~日立・KDDIの「Mirai Meeting」、クボタの次世代農業ロボット、商船三井の水素船など、多彩な企業が描く未来の都市像~
2025年4月に開幕する大阪・関西万博。会場の西ゲート近くにそびえ立つ巨大な建物が「未来の都市」パビリオンです。筆者も実際に訪れてきました。最初は、あまりに多くの展示が並ぶ空間に圧倒され、正直「これはどういう構成なんだろう?」と戸惑いました。しかし、一つひとつの展示に足を運ぶうちに、自然と見えてきたのが「Society 5.0」というキーワード。それぞれの展示は、ただの技術紹介ではなく、未来の暮らしを自分ごととして考える入り口になっていました。
Society 5.0とは何か?そして、なぜ今重要なのか

「Society 5.0(ソサエティ・ファイブ・ポイント・オー)」とは、日本が提唱する未来社会のビジョンです。AIやIoT、ロボティクス、ビッグデータといった先端技術を活用して、経済発展と社会課題の解決を両立させることを目指します。

狩猟(1.0)、農耕(2.0)、工業(3.0)、情報(4.0)と進化してきた人類社会において、その次にくる「超スマート社会」がSociety 5.0です。高齢化、気候変動、過疎化……さまざまな課題に対して、「誰もが活躍できる、人にやさしい社会」の実現を目指しています。
巨大パビリオンに12社が参加、「都市」を構成するような展示群

「未来の都市」パビリオンは、博覧会協会が展開する共通展示に加え、日本を代表する12の企業が個別展示を行う“マルチテナント型”の構成。展示面積は会場内でも最大級で、印象的な外観は再生可能素材を活用しています。

万博で単独パビリオンを構えるには高いハードルがある中、1つの巨大建屋を共有するこのスタイルは効率的かつ象徴的。まるで現代都市のように、多様なプレイヤーが共存し、連携して一つのビジョンを紡いでいます。
クボタや商船三井、川崎重工も──未来社会の断片を垣間見る

会場内を歩いていると、それぞれの企業が放つ未来像の断片が次第に鮮明になっていきます。農業、エネルギー、モビリティ――異なる分野が描き出す未来は、それぞれが独立しているようでいて、どこかで“都市”という大きなテーマのもとに交差しているようにも感じられました。中でも特に印象に残ったのが、以下の3社の展示です。
- クボタ「Kubota Germination Lab」:展示空間は「未来の農業研究所」のような雰囲気。注目は、完全自律型の農業ロボット「Type:V」と「Type:S」。Type:Vは用途に応じて変形し、多様な農作業に対応。Type:Sは傾斜地や不整地を自在に移動します。映像と連動したシミュレーションゲームでは、来場者が“未来の農業者”として意思決定を行う場面も。食と農がどう変わるかを、リアルとバーチャルの融合で直感的に体験できる展示でした。

- 商船三井「Wind Hunter」:模型と映像が一体となった、まさに“風と水素のショーケース”。全長約4m・高さ約3mの模型にうちわで風を送ると、帆が動き、大型スクリーンに水素製造と航行の様子が映し出されます。シンプルながらも、「自分の動作が未来を動かす」という仕掛けが秀逸で、エネルギーの流れを“体感”できる数少ない展示のひとつです。

- 川崎重工「CORLEO」&「ALICE SYSTEM」:展示エリアに足を踏み入れた瞬間、SF映画のワンシーンに迷い込んだかのような世界観が広がります。四足歩行モビリティ「CORLEO」は、未舗装地や自然環境の中でも軽快に動き、まるで乗馬のように身体で操るスタイル。加えて、「ALICE SYSTEM」は、出発地から目的地までの移動を、複数のモビリティが自動連携するというコンセプト。実物大のALICE Railに乗り込み、未来の移動体験を五感で味わえる演出も秀逸でした。

どの展示も、単なるテクノロジー紹介ではなく、「この技術があることで、社会や暮らしがどう変わるか?」という視点を強く感じさせてくれました。都市の一部を担う“機能”として、農業もエネルギーも交通もつながっていく。そのビジョンの一端を垣間見ることができました。
来場者参加型で体感する未来社会

「未来の都市」パビリオンの最大の特徴は、展示がすべて体験型であること。来場者はただ見るだけでなく、自分の選択や行動によって“未来”を動かす参加者となります。例えば、日立製作所とKDDIが共同開発した「Mirai Meeting」では、2035年の子どもたちからのSOSを受け取り、「食と健康」「労働と学習」などの課題解決策を自ら選んで体験できる「Mirai Theater」と、ゲーム感覚で課題解決に挑戦する「Mirai Arcade」が展開されています。さらにKDDIはメタバース空間に「バーチャル未来の都市」も開設。物理的な制約を超えて体験できる未来社会を提案しています。
Society 5.0を可視化する“都市”のような展示構成

展示は単体でも完成度が高いですが、全体として眺めると、それぞれがつながりあい、未来の都市の風景を構成しているように感じられます。都市の基盤となるインフラやモビリティ、エネルギーの循環、食料生産、さらには災害対応や建築素材にいたるまで——。それらが「Society 5.0」の実装例として空間的に配置され、来場者が歩きながら都市全体を“探訪”しているような感覚を味わえるのです。
終わりに──未来は、展示の中ではなく、自分の中に芽生える

「未来の都市」パビリオンは、最先端技術を“見る”だけでなく、自らの思考を刺激し、「未来ってなんだろう?」と考えるきっかけをくれる場所でした。最初は戸惑いながら入場した筆者も、出る頃にはすっかり夢中になり、展示を通して見えてきた未来社会のかたちに、少しワクワクしている自分がいました。12の企業が共演し、技術と想像力を交差させるこの場所は、まさにSociety 5.0を象徴する都市の縮図のようです。都市が多様な人々の営みによって形づくられるように、このパビリオンも来場者の“体験”によって完成します。
都市の未来が気になる方も、ちょっと疲れた現代を見つめ直したい方も。ぜひ一度、この“未来社会のショーケース”を訪れてみてください。きっと、何かが芽生えるはずです。
情報出典元一覧
- 2025年日本国際博覧会公式サイト:https://www.expo2025.or.jp/
- 「未来の都市」パビリオン紹介ページ:https://www.expo2025.or.jp/future-index/future-life/city/
- 株式会社クボタ ニュースリリース:https://www.kubota.co.jp/news/
- 株式会社商船三井 ニュースリリース:https://www.mol.co.jp/pr/
- 川崎重工業株式会社 ニュースリリース:https://www.khi.co.jp/news/
- KDDI株式会社 プレスリリース:https://news.kddi.com/
- 株式会社日立製作所 ニュースリリース:https://www.hitachi.co.jp/News/
- 経済産業省 万博担当「未来の都市」紹介記事(政府広報)
通期チケットって、前売りチケットにカウントされてるんですかね???
多くの画像や映像が出回ってきましたね。
これは楽しみしかありません。ネガティブキャンペーンがなければ予想以上の入場者数が見込めると思います。関西の人は通期チケットがお得に感じるのでは。
子供の頃、仮病で休んで親とポートピア博覧会に行きましたが、翌日クラス中にバレていました。
仲の良い友達にだけ話したのに、その友達がわざわざ違う学年の私のクラスに言いふらしにきたとあとで聞きました。
その友達は博覧会には行っていません。
こどもだったので、うれしさが先に立ち、気遣うことが出来なかったなあ。
子供たちの学校行事を中止した市があるのは残念。
安全性を考慮してのことかもしれませんが、「そらみたことか」と言われるのを恐れているのかもしれませんね。
子供を預かる立場としては理解できる部分もあります。
このような悲しい出来事が繰り返されないことを願います。