数年前から論議されてきた、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法が2018年07月20日に可決、成立しました。法成立で、これまで認めていなかったカジノが国内で解禁されます。
【出典元】→特定複合観光施設区域整備法案の概要
→IR実施法成立、今国会が事実上閉会
→カジノ法成立、23年にも初の合法カジノ開業へ
→米MGMリゾーツが公表した大阪IRの外観図はより具体的なプランに落とし込まれていた!
→MGMリゾーツ・インターナショナルが公表した日本版IR(統合型リゾート)MGM Osakaの完成予想パース
→ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が、カジノを含む統合型リゾート(IR)への参入を検討!
→海外のカジノ開発事業者のトップが続々と来阪、国内初のIR(カジノを設置した総合型リゾート)は大阪が有力視!
→カジノを設置したIR(統合型リゾート)の候補地は夢洲が有力、投資額は5000億円以上!
そもそも「IR(統合型リゾート)」とは何か?
IR(統合型リゾート)とは、全体面積の3~5%に過ぎないカジノなどのゲーミング部門が事業全体の50~80%の収益を上げ全体収益の核となることで、劇場やアリーナ、美術館、博物館、国際会議場、展示会といった採算性が不安定なエンターテインメント部門とコンベンション部門(MICE)を支える仕組みの事です。IRの代表的な成功例は、シンガポールのマリーナベイ・サンズが有名です。
統合型リゾート(IR)実施法が定める「特定複合観光施設」は、カジノ施設に加え、以下の施設を⺠間事業者により⼀体として設置・運営されるもの、としています。
①国際会議場施設
②展⽰施設等
③我が国の伝統、⽂化、芸術等を⽣ かした公演等による観光の魅⼒増進施設
④送客機能施設
⑤宿泊施設から構成される⼀群の施設
⑥その他観 光客の来訪・滞在の促進に寄与する施設を含む
カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法のポイント
今回可決されたIR法案では、国内設置数は当面3カ所が上限となります(最初の区域認定から7年後に見直し)。また、カジノの開業には立地自治体の同意を得ることが条件なっています。以下、今回のカジノを含む統合型リゾート(IR)実施法のポイントを見て行きましょう。
1:IR区域認定数は当面3箇所、7年後に見直し
「我が国の特定複合観光施設としての国際的競争力の観点及びギャンブル等依存症予防等の観点から、厳格に少数に限ることとし、区域認定数の上限を法定する」との附帯決議や「最初の段階ではせいぜい2か所、3か所」との提案者答弁を踏まえ、まずは3か所を上限として法定されました。逆に言えば、IRの最初の設置枠は3箇所で「その後7年間以上はIRを設置出来ない」という事になります。最初の設置地区に選定される事が非常に重要となります。
【出典元】→HETZEL DESIGN Los Angeles, USA – 2014
2:立地自治体の同意を得ることが条件
附帯決議の趣旨を踏まえ、認定申請をする自治体の議会の議決と立地市町村の同意を要件とすることにより、地元での合意形成を制度化する。なお、立地市町村の同意については、地方自治法第96条第2項の適用により、条例で議会の議決すべき事項として定めることができるものである旨を確認的に法定する。IRの設置について「立地自治体の同意を得る事」が条件となっています。1の先行者メリットを享受する為には、立地自治体がIRの本質を理解し、積極的に誘致している事が重要です。
3:カジノ施設の規模は延床面積の3%
IR施設の延床面積の3%以下に制限。敷地ではなく延床面積の3%とすることで、IR施設の「一部に過ぎないこと」を確実に担保する一方で、依存防止については、厳格な入場回数制限や入場料の引上げ等と合せて万全を期す、としています。
4:厳格な依存防止策に加え入場料は6000円!
厳格な依存予防対策を講ずる観点から、日本人客は入場回数制限は「7日間に3回 + 28日間で10回」、本人・入場回数確認手段に「マイナンバーカードを活用」。また、日本とシンガポール一人当たりGDPの差を勘案しつつ、さらに実質的にシンガポールの入場料以上の水準を確保する観点から、1回あたり6,000円となりました。駅前やロードサイドに林立するパチンコ店や競輪、競馬などの既存のギャンブル施設に比べると比較にならない位厳しい制限が設けられました。IRが訪日外国人をターゲットにしている事が端的に解る規制内容です。
上空から見た大阪・夢洲の全景。既存市街地から隔絶された立地は周辺環境への影響も無くIRに最適。
5:カジノ税は30%
累進制は事業者の追加投資による事業拡大インセンティブを阻害し、公益実現のための投資を抑制してしまうリスクがあることから適当ではなく、30%の定率となりました。国とIRが立地する地方自治体(都道府県または政令市)で折半されます。大阪府の試算では府の税収効果は2500億円に上り、年間7万人の雇用を創出すると見込んでいるとの事です。
⽇本⼈等の⼊場者に対し、⼊場料・認定都道府県等⼊場料として、それぞれ3千円/回(24時間単位)を賦課。カジノ事業者に対し、国庫納付⾦(①カジノ⾏為粗収益(GGR)の15%及び②カジノ管理委員会経費負担額)、 認定都道府県等納付⾦(GGRの15%)の納付を義務付け
出典:特定複合観光施設区域整備法案の概要
【出典元】
→IRの誘致効果「年6300億円」大阪府が試算 府の税収効果は2500億円
進出条件がそろった大阪・夢洲がIR施設の最有力候補
大阪・夢洲がIRの最有力候補と言われてます。まず、地元自治体が積極的に誘致している事。さらに計画地の夢洲は人工島なので外部から隔離されており、周辺環境の悪化の心配がありません。総面積は約280ヘクタールもあり、IR向けに100ha以上の用地供給が可能です。さらに開通済みの夢洲トンネルには地下鉄延伸用のスペースが確保済みで鉄道の延伸が容易です。近くに世界的なテーマパーク「USJ」があり、24時間オープンの関西国際空港もあります。右肩上がりで増え続けている訪日外国人観光客。大阪は海外からの集客が確実に見込めます。京阪神の都市圏人口は約1700万で、1人当たりのGDPは3万8千ドル以上の巨大市場です。その上、東京ベイエリアの約1/4の地価で用地が手に入るとあれば、もう外資が飛びつかないわけがありませんね。
府は2008年から積極的にIRを誘致しており、MGMリゾーツ、メルコリゾーツ、シーザーズエンターテイメント、マリーナベイ・サンズなど、海外の有力カジノオペレーターの大阪詣が続いています。
IRの区域認定数は当面3箇所なので、残り2箇所は何処になるのでしょうか。個人的には地域振興の観点から沖縄県が良いと思っていますが、沖縄県の翁長雄志知事はIR法案に反対の意向を示しているで無理かもしれません。横浜市の「山下ふ頭」も有力視されていましたが、横浜財界の重鎮と言われる藤木幸夫会長(横浜港運協会)が反対、住民の反対意見が多い事から、市長が慎重姿勢に変わりつつあります。その他、北海道「苫小牧」「釧路」「小樽」、和歌山県「マリーナシティ」、長崎県「ハウステンボス」、徳島県などがカジノ誘致に積極的と言われています。



