【再都市化ナレッジデータベース】←新規情報やタレコミはこちらのコメント欄にお願いします!

万博で外貨獲得加速!関西の観光産業が“1.8兆円の輸出産業”に変貌する、日銀大阪支店が近畿インバウンド統計会議の資料を公表

日本銀行大阪支店は、2025年の関西圏における観光消費額が「増加する見通し」であるとするレポートを公表しました。これは、2025年2月に開催された第11回「関西インバウンド統計会議」の資料に基づくもので、大阪・関西万博を契機とした訪日外国人旅行者(インバウンド)の急増と、それに伴う観光関連産業の課題を明らかにしています。観光需要が拡大する一方で、供給面では人手不足や価格上昇が課題となっており、持続可能な観光への転換が求められています。


インバウンド消費は1.8兆円 関西経済の中核産業に成長


近畿2府4県の域内総生産は全国の15.4%、人口と製造品出荷額等はともに16.3%を占めていますが、インバウンド消費は全国の27.1%に達しており、地域経済における重要度が年々高まっています。

2023年10月から2024年9月にかけての観光消費額は約1兆8,000億円に達し、自動車(約1兆3,000億円)や建設用機械(約1兆円)などの輸出産業を上回る水準にまで成長しました。関西圏における観光は、もはや外需を取り込む「第2の輸出産業」といえる存在となっています。


訪日客の支出額は平均23万円 欧米豪からの長期滞在が主導


2024年10月から12月における全国平均の訪日外国人1人あたりの旅行支出額は234,533円となり、2019年比で40.6%増加しました。宿泊費は81,819円(+72.4%)、飲食費は49,166円(+39.3%)、買物代は68,230円(+14.7%)と、全体的に大幅な上昇が確認されています。

とくに欧州の旅行者(イギリス・ドイツ・フランスなど)は392,399円と最も高く、アメリカ(365,379円)、シンガポール(289,840円)と続いており、欧米豪からの長期滞在型旅行が支出額の押し上げに寄与しています。欧州からの平均宿泊日数は14.6泊、アメリカでは10.7泊に達しており、滞在型・体験型旅行へのニーズの高まりが鮮明です。


中国人観光客は「爆買い」から「体験重視」へ 個人旅行が主流に


中国からの訪日旅行者1人あたりの支出額は269,617円で、そのうち買物代が118,783円と依然として高い水準を維持しています。とくに時計・カメラや宝石類などの高額商品が好まれており、消費の質的変化が顕著です。

旅行形態も変化しており、2024年には中国からの個人旅行者の比率が85%に達しました。団体ツアーから個人旅行への転換が進み、観光重視・高付加価値型の旅行スタイルが主流となりつつあります。


関西国際空港の発着回数が急回復 韓国・香港が牽引役に


2024年12月における関西国際空港の国際線旅客便発着回数は13,457回となり、前年同月比で約20%増加。新型コロナウイルス以前の水準に近づく勢いで回復しています。特に韓国・香港路線の回復が顕著で、訪日旅行の再開を牽引しています。

一方で、中国本土やハワイ、グアムなどの回復は依然として遅れており、航空会社の人手不足や燃料価格の高止まりが制約要因となっています。


宿泊施設は拡充進むも、深刻な人手不足が課題


宿泊施設は拡充傾向にあり、大阪府では約12万3,000室、京都府では約5万室の客室が稼働しており、2019年比で明らかに供給能力が増しています。今後も2026年までに関西圏全体で約2万5,000室の新規供給が予定されています。

しかし、宿泊・飲食サービス業における人手不足が深刻化しており、雇用人員判断DI(業界の人手過不足の指標)はマイナス50%を下回る水準で推移しています。この影響で、ホテルでは稼働制限、飲食店では定休日の導入が進むなど、供給制約が顕在化しています。各事業者は、IT導入や自動化、省人化などにより労働生産性を高める取り組みを進めており、観光産業全体での構造改革が求められる状況です。


万博開催で観光需要はピークへ 一方で国内旅行者の減少懸念も


2025年に開催される大阪・関西万博は、会期中に2,820万人の来場者を見込んでおり、うち350万人が海外からの訪問者となる予定です。訪日旅行意向者の72%が万博に関心を示しており、関西全体への観光周遊を後押しする効果が期待されます。

ただし、インバウンド需要の高まりによって宿泊価格が上昇すれば、関西圏外からの国内旅行者が宿泊を控える懸念もあります。JTB総合研究所の調査では、宿泊費の高騰により旅行を控えた人が52%に達しており、国内客と海外客の需要バランスが課題となりそうです。


高付加価値化と周遊促進で持続可能な観光を

日銀大阪支店は、観光の質的転換として「地域間の需要平準化」と「高付加価値化」の必要性を指摘しています。現在、観光消費の多くは大阪と京都に集中しており、奈良・和歌山・滋賀といった周辺地域への誘導が今後の課題です。

体験型観光や長期滞在プランの強化、地域資源を活かした高付加価値型の観光コンテンツ開発など、持続可能な観光戦略の実現が求められています。


万博後を見据えた関西観光の展望 広域連携で地域活性へ


2025年の大阪・関西万博は、関西観光にとって大きな転機となります。観光消費額の増加は確実視される一方、人手不足やコスト高といった供給制約が立ちはだかっています。

こうしたなかで、万博後を見据えた観光戦略の鍵となるのは、広域での地域連携と質の高い観光資源の創出です。関西全域をひとつの観光圏として捉え、均衡の取れた発展を図ることが、今後の経済成長に直結するものといえるでしょう。

 




出典元

  1. 日本銀行大阪支店「第11回 関西インバウンド統計会議 資料」
     https://www3.boj.or.jp/osaka/assets/data/news/news/ns20250310b.pdf
     → 関西観光消費額の見通し、インバウンド支出額、観光関連産業の課題と対策

  2. 日本経済新聞「関西のインバウンド消費、万博で拡大へ」2025年3月10日
     https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF05DLM0V00C25A3000000/
     → 万博効果による観光消費拡大見込み、関西国際空港の回復状況など

  3. 訪日ラボ(honichi.com)「日銀大阪支店が関西インバウンド統計会議資料を公表」2025年3月27日
     https://honichi.com/news/2025/03/27/kansai_inbound_2025/
     → 訪日外国人支出額の詳細、国別動向、宿泊施設の新規供給計画など

  4. 内閣府 地域経済分析システム(RESAS)/関西経済資料(PDF)
     https://www5.cao.go.jp/keizai3/shihyo/2025/0317/1373.pdf
     → 関西の域内総生産、人口、製造品出荷額などの基礎データ

  5. EXPO 2025 大阪・関西万博「来場者輸送計画(概要)」
     https://www.expo2025.or.jp/wp/wp-content/uploads/expo2025_raijyoushayusougutaihousin_03_honpen_231120.pdf
     → 万博の想定来場者数(総計・海外比率)、交通輸送に関する計画

  6. JTB総合研究所「旅行意識調査(2025年春)」概要版
     https://www.tourism.jp/research/survey/2025spring/
     → 宿泊費高騰による国内旅行者の旅行控え傾向に関するデータ

2 COMMENTS

しろきちさん

もはや観光は水物だと笑える時代では無くなったと言えそうです。
インバウンドという言葉が普通になる前から取り組んできたのが大きいように感じられます。

アリー my dear

インバウンドを中心とした観光は今や日本を支える基幹産業に成長しましたね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です