神戸空港との直接的な相乗効果は、今後の検討課題です。選定委員会の講評でも、空港機能との具体的な連携について、さらなる明確化が求められています。航空機の製造・搬送に空港立地をどのように活用するかが、事業の特徴を左右することになりそうです。

神戸空港島の土地利用が構想から実行段階へ



神戸空港島の総面積は約270haで、このうち約60haが未利用地となっています。神戸市は2026年6月、将来の土地利用を検討するサウンディング型市場調査を実施し、航空機関連をはじめとした成長産業の集積や、新たな都市機能の導入に向けた検討を進めています。

その背景にあるのが、神戸空港の国際化です。2025年4月には第2ターミナルビルが供用を開始し、国際チャーター便の運航が始まりました。2030年前後には国際定期便の就航を目指しており、今後は航空需要の拡大と産業振興を両立させる土地利用が重要になります。

今回の新明和工業の進出は、未利用地の活用方針が具体的な企業立地へと進んだ事例です。空港島に高付加価値な製造業を誘致することは、旅客需要だけに依存しない産業基盤の形成にもつながります。

ただし、50年規模の長期借地によって土地利用が固定されるため、将来のターミナルやエプロンなどの拡張余地との整合性にも目を配る必要があります。空港としての成長可能性を確保しながら、関連産業の集積を進められるかが問われます。

新明和工業の新拠点は、神戸空港島が航空輸送と航空機製造の両面で機能を拡大する契機となりそうです。今後は建築計画の公表とともに、生産体制の具体化、地元企業への発注、新規雇用、空港機能との連携が注目されます。




出典・参考資料

  1. 神戸市「神戸空港島用地貸付事業」優先交渉権者の決定(2026年10月15日)
  2. 神戸市「神戸空港島用地貸付事業者の募集」募集要項・選定委員会講評
  3. 神戸市「神戸空港島の将来構想(土地活用等)に向けたサウンディング型市場調査」
  4. 新明和工業「2026年3月期 IR説明会資料」(2026年5月20日)
  5. 新明和工業「航空機事業紹介」
  6. 神戸新聞「神戸空港島に新明和工業の工場」(2026年10月15日)
  7. 神戸経済ニュース「新明和工業が優先交渉権、飛行艇など生産拠点に」(2026年10月16日)

Visited 2,099 times, 2,099 visit(s) today