
日刊工業新聞が伝える所によると、JR西日本は新快速運転区間に「有料座席車」の導入を検討を始めた、との事です。京阪が2017年8月20日(日)からサービスを開始した座席指定特別車両「プレミアムカー」の好調が伝えられる中、JR西日本も「有料座席車」の導入に向けて動き出しました。
JR西日本は在来線「新快速」運転区間を念頭に、有料座席車導入の検討を始めた。運行形態や車両などを詰め、2022年度までの実現を目指す。鉄道各社は料金収入増も狙えることから、大都市近郊路線で快適に移動できる有料座席車の導入を加速させている。JR西の新快速は関西エリアの都市間移動に使われ、長距離の乗客も多い。着席移動のニーズに応えて、サービスの向上につなげる。
出典:日刊工業新聞>JR西、「新快速」区間に有料席 22年度までに導入へ
こちらは昨年8月から特別車両「プレミアムカー」を導入した京阪特急の様子です。京阪プレミアムカーは1989年にデビューした8000系電車の6号車を改造して登場した有料座席指定の特別車両です。京阪8000系は8両編成で、6号車が有料座席指定の「プレミアムカー」、ほかの7両は別料金不要の“自由席”、そのうち4号車が2階建て「ダブルデッカー車」の編成です。

料金不要の豪華特急が売りだった京阪特急に、さらに追加料金を払って乗ってもらう為に、京阪はメチャクチャハイグレードな車両を投入しました。運賃+500円(又は400円)で着席保証が買える、しかもこのゴージャスさ。プレミアムカーの追加料金には、それ相応の「値打ちがある」為、利用者のニーズを捉え利用状況は好調です。
【過去記事】
→京阪プレミアムカー乗車レポート1 ~記念すべき淀屋橋発1番列車発車前後の状況~
→京阪プレミアムカー乗車レポート2 ~エントランス・車内設備~
→京阪プレミアムカー乗車レポート3 ~シート編~

南海電鉄も有料特急「泉北ライナー」を投入しました。泉北ライナーは、南海高野線・泉北高速鉄道線で運行している全車座席指定の特急電車で難波~和泉中央間27.7 kmを最速29分で結んでいます。泉北ライナーのデビューは2015年12月。以前は現平日に上り7本・下り6本、土曜・休日に上下各8本が運行されてましたが、2017年8月26日のダイヤ改正から増発され、平日は上り12本・下り11本、土曜・休日は上下各12本になりました。乗車時間30分あまりの短距離ランナーですが、着席保証に対するニーズは大きく、平日を中心に利用が定着している様です。
【過去記事】
→泉北ライナーは着席保証を売りにした通勤ライナーその物だった!

南海電車は以前から全席座席車とロングシート車を併結した「特急サザン」を運行しています。サザンの有料車両も中間駅→難波といった短距離利用が結構あります。

最新型、サザンプレミアムのシートです。JR西日本が検討している有料座席車もサザンプレミアム、レベルの客室設備を持たせて欲しい所です。

有料座席車の代表各と言えば「近鉄」です。縦横無尽に張り巡らされた特急ネットワークは何十年も前から「通勤ライナー」的な使われ方をしてきました。
JR北海道の快速エアポートに連結されたuシート。普通運賃に全区間一律520円の座席指定券を追加購入するだけで利用する事が出来ます。駅にある自動券売機でシートリクエストが簡単に出来ます。
【過去記事】
→快速エアポートと関空アクセス

JR西日本の有料座席車が成功する為に
同社が検討を始めた「新快速」運行区間への有料座席車の導入。国鉄時代に快速に「グリーン車」を連結したものの廃止された。関空特快ウイングの悪夢。という過去がありますが時代が変わりました。現在の新快速は米原〜姫路間、約200kmを中心に終日15分、12両編成で最高時速130km/hで疾走する異次元の乗り物です。この新快速の全てにハイグレードな有料座席車が連結されれば、そのインパクトは図りしれません。長距離利用者を中心に、いままで隠れていたニーズが一気に顕著化する事になると予想できます。ただ、この「着席保証」というニーズを顕著化させる為には、いくつかの条件をクリアする必要があります。1,一般車よりもハイグレードな専用車両
一般車をそのまま座席指定にして追加料金を取るのはNG。関空特快速ウイングの悪夢が蘇ります。「だれが同じシートで追加料金はらうねん!」です。JR北海道のuシートの様なリクライニングシートは必須です。追加料金を払う「値打ち」が無いと利用されません。
2,フリークエンシーの確保
全ての新快速の基本編成に特別車両を1〜2両連結。15分に1回は特別車両の乗車チャンスを確保する。京阪プレミアムカーの成功は、その運転本数にあると思っています。1時間4回の乗車チャンスは魅力的ですし、1列車あたりの特別車両の座席数は少なくても、4本運転すれば、多くの有料席が提供できます。またずにヒョイっと乗れる事が成功条件の2です。
3,気軽に座席指定が取れる仕組みの導入
フリークエンシーの確保と被るのですが、座席指定が容易だと思い立った時に利用出来ます。真っ先に思いつくのがe5489のチケットレスサービス。阪和線沿線に住んでいた頃は、新大阪→最寄り駅までチケレスを使い、「はるか・くろしお」を良く利用しました。チケレスが使えない層の為に、自動券売機での発券、ホーム上の券売機、交通系ICやクレジットカード対応も必須でしょうね。

関西人はケチだからグリーン車に乗らないは嘘
グリーン車の話になると「関西人はケチだから無理」と言うステレオタイプが声が聞こえてきます。まず「関西人」と一括りにしてレッテルを張られる事が不快ですが、それは今回は置いときます。「関西人」はケチではなく「経済的合理性を求める傾向が強い」です。投資に見合った価値が提供されるのであれば喜んでお金を払います。ひと事で言うと「値打ちがある」モノ・コトには惜しみなくお金を使います。逆に「値打ちが無い」と判断すれば華麗にスルーされます。関空特快「ウイング」がデビューした時は、JR西日本ひいきの僕でさえ「だれが金はらうねん!」と思いました。結果は見ての通り頓死です。提供されたサービスに「値打ちが無かった」から。京阪プレミアムカーは好調です。追加料金を払うだけの「値打ちがある」からです。JR西日本が検討している有料座席車の成否は「値打ちがあるか否か」の1点に尽きます。その値打ちが何なのか?利便性、容易性、居住性。事業者視点でみれば、車両、券売機、システム対応などそれらに対する投資に対するリターンが見込めるのか等々・・バランスが問われそうです。同社が検討してい有料座席車がユーザーにとって「値打ちがある」サービスになる事を期待しつつ、続報を待ちたいと思いました。


