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大阪・関西万博『大屋根リング』、北東200m保存で検討会合意、黒字分を活用し市営公園へ、レガシー継承の象徴に。


大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」について、閉幕後の保存方法を巡る検討会が9月16日に開かれ、北東部分約200メートルを原型に近い形で残し、大阪市が周辺を市営公園として整備・管理する方針で合意しました。改修と10年間の維持に必要な費用は約55億円と見込まれ、財源には万博運営費の黒字分や国の交付金、府市の負担、経済界の寄付などを組み合わせる方向で調整されます。

首相官邸での要請と政府の姿勢


同日午前、首相官邸で開かれた万博関係者会議には石破茂首相や吉村洋文知事らが出席しました。吉村知事は「万博会場で生まれた黒字を、再び多くの人に楽しんでもらえるレガシーに還元したい」と述べ、保存費用に剰余金を充てるよう求めました。石破首相は「成果を検証し後世に伝えることは私たちの責務だ」と強調。有識者を交えた検討枠組みを設ける考えを示しましたが、費用の扱いには言及しませんでした。

検討会の合意内容


午後に大阪市内で開かれた検討会には吉村知事、横山英幸市長、日本国際博覧会協会、経済界の関係者が出席し、200メートル部分を人がのぼれる形で保存することで合意しました。横山市長は「民間事業者による保存は現実的でなく、市として新たな提案をした。都市公園として残す方針が固まったことをうれしく思う」と述べました。協会の小野平八郎副事務総長も「原型をとどめる形で残す意義は大きい」と評価しました。

開幕前の論調と評価の転換

大屋根リングは全長約2キロ、高さ最大20メートル、建設費350億円の世界最大級木造建築で、ギネス記録に認定されました。しかし開幕前は「全く不要」「税金の無駄」「350億円かけて壊すだけ」と批判的な報道が相次ぎ、SNSでも「世界一高い日傘」と揶揄されていました。ところが開幕後は遮光・雨よけといった実用性、会場の隅々まで人々を導く歩行者動線などの機能性、「多様でありながら、ひとつ」を体現する空間の象徴性が高く評価され、来場者調査でも「圧倒的なスケールに感動した」「最も印象に残った施設」として支持が急増。保存を求める署名活動も展開され、世の中の空気は一変しました。吉村知事も「当初は批判だらけだったが、原型に近い形で残るのは大きなハードレガシーになる」と述べています。

納税者への問いかけ

保存には大きな期待と課題が共存します。

メリットは、世界最大級の木造建築を残す象徴性、観光資源としての集客効果、伝統工法の継承です。一方でデメリットは、55億円規模の改修・維持費、公費負担のリスク、来場者減少による「負の遺産化」、安全基準対応の難しさが挙げられます。専門家からも「位置づけを明確にしなければ愛されず、負の遺産になりかねない」と警鐘が鳴らされています。

今回の合意は「一部保存」という妥協点ですが、費用対効果の判断は納税者に委ねられます。黒字分の活用で負担感を抑えられるのか、それとも維持費が新たな重荷となるのか。大屋根リングは未来への投資か負の遺産か。その評価は閉幕後の活用次第で決まります。






出典元

  • NHK「万博 大屋根リング200m保存で合意 周辺を大阪市営公園に」(2025年9月16日)

  • 産経新聞「万博の大屋根リング 一部の現状保存へ大阪市が公園化して管理 市が提案」(2025年9月16日)

  • 朝日新聞「万博黒字『リング保存に活用を』 吉村大阪府知事、石破首相に要請」(2025年9月16日)

  • 毎日新聞「大屋根リング、一部保存で合意 万博黒字分を活用、周辺は公園緑地に」(2025年9月16日)

  • 読売テレビ「万博“大屋根リング”閉幕後は『市営公園』として市が管理する案を軸に検討」(2025年9月11日)

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