大阪の「空飛ぶクルマ」、万博実証から路線設計へ 森之宮で騒音・風況、大阪港で実運航ルートを具体化



大阪の「空飛ぶクルマ」が、万博でのデモ飛行を経て、都市交通として「どこを、どう飛ばすか」を設計する段階に入りました。

大阪府は2026年度、森之宮と大阪港で進める2件の調査を採択。さらに、需要分析や観光商品、旅客動線を検証する事業環境調査も進めています。

焦点は、機体開発そのものから、都市環境、運航ルート、需要、商品設計を含む交通事業全体の構築へ移っています。

森之宮=都市内で離着陸できる条件を詰める



森之宮では、Osaka Metroを中心に、2028年度頃のバーティポート運営開始を見据えた調査を進めます。
項目 内容
想定拠点 森之宮新駅ビル屋上
主な調査 騒音、低周波音、風況、振動、進入・離脱経路
関係者 Osaka Metro、SkyDrive、航空環境研究センター、長大など
目的 市街地で安全かつ周辺負荷を抑えて離着陸できる条件の整理
SkyDriveが取得する実機騒音データを使って周辺への影響を予測し、建物周辺で変化する風況も解析します。

ここで重要なのは、単に「騒音が何デシベルか」を測ることではありません。どの方向・高度から進入すれば、安全性を確保しながら騒音を抑えられるかを飛行経路に反映することが狙いです。

森之宮周辺には住宅、鉄道、大阪城公園があり、新駅や大型施設の整備も進みます。海上中心のルートを設定しやすい大阪港に比べ、都市内運航の条件は厳しくなります。

森之宮は、空飛ぶクルマが実際の市街地へ入れるかを試す最初の重要拠点になりそうです。

大阪港=商用運航を前提に「実際に飛ぶ道」を作る



大阪港では、丸紅エアロスペースなどが、商用運航を想定したルート設計に入ります。約1.2万㎡の大阪港バーティポートには、離着陸場、旅客施設、格納庫などがすでに整備されています。
検討分野 内容
機体 性能、航続距離、飛行条件
運航 離陸、上昇、巡航、降下、着陸
ルート 実運航を想定した飛行経路
ポート 運営・管理条件
制度 商用化に必要な課題整理
機体性能を基に、離陸から着陸までの「運航プロファイル」を作成し、大阪の地形や空域へ落とし込んで具体的なルートを検討します。

大阪港は海上ルートを設定しやすく、人口密集地上空を長時間飛ばずに済むため、初期の商用運航拠点として条件に恵まれています。

事業イメージでは、2026~28年度に準備を進め、2029年度頃に大阪を拠点とした関西エリアの2地点間運航を開始、2030年度以降に拡大する方向性が示されています。

現時点では相手側の発着地は未定で、「大阪港―森之宮線」が決まったわけではありません。

2025年度調査=「どこへ飛ばせば価値があるか」は見え始めた

大阪府は2025年度、空港、主要駅、観光施設などを結ぶ110ルートを比較し、需要や既存交通に対する時間短縮効果を分析しました。特に評価が高かったのが、関西空港と大阪ベイエリア・都心を結ぶルートです。
ルート 公共交通比の時間削減率※ 車・タクシー比※
関西空港 → 海遊館 33% 64%
関西空港 → 大阪城 38% 63%
関西空港 → USJ 42% 67%
※大阪府の調査条件による試算。

なかでも関空―USJは、空港利用者と大規模観光施設を結び、時間短縮効果も大きいルートとして評価されました。

さらに桜島―関西空港、桜島―本町、夢洲遊覧などでは、ヘリコプター等を使ったモニタリングを実施。旅客動線や観光商品としての成立可能性も検証しています。

つまり大阪では、単に「飛べる場所」を探すのではなく、需要と時間価値が大きいルートをデータで選ぶ段階に進んでいます。

2026年度=「誰に、どう売るか」まで検証



2026年度は、ルート設計とは別に、実際のサービスとして成立させるための事業環境調査も進みます。受託候補は、オリックス、JTB、AirX、Soracle、NTTデータによる共同企業体です。
検討項目 内容
路線 来阪旅行者のゲートウェイを起点とするルート
商品 空飛ぶクルマを組み込んだ観光商品
販売 顧客層、販売方法
旅客動線 予約、乗降、乗継
運用 サービスオペレーション
2025年度のヒアリングでは、梅田、関西空港、京都などが有望な発着地として挙がり、関空―USJの移動や遊覧を組み合わせた商品、海外富裕層向けサービスなどに需要が見込まれました。

機体価格、座席数、ポート整備費、運航コストを考えれば、初期市場は地下鉄やタクシーの代替ではなく、時間短縮に高い対価を払える富裕層やインバウンド向けの高付加価値交通になる可能性が高いでしょう。

まず高単価市場で運航実績を積み、機体数や便数の増加、コスト低下に合わせて利用層を広げる。現在の調査内容からは、こうした現実的な商用化シナリオが見えてきます。

 機体実証から「交通事業の設計」へ



一連の取り組みを整理すると、大阪が詰めている要素は明確です。
場所・事業 解こうとしている課題
森之宮 都市内で安全に離着陸できるか
大阪港 実運航ルートをどう設定するか
2025年度調査 どこへ飛ばせば需要と時間価値があるか
2026年度調査 誰に、どう売り、どう乗せるか
空飛ぶクルマは、機体が完成しただけでは交通機関になりません。

バーティポートを整備し、飛行ルートを設定し、需要を見極め、予約・乗降・乗継まで設計して初めて「交通事業」になります。

大阪では、その各要素が同時並行で具体化し始めました。機体認証、運航認可、採算性、騒音への社会受容など課題は残り、定期路線が決定した段階でもありません。

それでも、万博前との違いははっきりしています。大阪の空飛ぶクルマは、「飛ばして見せる技術実証」から、「誰を、どこからどこへ、どう運ぶか」を決める交通事業の設計へ移り始めています。




出典

  • 大阪府「令和8年度 空飛ぶクルマ都市型ビジネス創造都市推進事業補助金」
  • 大阪府「令和8年度 採択事業概要一覧」
  • Osaka Metro「大阪府『令和8年度空飛ぶクルマ都市型ビジネス創造都市推進事業補助金』に採択されました」
  • 大阪府「令和7年度 空飛ぶクルマ観光魅力促進調査事業 成果報告書」
  • 大阪府「空飛ぶクルマ運航ルート事業環境調査事業」

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