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兵庫県企業庁が三木市に5G移動通信システムを備えた次世代型産業団地の開発を計画!「ひょうご情報公園都市」の北側約100haを新たに造成

 先進的な工場のイメージ

兵庫県企業庁、は第5世代(5G)移動通信システムを備えた『次世代型産業団地』の開発を、兵庫県三木市と計画しています。場所は、山陽自動車道三木東インターチェンジに近接する「ひょうご情報公園都市」の北側約100haで2026年の分譲開始を目指しています。事業費は100億~150億円を見込んでおり産業団地としては兵庫県内有数の規模になります。

【出展元】
三木に5G産業団地計画 兵庫県企業庁、26年分譲目指す

 

 

 

 

産業団地の造成や分譲を担う兵庫県企業庁は、山陽自動車道・三木東インターチェンジの東側に「ひょうご情報公園都市」を造成し2003年~2015年にかけて57haを分譲してきました。これまで20社が進出し、約1700人が働いています。

「ひょうご情報公園都市」の分譲が完了した為、山陽道を挟んだ同公園都市の北側に、5G対応の新たな産業団地の計画を打ち立てました。新型コロナウイルスの感染拡大を受けたサプライチェーン(部品の調達・供給網)の国内回帰や、災害時でも事業を継続できるよう拠点を分散しておきたい企業のニーズを取り込む方針で企業のニーズを踏まえ5G通信環境を整える事で、製造業の自動化推進や医療系企業の進出を期待しています。

同庁は2021年度当初予算案に次世代産業団地の基本設計費を中心に2億円を計上。道路や上下水道のインフラ整備を求められる三木市も、地形測量や地質調査費など3600万円を市の21年度当初予算案に盛り込みました。21年度中に両者で基本合意の締結を目指予定です。

 

 

 

5G(第5世代移動通信)と「スマートファクトリー化」



5G対応の次世代産業団地・・と言われても今ひとつピンとこないと思います。僕なりにかみ砕いて説明して行きたいと思います。まずは肝となる5Gの概要から解説します。

5Gは正式名称を第5世代移動通信システムといい、現在主流となっている4Gに置き換わる次世代のシステムです。移動通信の技術は、1980年代に発売されたショルダーフォンの通信規格である1G(第1世代移動通信システム)から進化を繰り返し、2020年代に第5世代に到達しました。

5Gには高速大容量・低遅延・多接続という3つの特徴があり、4Gと比較すると通信速度は20倍、遅延10分の1、同時接続台数は10倍に増加すると考えられています。現在、この特性を工場に導入し「スマートファクトリー化」を進める動きが加速しています。

 

 



超高速化:
通信速度が速くなり、4Kや8Kのような解像度の高い動画配信をはじめ、容量の大きなデータをストレスなく送受信できるようになります。超高速化により、これまで処理限界でIoT化が進められなかったような箇所にも、センサなどの導入を進めることができます。

超多数同時接続:
一定の面積内においてより多くのデバイスの同時接続が可能になります。超多数同時接続により、設備同士のネットワーク化がさらに拡大し、これまでよりも多地点のデータを同時処理できるようになります。

超低遅延:
文字通り通信の遅延が非常に短縮されます。情報の伝達遅延がほぼ無くなれば、産業用ロボットや工作機械などの設備をリモートで稼働させるのはもちろん、生産管理に用いるセンサからの情報もリアルタイムに近い速度で処理できるようになります。超低遅延により、従来の4Gでは不可能だったミッションクリティカルな領域への対応が可能になります。

 

5Gを工場に活用する利点

 



5Gの3つの特徴、高速大容量・低遅延・多接続を用いると、工場にどんなメリットがあるのでしょうか?以下箇条書きでメリットを上げて行きます。

①配線を減らし自由な生産ラインを作れる

製造業で近年ニーズが高まっている「変種変量生産」に対応するためには、製造ラインを柔軟に変更しなければなりません。しかし、機械同士の配線が障壁となり、自由な機械配置ができない工場が多くあります。

5G標準化団体の3GPPおよびITU-Rは、5Gは有線と比較して99.999%の送信成功率を満たすよう定めており、配線がなくても安定した通信を実現できるとしています。そのため、ケーブル配線を省略でき、マーケットの需給状況に合わせて生産ラインを常に柔軟に動かせます。さらに、今後IoT化を進めるときの配線工事もいらないため、配線コストも削減可能です。

 

②大容量データも簡単に処理できる
5Gの特徴のひとつである「高速大容量」により、大規模データを簡単に処理できるようになれば、大容量データの送受信が可能になり、工場の管理能力アップを望めます。例えば、保管してある在庫の量・内容・位置を詳細に把握でき、在庫管理が効率化できます。加えて、データの処理能力が上がるため、高精細な画像処理を通し、不良品の検出がより正確に行えるようになります。

③リアルタイムに遠隔地との情報共有ができる
5Gを活用すれば、高精細な画像・動画の送受信も簡易に行えるため、遠隔地との情報共有をリアルタイムで行えます。

例えば、別工場にいる熟練技能者が材料の細かな仕上げ作業を動画で確認し、適宜指導するといったことも実現するため、距離や時間に関係なく作業支援を行うことができ、工場の省人化につながります。また、別の現場をリアルタイム映像で確認できる、安全性を考慮して遠隔でロボットを操作できるといった点も、5Gで受けられる恩恵のひとつと言えます。

 

④多くの機械を同時接続できる
5Gは1km²で100万台の同時接続を実現できます。この特性を活かせば、工場のさまざまな機械・装置を1つのネットワークで動かせるようになります。Wi-Fiでは多数のアクセスポイントが必要になりますが、5Gは1つで多数の機械を制御できるため、AGV(自動搬送用台車)を複数導入しても、接続が途切れることなくスムーズな搬送ができるようになります。

 

5G導入による「スマートファクトリー化」


この様に、製造業が5Gを活用することで、工場内の設備機器や人手による作業を自動化し、IoTを活用して集めたデータを収集して分析することで、工数や作業のムダを省いたり、製造した製品を迅速に流通へと受け渡せるようにしたりする仕組みを構築できます。これまで人が行っていた業務を機械や通信設備に委ねることで、働き方や業務のあり方の大規模な変革も可能となります。

5Gは2020年から都市部を中心に導入が始まっていますが、製造業への本格的な導入にはコスト負担が重く時間がかかることが予想されています。しかし、早い段階から5Gによって得られるメリットを理解し、早めに導入を計画しておくことがスマートファクトリー化の実現に欠かせないポイントとなります。5G未来の製造業を大きく変化させる可能性があるテクノロジーと言えます。

 

5Gを活用出来る先進的な企業をいち早く集積させる戦略か?



三木市の次世代型産業団地に戻りますが、5Gの通信インフラを備えた『次世代型産業団地』の造成にいち早く着手する事で、先進的な企業を勧誘し、地域競争力の強化に繋がる可能性があります。早い段階で5Gにメリットを見いだせる企業体は先進的である可能性が高くこれらの企業が集積すると5G対応スマートファクトリー集積エリアとして認知されるかもしれません。

兵庫県企業庁や三木市がその辺りまで見据えて、『次世代型産業団地』を企画しているのであれば、非常にクレバーな戦略だと思います。

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