日本国際博覧会協会は10月7日、大阪・関西万博の運営収支が 230億~280億円規模の黒字になるとの見通しを発表しました。運営費は当初計画の809億円から約1.4倍の1160億円へ膨張し、一時は赤字懸念が強まりました。しかし、入場券販売の好調や公式キャラクター「ミャクミャク」の人気を背景としたグッズ収益が想定以上に伸び、結果的に黒字確保が確実となりました。黒字額は2005年の愛知万博(129億円)を大きく上回り、万博史上でも突出した規模に達する見込みです。
収益の内訳
協会発表によれば、黒字の柱となったのは 入場券収入です。10月3日時点で販売枚数は2206万枚に達し、収支均衡ラインとされた1800万枚を大きく突破。これにより約200億円の増収が実現しました。最終目標とされた2300万枚には届かない可能性がありますが、黒字確保には十分な水準です。
さらに、グッズ販売やその他収入で約30億円の上振れがありました。会場内外に展開されたオフィシャルストアやEC販売を通じて、8月末時点で公式ライセンス商品の総売上は約800億円に到達。特に「ミャクミャクぬいぐるみくじ 黒ミャク」やカプセルフィギュアが人気を集め、JR西日本のICOCA(イコちゃん)やサンリオとのコラボ商品も好調でした。こうしたキャラクター人気が収益を押し上げました。
一方で、会場周辺に駐車場を設け、シャトルバスで来場者を輸送する「パーク&ライド」事業は約50億円の赤字を計上しました。しかし、全体では経費削減効果が50億円規模に達し、赤字を相殺する形で収支全体を黒字方向に引き戻しました。
黒字達成の背景

前売り期には販売不振が続きましたが、夏以降はSNSを通じた現地体験の共有が拡散し、来場者数が急増しました。直近も週あたり約169万人で推移し、累計はすでに2680万人を突破。最終的には2900万人に迫る可能性も指摘されています。来場者アンケートでは 75.6%が「もう一度来たい」と回答しており、高い満足度がリピーター需要を喚起しました。
特筆すべきは、開幕前から続いたマスメディアによる執拗なネガティブ報道を跳ね除けての黒字化です。初期の来場者数が低調だった要因には、マスコミが作り出した「ネガティブな空気」が大きく影響していたと見られます。実際、会期末になるにつれ、リアル社会でも「メディアがメチャクチャ言っていたから行く気にならなかった」「時期を逃した」「結局、メディアの情報は当てにならない」といった声も多く聞かれました。

そして何より、マスコミが形成した世の中のネガティブな空気を、SNSを通じた現地体験のポジティブな情報が反転させたことは、黒字化と並んで 歴史的な転換点といえるでしょう。来場者自身が発信するリアルな情報が、従来のマスメディアによる評価を上書きし、万博の実像を広げたことは、日本の情報流通における象徴的な出来事です。
今後の課題と展望

黒字剰余金の具体的な使途は未定で、今後、国や大阪府市、経済界による協議を経て決まります。会場の象徴である大屋根「リング」は約200mを保存し、大阪市営公園として整備予定。維持費は建設費予備費から充てられる見込みです。協会は2028年3月に解散予定であり、最終的な収支確定はその時点以降となります。
まとめ
大阪・関西万博の黒字規模は、2005年の愛知万博(129億円)を大きく上回ると同時に、2000年のハノーバー万博が記録した約1200億円の巨額赤字と鮮やかな対照を成します。今回の成果は、単なる来場者数や収支改善にとどまらず、情報空間における「空気の反転」とセットで語られるべき歴史的な出来事となりました。
出典元
-
日本国際博覧会協会「理事会資料」2025年10月7日 【20251007_rijikaisiryou.pdf】
-
日本経済新聞(2025年10月7日付)「大阪・関西万博、黒字見込み」
-
読売新聞(2025年10月7日付)「協会、最大280億円の黒字発表」
-
朝日新聞(2025年10月7日付)「万博運営収支、チケット・グッズ販売が支え」
-
NHKニュース(2025年10月7日放送)「大阪・関西万博、黒字見通しを協会が公表」