建設設計事務所の「MVRDV」が手がけた、台湾・台南の都心部のショッピングモール跡地を公園に変える再開発、Tainan Spring(台南スプリング)が完成し2020年3月にオープンしました。この計画は、都心にあったモールの廃墟を若い木々に囲まれたラグーンに変え、植栽を緑豊かなジャングルへと成長させ、都市を自然やウォーターフロントと再び結びつける再開発計画です。
【出展元】→MVRDV>TAINAN SPRING
台南市政府の都市開発局の委託を受けて完成したマスタープランは、台南運河の東側の「T軸」を蘇らせ、旧チャイナタウンモールの跡地と1キロに及ぶ海安路を一体化させる新しい都市景観を生み出しました。
台南の水路ネットワークは17世紀以来、都市の海洋と漁業の基盤として機能していました。1980年代には水路の重要性が低下し、台南運河に隣接する旧港の上にチャイナタウン・モールが建設されましたが、オンラインショッピングが実店舗に取って代わりつつある現在、大型商業施設も活力を失ってしまいました。
完成した台南スプリングは、使われなくなったショッピングモールにどのような解決策があるかを示しています。チャイナタウンのモールは撤去され、細心の注意を払ってリサイクルされ、循環型経済の革新的な例となりました。
モールの地下駐車場は都市のプールとなり、周囲には青々とした地元の植物が植えられました。
プールは四季折々の集いの場となるように配慮されており、雨季や乾季に応じて水位が上下し、暑い時期にはミストで気温を下げ、夏場の冷房の使用を減らす事が出来ます。
この空間には、遊び場や集会スペース、パフォーマンスのためのステージなどがあります。建物のコンクリート躯体を巧みに解体することで、いくつかの空きスペースが残されており、将来的にはショップやキオスクなどの施設にコンバーションする事が出来ます。また、地下2階の構造の一部がガラス張りの床になっており、台南の歴史をより深く知ることができ、台南の重要な歴史の一部であるショッピングモールの跡地を知ることができます。
MVRDVの「Tainan Spring」計画のポイントは街に緑をもたらすことでした。その為、公共広場と海安路の両方に大規模な植栽が導入されました。この植栽は地元の植物種を利用しており、台南の東側にある自然の緑豊かな風景を再現するように、樹木、低木、草などの植物が何層にもわたって植えられています。
これらの植物床の密度は、店舗の前面に応じて変化し、人が必要とする場所には人のためのスペースを、その間には植物のためのスペースを設けています。工事が完了した今、植栽されたばかりの緑が徐々に成長していき、イメージしていた緑豊かな庭園になるまでには、さらに2~3年の歳月が必要となることでしょう。
TAINAN SPRING(河樂廣場)は、都心にあったショッピングモールの廃墟を解体し、ラグーンを中心とした都市公園として再生する注目に値するプロジェクトです。コンクリートの躯体の残し方が絶妙で、大きなジャングルジムの様な空間は子供達にとっては秘密基地の様に見えるのではないでしょうか。日本でも都市公園内の親水空間は見受けられますが、ここまで大規模で子供達の水浴を前提とした空間設計は見た事がありません。
TAINAN SPRINGは、台南市で今年完成する2つのMVRDVプロジェクトのうちの1つで、現在、市の東側では台南卸売市場が建設の最終段階に入っています。こちらの施設も非常に斬新な設計で、完成後は注目を集めそうです。