『ブルーボトルコーヒー心斎橋カフェ』大阪エリア2店舗目は大阪のローカリティを「幾何学」へ翻訳した空間デザイン

ブルーボトルコーヒーは2025年9月19日(金)、大阪エリア2店舗目となる「ブルーボトルコーヒー 心斎橋カフェ」をオープンしました。2021年に開業した梅田茶屋町カフェに続く出店で、日本上陸10周年の節目にあたります。立地は、商業・観光・ライフスタイルが高密度に交差する心斎橋エリアです。

店舗コンセプトと位置づけ

心斎橋カフェのコンセプトは「Luxe Retreat(ラグジュアリーな隠れ家)」です。にぎわいの中心にありながら、落ち着いてコーヒーを楽しめる環境をつくることを目的としています。視覚的な装飾で個性を強調するのではなく、空間構成、素材、光の扱いによって滞在の質を高める設計が採用されています。

設計を手がけた芦沢啓治建築設計事務所

ブルーボトルコーヒー 神戸カフェ

空間デザインを担当したのは、みなとみらいカフェや白井屋カフェなど、ブルーボトルコーヒーの複数店舗を手がけてきた 芦沢啓治建築設計事務所 です。心斎橋という高密度な都市環境において、意匠の主張を前面に出すのではなく、構成と素材のバランスによって落ち着きのある空間を成立させています。

既存建物を生かした空間構成

店内は既存建物のコンクリート躯体を露出させ、ブルータリズムの力強さを空間の骨格としています。一方で、木材家具やテキスタイル、和紙といった素材を重ねることで、硬質な印象を緩和しています。コンクリート、木、真鍮、和紙といった異なる素材が併存することで、「硬さと温もり」「陰影と光」が共存する、長時間滞在しやすい環境が整えられています。

大阪の象徴を直接使わないデザイン手法

心斎橋カフェの大きな特徴は、大阪城や通天閣といった象徴的存在を、分かりやすいアイコンとして提示していない点です。代わりに、それらに内在する構造や形態を抽出し、空間の構成要素として再解釈しています。

通天閣に見られる正方形から八角形へと変化する構造は、テーブルトップや照明シェードの多角形形状として反映されています。また、大阪城や「黄金の茶室」に由来する華やかさは、全面的な装飾ではなく、照明や家具、金物における真鍮やゴールドの反射として、控えめに取り入れられています。

大阪を説明するのではなく、構成原理として大阪を組み込むという設計により、観光的な記号に寄らない、時間耐性の高い空間が成立しています。

越前和紙による照明計画

照明には福井県産の越前和紙を用いた特注ランプを採用しています。柔らかく拡散する光がコンクリートの表情に奥行きを与え、視覚的な緊張を抑えます。人通りの多い心斎橋にありながら、店内に一段落ち着いた光環境をもたらしています。

屋内外に広がる客席構成

客席は店内38席、屋外44席の計82席です。テラス席はペット同伴が可能で、ドッグトリーツやリードフックも用意されています。ひとりでの利用からグループ利用まで、用途に応じた居場所が確保されています。

大阪の次の打ち出し方を示す一例

ブルーボトルコーヒー心斎橋カフェが示しているのは、「大阪らしさ」を前面に打ち出す方法ではありません。大阪城や通天閣といった象徴をそのまま提示するのではなく、そこに内在する構造や形態を分解し、幾何学や素材、光といった要素として空間に組み込む。ローカリティを記号ではなく構成原理として扱うアプローチです。

この設計は、分かりやすさを優先した表現とは距離を取っています。説明がなくても成立し、特定の知識や文脈を共有していなくても違和感なく受け取れる。その一方で、都市の背景を知る人には、どこか大阪らしさが感じ取れる構造になっています。

観光的な消費に寄りにくく、時間が経過しても意味が劣化しにくい点も特徴です。また、国籍や文化的背景を問わず評価されやすく、ブランド空間としての普遍性も保ちやすい。大阪を強く主張しないからこそ、結果として大阪がにじみ出る設計とも言えます。

大阪が今後、富裕層やビジネス層、クリエイターといった多様な人材を引き寄せる都市を目指すのであれば、「らしさ」をどう見せるかではなく、都市の特性をどう翻訳するかが問われます。心斎橋カフェは、その一つの具体例として、現在の大阪が選び得る方向性を静かに示しているように見えます。

店舗概要

店名:ブルーボトルコーヒー 心斎橋カフェ
所在地:大阪府大阪市中央区南船場4-7-23 心斎橋TKビル1階
営業時間:8:00~19:00店舗面積:119.73㎡
席数:店内38席/屋外44席
アクセス:大阪メトロ御堂筋線「心斎橋駅」3番出口より徒歩約4分




出典・参考資料

  • ブルーボトルコーヒージャパン合同会社 プレスリリース(2025年8月25日)

  • 芦沢啓治建築設計事務所 公式サイト・公開コメント

  • Dezeen「Blue Bottle Coffee Shinsaibashi」

  • architecturephoto.net 掲載記事

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