2025年4月13日に開幕した大阪・関西万博。
そのなかでも、インド館(正式名称「バーラト館」)は、開幕前から異彩を放つ存在として注目を集めてきました。想定を超える展開、誰もが思わず笑顔になるような出来事──。本記事では、インド館の経緯、現地の盛り上がり、そして今後の展望を整理していきます。
最初からただならぬ気配──インド館、波乱含みのスタート
インドは当初、独自設計・施工による「タイプA」パビリオンでの参加を予定していました。テーマは世界遺産「アジャンター石窟群」。大胆で個性的なデザインが計画されていましたが、2024年6月、建設の大幅な遅れが発覚。急遽、日本側代行による「タイプX」(簡易型)施工に切り替わることとなりました。
本来なら迅速な施工が期待されるタイプX。しかし、2025年4月9日時点でも現場は、足場や配線がむき出しのまま。インド側は「数日で完成」と楽観的な見通しを語ったものの、施工を担う日本企業は「作業時間制限が厳しい」と現場の苦労をにじませていました。インド館は、開幕前からすでにただならぬ注目を集める存在となっていました。
ただならぬ注目──現地で高まるインド館への期待

4月13日、万博開幕当日。各国のパビリオンが続々と公開されるなか、インド館の周囲には自然と人だかりができていました。
「これが噂のインド館か」と話す声。
そっとカメラを向ける来場者たち。
参加テーマにはインドならではの精神文化や伝統が反映される予定とされていましたが、詳細はまだ明らかになっていませんでした。煌びやかなパビリオンが並ぶなかで、インド館だけが醸し出す、どこか異なる空気感。来場者たちは、このあとインド館が見せる“予想を超えた展開”を、まだ知らずにいました。
インド感、爆発──超巨大ビジョンとオブジェで話題独占

4月17日以降、インド館の現場は大きく動き出します。夜間工事が加速し、18日頃には花びら型オブジェが次々と設置されました。そして、4月22日。屋上には超巨大なLEDビジョンが稼働を開始。踊る人々やインド国旗の映像が夜空に映し出され、前庭には巨大なバンド(手)のオブジェも登場しました。簡易型だったはずのタイプXとは思えないスケール拡張。来場者たちは「やりたい放題!」「これがインド感!」とSNSで一斉に盛り上がり、インド館は一躍、万博最大級の注目スポットとなりました。
ネットと現地が沸騰──未完成なのに愛されたインド館

工事中のインド館は、SNSで「これぞインド!」「サグラダ・ファミリア状態」と話題に。「なぜか工事中だと安心する」「作業員の『ノープロブレム、サー』が最高」と、未完成ぶりを文化的魅力として受け止める声が広がりました。
現地では絶賛工事中にもかかわらず、インド館前に人が集まり、「これはこれでインドっぽくて好き」と未完成の姿が写真スポット化。「長く見守りたい」とサグラダ・ファミリアになぞらえる投稿も多く、温かな応援ムードが漂っています。一方で、花びら型オブジェの増加やLEDビジョン点灯など、進捗を喜ぶ声も続出。「今週中には開館できるかも」「夜のライトアップが楽しみ!」と、完成後への期待も高まっています。
なお、現場の施工を担う日本の建設会社も、厳しい作業時間制限や文化の違いに直面しながら、夜間作業を含めて懸命に対応しており、「大変な中でもよく頑張っている」と労いの声もSNSで多く寄せられています。
関西テレビ『旬感LIVEとれたてっ!』でも「きょうのインド館」として連日中継され、現場の盛り上がりをさらに後押ししています。
今後の展望──5月上旬開館へ

インド館は、未開館パビリオンのなかでは比較的工事が進んでおり、5月上旬の開館が現実的とみられています。ただし、最終調整や細部の仕上げによってはさらなる遅れの可能性も指摘されています。館内では、アジャンター石窟群をテーマにした古代文明・精神文化の展示、床面に施される伝統的な幾何学模様「コーラム」、屋上のLEDビジョンを活用した夜間演出が予定されています。また、併設予定のレストランでは、南インド料理や本格ビリヤニの提供が検討されており、こちらも注目されています。
まとめ──インド館が放つ「未来への光」

インド館(バーラト館)は、予定どおりに進まない現実を、ひとつの物語に変えました。未完成でも、マイペースでも、誰かに笑われたとしても──そのすべてを、受け止めて、愛されて。
工事中の姿すら人々を惹きつけ、期待を集める存在となったインド館。そこには、「完璧でなくてもいい」「予定外こそ、面白い」という、多様性を肯定する力強いメッセージが宿っています。これからインド館は、完成へ向かってもう一度、大きな変化を遂げるでしょう。そのとき、私たちはまた新しい感動と出会うはずです。
未来に向かって、インド館は、静かに、しかし確かに、その光を放ち始めています。