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大阪関西万博に『空の玄関口』が誕生!大阪港バーティポートの完成で動き出す「空飛ぶクルマ」の未来都市構想とは!?


大阪・関西万博で“未来”を実感する空飛ぶクルマ──商用運航断念の先に見える社会実装への布石

2025年に開催される大阪・関西万博において、未来社会の象徴として注目されていた「空飛ぶクルマ」。次世代の都市交通手段として期待されていたこのモビリティは、商用運航の実現こそ断念されたものの、デモフライトという形で実証へと移行しました。これは決して後退ではなく、社会実装に向けた着実な一歩といえるでしょう。本記事では、空飛ぶクルマに関する現状と今後の展望を、インフラ整備、制度設計、国際動向の視点から整理します。




実証フィールドの整備──バーティポートが築く次世代インフラ



大阪・関西万博では、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、空飛ぶクルマはその象徴的存在として注目されています。

夢洲の会場内には、日本国際博覧会協会とオリックスが共同で整備を進める「EXPOバーティポート」が設けられます。敷地面積は約7,940㎡で、着陸帯や駐機スペース、格納庫に加え、EVの2〜3倍の出力を誇る急速充電設備が設置される計画です。

また、会場外にはOsaka Metroが整備した「大阪港バーティポート」が2025年3月に竣工。約12,000㎡の敷地に離着陸場、旅客施設、格納庫を備え、オンデマンドバスやシェアサイクルとの接続も可能な都市型MaaSの拠点として機能します。SkyDriveとの業務提携を通じて、社会実装に向けた取り組みが本格化しています。




制度の壁と認証の遅れ──商用運航断念の背景



空飛ぶクルマの商用化には、機体の安全性や運航体制に関する国の認証・許可が必要です。日本では国土交通省の航空局(JCAB)が中心となり、「型式証明」や「耐空証明」の審査を担当。また、操縦者資格や事業者認可、運航ルールなど新たな制度整備も不可欠です。

この制度設計は、経済産業省と連携する「空の移動革命に向けた官民協議会」などを通じて進められており、法制度の整備が急がれています。

こうした事情を背景に、2024年9月、運航予定の4陣営は商用運航を断念し、デモフライトへと方針転換。万博では、安全性を担保した上で、実際に空を飛ぶ機体を一般に披露する機会が設けられることとなりました。




デモフライトと来場者体験──未来モビリティを“見せる”意義



デモフライトは、EXPOバーティポートと大阪港バーティポート間、あるいは夢洲周辺の海上エリアでの運航が予定されており、詳細ルートは今後発表される見込みです。

あわせて「大阪港バーティポート」では、2025年4月中旬以降、一般向けの体験イベントも開催予定です。顔認証によるチェックインやモックアップへの搭乗体験、開発史を紹介する展示などを通じて、未来の空の移動を来場者が体感できる構成となっています。




世界の空飛ぶクルマ戦略──日欧米の比較と日本の立ち位置



空飛ぶクルマの普及は世界的にも注目を集めています。アメリカではJoby AviationやArcher AviationがFAA(米連邦航空局)による型式認証の取得を進め、2025年以降の商用化が視野に入っています。ドイツのVolocopterはパリ五輪でのデモ飛行を予定しており、EASA(欧州航空安全機関)の認証取得を目指しています。

日本は、こうした国際的な潮流と歩調を合わせつつ、都市インフラや災害支援、観光輸送といった独自のユースケースに対応した実装モデルを模索しています。




万博後の展望──都市間空路ネットワークへの進化


出展:https://www.marubeni.com/jp/news/2023/release/00023.html

空飛ぶクルマの実装は万博で終わるものではありません。Osaka MetroとSkyDriveは「大阪ダイヤモンドルート構想」を掲げ、新大阪・梅田、森之宮、天王寺、ベイエリアを結ぶ空路ネットワークを目指しています。2028年には森之宮での運航開始を見込み、都心への展開も見据えた動きが進んでいます。

こうした構想の実現には、運航管理システムの整備や低空空域の管理、地域住民の理解など、多くの準備が求められます。




空間構造と都市政策──空飛ぶクルマが変えるまちづくり


https://lilium.com/newsroom-detail/designing-a-scalable-vertiport

空飛ぶクルマの社会実装は、単なるモビリティ技術の導入にとどまらず、都市の空間構造や交通計画の再設計にも関わってきます。従来の地上インフラに加えて、3次元空間を活用した新たな都市交通網を構築するためには、建築基準法や都市計画法など、他分野との連携が不可欠です。

空飛ぶクルマが活躍する未来の都市では、屋上のバーティポートを含めた立体的な交通ノードの整備や、商業・観光・業務施設とのダイレクトアクセスが求められます。現時点で、空飛ぶクルマが日本の都心部で運用された事例はなく、あくまで実証段階にとどまっています。ただし、東京都や大阪府をはじめとする自治体や民間事業者が、将来的な導入を見据えて「空の駅」を組み込んだ都市再開発計画を検討し始めているのも事実です。

また、地方都市においては、空飛ぶクルマが新幹線や高速道路に代わる中距離移動手段として活用される可能性があり、コンパクトシティ政策や地域交通ネットワークの再構築の中でも注目されています。




万博がもたらす社会実装の起点──未来社会への第一歩


出展:GMOインターネットグループ

万博での空飛ぶクルマのデモフライトは、技術の可視化に加え、社会的受容性を高める絶好の機会です。実際に機体が空を飛ぶ姿を目にすることで、行政・企業・市民社会の間で現実的な議論と共創が生まれ、制度整備や運用モデルの具体化にもつながります。

今後は、観光や離島輸送、災害支援といったリスクの少ない分野から導入が進むと見られており、万博を通じて得られるデータや知見は、日本における空飛ぶクルマの普及と制度設計の土台となるでしょう。さらに、国際社会に対して日本の技術力と先進性を示す場としての意義も大きく、関係者間のネットワーク形成や新たなビジネスチャンスの創出にも貢献します。

空飛ぶクルマは、まだ発展途上の技術であるからこそ、今回の万博での取り組みは導入初期の方向性を示す重要なステップとなるのです。

出展元

1 COMMENT

よっさんdsnmb

非常に素晴らしい解説です。
本来、こういう素晴らしい解説はオールドメディア、テレビ新聞ラジオの仕事ですが、我が国のオールドメディアは劣化著しく、このような素晴らしい解説を目にする事は殆ど無くなりました。

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