2025年7月1日、東京・芝浦に「フェアモント東京」が開業します。カナダ発の名門ラグジュアリーホテルブランドが、満を持して日本に初上陸するこのプロジェクトは、スイート29室を含む全217室、インフィニティプールやスパ、5つのレストランなどを備えた都市型フルスペックホテルとして注目を集めています。
しかし、このホテルの本当の話題は、豪華な設備や洗練されたサービスではありません。人々の心を最も惹きつけているのは、1匹のラブラドール・レトリバーです。その名はセリーン(SERENE)。フェアモント東京の公式スタッフとして、「最高ハピネス責任者(CHO:Chief Happiness Officer)」という肩書きを与えられた、特別な存在です。
犬がホテル従業員に?フェアモントが築いた20年の伝統

この取り組みは、奇をてらった演出ではなく、フェアモントホテルズ&リゾーツにおいてはれっきとした伝統的な制度です。きっかけは2001年、アメリカ・ボストンにある「フェアモント・コプリー・プラザ」にて、視覚障害者のためのガイドドッグとして活躍していたラブラドール・レトリバー「ケイティ・コプリー(Catie Copley)」が引退し、新たな役割としてホテルの“犬のアンバサダー”に就任したことでした。
以来、フェアモントは世界各地のホテルにおいて**「Canine Ambassador(ケイナイン・アンバサダー)」**制度を導入。カナダのバンフ・スプリングスやレイクルイーズ、アメリカのワシントンDCやシアトルなどで、ホテル専属のレジデントドッグが常駐しています。
彼らは単なるマスコットではなく、ゲストとの記念撮影やロビーでのふれあい、犬同伴のイベントのホストなどを通じて、言葉を介さずに“癒し”と“つながり”を提供するホスピタリティの一翼を担っています。
たとえば、ワシントンDCのフェアモントでは「ジョージー」という名前のレジデントドッグが、犬好きのゲストと交流する「ヤッピーハワー(Yappy Hour)」を定期開催しています。こうしたイベントは、滞在体験の質を高めるだけでなく、地域社会との接点にもなっています。
セリーンが“CHO”になるまで──東京で始まる新しい物語
フェアモント東京でも、この伝統はしっかりと引き継がれました。2024年、開業準備が進むなかで、ホテルは1匹のラブラドール・レトリバーと出会います。温和で社交的な性格が見込まれ、彼女はすぐにレジデントドッグとしての候補に挙がりました。
その後、ホテルによるトレーニングが施され、ジャパンケネルクラブ(JKC)による認定テストにも合格。そして正式に**「最高ハピネス責任者(CHO)」**として任命されました。
名前はセリーン(SERENE)。東京湾の静けさと、都市に息づく優しさを象徴するこの名のとおり、彼女は毎朝ロビーに立ち、ゲストを静かに、しかし確かに迎え入れます。タッチひとつ、視線ひとつで、言葉では届かない感情を交わす存在。それが、セリーンです。
「インクルーシブラグジュアリー」という思想──犬が体現するホスピタリティ
フェアモントが犬に役職を与える背景には、同社が重視する価値観があります。それが**「インクルーシブラグジュアリー(Inclusive Luxury)」**という考え方です。
これは、贅沢を一部の人の特権にせず、あらゆる背景を持つ人々が受け入れられ、包み込まれる空間を提供するという思想です。セリーンのように、言葉を持たない存在が“歓迎する側”に立つことで、誰もが安心できる空間が生まれる。その姿は、現代のラグジュアリーホスピタリティが進化している証です。
「ワンタスティック」──愛犬と一緒に楽しむ新しい宿泊体験

この思想は、ホテルのサービスにも反映されています。フェアモント東京は、愛犬との滞在をより特別なものにする宿泊プラン「ワンタスティック(Wontastic)」を用意しています。
2025年6月16日より予約が開始され、1泊1室2名様+犬1匹で税込235,422円〜。このプランでは、以下のようなサービスが提供されます。
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犬用ウェルカムアメニティ(スカーフ、おもちゃ、スナック)
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オーガニックブレックファスト&グルメディナー(犬専用)
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アンビエントラウンジ社製の名前入り高級ドッグベッド
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ターンダウンサービス(犬も対象)
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セリーンのぬいぐるみ「セリーン Jr.」と家族向けのギフト
これらは、ペットを「連れて行く」存在ではなく、「家族の一員」として迎えるための構成です。人間主体ではなく、犬も滞在の主役になれる──そんな体験が用意されています。
ラグジュアリーと社会貢献──動物福祉との連携
さらにこのプランの一部は、社会貢献にもつながっています。「ワンタスティック」プランの売上の10%は、NPO法人Tier Heim KOKUAに寄付されます。
この団体は、虐待や放棄などで保護された動物たちに医療や保護を提供する非営利組織です。セリーンの存在を起点に、宿泊が動物福祉への支援に直結する構造は、“贅沢”が“共感資本”へと転化する先進的な取り組みと言えるでしょう。
最後に──「ホテルは誰を迎えるか」こそがラグジュアリー
フェアモント東京は、豪華な設備と一流のサービスを備えたホテルであることは間違いありません。しかし、もっとも印象に残るのは、**その空間に込められた“気持ち”**ではないでしょうか。
ロビーで出迎えるのは、人間のスタッフだけではありません。1匹の犬が、穏やかな眼差しでゲストを歓迎します。
都市と自然、豪華さと優しさ、人と動物の交差点。
その中心にいるのが、ラブラドール・レトリバーのセリーン。
その肩書きは、**「最高ハピネス責任者(CHO)」**です。
【出典元】
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フェアモント ホテル&リゾート 公式サイト(https://www.fairmont.com)
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NPO法人Tier Heim KOKUA(https://tierheim-kokua.com)
なんとも“ワン”ダフルなお話で、よっしゃ!、東京が犬なら、大阪は猫で勝負だ!!、2つ合わせて「ニャンともキャッと驚くワンダフルなお話」となれば楽しくて面白いかも^^;
そう言えば米海軍の空母ハリー・S・トルーマンが中東へ派遣される時に乗組員たちの精神的なケアの為に犬を「ファシリティドッグ」として乗艦させています。
人間の一番古い相棒と言われる犬。
穏やかなホテルステイでも激しい戦場でも(日本では殆ど報じられませんが、中東海域での米海軍とイエメンのフーシー派との戦いは非常に苛烈になりつつあり、世界最強の米海軍が優勢ではあるのですが、米海軍駆逐艦が第二次大戦以来最も激しい水上戦闘をしたり、空母が攻撃を避ける為に極めて激しい急旋回をして艦上の艦載機が水中に落下したりなど決して楽観視は出来ない状況です)、犬は人間の頼れる相棒なんですね。