『世界のベストシティ2026』大阪は23位で評価上昇!ビジネス領域の強化と都市ブランディング発信が今後の課題に

大阪発 — 世界的な都市ブランディング企業レゾナンス・コンサルタンシーが2025年11月5日に発表した「世界のベストシティレポート 2026年版 」で、大阪が世界250都市以上の中から第23位にランクインし、国際的な都市としての地位を向上させました。日本からは東京(4位)に次ぐ2都市目のトップ100入りとなります。

世界が認める「食の都」大阪

レポートによれば、大阪の最大の強みは食文化です。レストラン部門で世界22位を獲得し、たこ焼きやお好み焼きといった庶民的な粉もの文化から、堂島エリアや新規開業したフォーシーズンズホテル大阪の高級レストランまで、幅広い食の魅力が評価されました。

「食は依然として大阪の主役です」とレポートは指摘。ミシュラン星付きレストランの増加や、カウンター席・シェフズテーブルでの臨場感ある食体験が、国際的な美食家たちを惹きつけています。

万博が転換点に

2025年大阪・関西万博の開幕は、大阪の国際的プレゼンスを大きく押し上げました。夢洲では大阪メトロ中央線の延伸により直通アクセスが実現し、隣接地では、2030年秋の開業に向けてMGM大阪の建設工事が進行中。万博効果もあり、家族向けアトラクション部門で世界19位にランクインする原動力となりました。Googleトレンドでも世界17位を記録し、「家族旅行」や「大阪観光」に関連する検索需要が急増しています。

USJ拡張で観光力を強化

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)では、スーパー・ニンテンドー・ワールドの第2エリア「ドンキーコング・カントリー」が2024年12月に開業。任天堂IPの世界的人気を背景に、さらなる集客力を発揮しています。インバウンド需要の取り込みを強化し、関西全体の観光経済を押し上げています。実際、2025年度上半期の関西国際空港における国際線旅客便の発着回数は76,070回と前年比121%を記録し、年度上半期として過去最高となりました。

うめきた2期で都市開発が進展、自転車都市としての評価も

大阪駅北側では、「グラングリーン大阪」としてブランド化された、うめきた第2期開発が進行中です。既に開園した「うめきた公園・サウスパーク」に加え、2027年春頃には、ノースパーク(公園の残りのエリア)がオープン。グランフロントや梅田スカイビルが林立する大阪駅前に約4.5haの巨大な都市公園が誕生します。

意外な強みとして、大阪は世界トップ20の自転車都市ランキングにも入りました。中之島や淀川の河川敷に安全なサイクリングルートを整備し、拡大する自転車シェアリングプログラムと連携。持続可能な都市交通への取り組みが評価されました。

総合指標で高得点

レゾナンス・コンサルタンシーの独自指標「Place Powerスコア」は、世界270都市以上を対象に、「居住性」「愛好性」「繁栄度」の3つの柱で評価しています。


指標 大阪の順位 特徴
住みやすさ(Livability) 世界21位 交通・住宅・生活利便性
愛されやすさ(Lovability) 世界24位 食文化・ホスピタリティ
繁栄度(Prosperity) 世界52位 経済・教育・雇用環境

同社の評価は、統計データと人々の印象を融合した独自手法によるものです。空港の接続性や大学数、失業率などの客観データに加え、住民調査やSNS上の反応(Google、Facebook、Instagramなど)を総合解析。リアルな都市イメージを数値化しています。

観光・不動産・経済開発の分野で世界的に知られるレゾナンス社は、人口100万人以上の都市を対象に、「住む・訪れる・投資する」価値を可視化。都市の評判やブランド力を多面的に数値化することで、最も精緻な都市ランキングとして国際的に評価されています。

クリス・フェア社長兼CEOは次のように述べています。


「World’s Best Citiesランキングは、生活し、訪問し、投資するための上位100都市を特定するため、世界中の250都市以上を多角的に評価しています。」

このランキングは観光だけでなく、雇用や投資の流入とも強く相関する“都市競争力指標”として位置づけられています。

大阪のライバルはソウル、上海、香港、バンコク

大阪より上位に位置するアジア都市は、東京(4位)、シンガポール(6位)、ソウル(13位)、北京(15位)、上海(16位)、香港(19位)、バンコク(22位)の7都市です。大阪はアジア第8位の都市として、東アジア・東南アジアの都市群と肩を並べるポジションにあることが分かります。いずれも強豪ばかりですが、大阪はこれらの都市とガチンコ勝負を挑んで勝ち抜かなければなりません。

アジア都市ランキング TOP20(2026年版)


順位 都市名 国・地域 Livability Lovability Prosperity 人口(都市圏)
1(世界4位) 東京(Tokyo) 日本 4 4 3 36,635,000
2(世界6位) シンガポール(Singapore) シンガポール 9 12 5 6,038,000
3(世界13位) ソウル(Seoul) 韓国 12 16 16 24,160,000
4(世界15位) 北京(Beijing) 中国 34 15 12 21,312,000
5(世界16位) 上海(Shanghai) 中国 40 17 9 28,482,000
6(世界19位) 香港(Hong Kong) 中国(特別行政区) 29 27 22 7,617,000
7(世界22位) バンコク(Bangkok) タイ 42 18 42 10,891,000
8(世界23位) 大阪(Osaka) 日本 21 24 52 16,692,000
9(世界29位) ベンガルール(Bengaluru) インド 46 19 57 13,172,000
10(世界40位) ムンバイ(Mumbai) インド 65 26 60 20,947,000
11(世界45位) 深圳(Shenzhen) 中国 193 34 26 12,819,000
12(世界49位) リヤド(Riyadh) サウジアラビア 155 45 35 7,531,000
13(世界50位) クアラルンプール(Kuala Lumpur) マレーシア 88 51 44 8,410,000
14(世界52位) 広州(Guangzhou) 中国 198 40 38 13,949,000
15(世界53位) ジャカルタ(Jakarta) インドネシア 238 28 61 32,260,000
16(世界54位) デリー(Delhi) インド 252 23 87 32,023,000
17(世界63位) 台北(Taipei) 台湾 51 67 83 2,741,000
18(世界80位) 杭州(Hangzhou) 中国 146 78 74 8,035,000
19(世界82位) ハイデラバード(Hyderabad) インド 172 43 149 10,521,000
20(世界83位) 成都(Chengdu) 中国 141 64 94 9,470,000

課題はビジネス機能と都市ブランディング

一方で、公共交通や国際ビジネス環境の面では、依然として改善の余地があります。関西国際空港の発着回数は過去最高を更新したものの、都心アクセスの利便性や外資系企業の誘致など、次のステップに向けた課題が残されています。

特に「繁栄度」指標で52位にとどまったことは、グローバル企業の集積、教育水準、スタートアップ支援体制といった分野で、世界トップ都市との差が依然として存在することを示しています。

さらに、大阪の国際的なビジュアル発信のあり方も見直しが求められています。今回の世界ランキング記事では、通天閣を中心にした「新世界」地区の写真が世界配信されました。これは、これまで東京メディアを通じて国内外に発信されてきた「ステレオタイプな大阪像」が、そのまま海外のシンクタンクに採用された結果でもあります。

観光客をターゲットとする構図としては理解できますが、今後の大阪が目指すべき方向を考えると、「コテコテの大阪」イメージをそのまま外に出すことは、ビジネス都市としての成長に逆風となりかねません。

2000年代前半のドン底から這い上がり、「駄目な大阪」を脱却した今、大阪は自らの手で、自らの言葉で、自身の未来像を語る段階に入っています。外部の目線ではなく、都市の中から「次の大阪」をデザインする力が問われています。観光都市としての成功を土台に、グローバルなビジネスプレイヤーを惹きつける都市ストーリーを自ら発信していくことが、これからの大阪に求められる課題です。

次の目標は「世界都市」への進化

大阪はインバウンドを取り込むことで、国際集客都市としての地位を確立しました。次なるステージは、その集客力を土台にビジネス・文化・イノベーションが融合する「世界都市」へ進化することです。

国際集客都市として築いた立ち位置を活用し、外資系企業の拠点を誘致していくことが鍵となります。大阪が国際拠点として、海外主要都市と直接つながり、ハイレベルな人材が自然と集まる「グローバル・ハブ都市」へと成長することが求められています。

これにより、近畿圏の優秀な学生が、地元にいながら世界を相手に挑戦できるフィールド(環境)を創出することが重要です。こうした知的循環を生み出すことで、人口減少時代においても都市の活力を維持・強化し、“人が集まり、知が生まれ、世界と競う大阪”を実現していくことがゴールです。

今後は、万博レガシーの活用、IR(統合型リゾート)の開業、インフラ整備の継続により、2030年前半までに年間1〜2ランクの上昇を積み重ね、世界15位以内への到達が目標になりそうです。


  • 万博効果の最大活用:夢洲の継続的開発とIR統合型リゾートの稼働

  • 強みの深化:食文化・観光・家族向け施設の充実

  • 弱点の克服:空港アクセス・公共交通・歩行空間の改善

  • ビジネス環境の強化:スタートアップ支援、国際金融・研究拠点の形成

  • ブランド発信力の強化:SNS・国際イベントによる認知拡大




【関連リンク】


(本記事は2025年11月5日発表のレゾナンス・コンサルタンシー調査および2025年10月27日発表の関西エアポート利用統計に基づく)





【2026年版 世界のベストシティレポート・ベスト100】


順位 都市名 国名 住みやすさ(Livability) 魅力度(Lovability) 繁栄度(Prosperity) 人口
1 ロンドン イギリス 3 2 1 12,451,000
2 ニューヨーク アメリカ合衆国 2 3 2 19,940,000
3 パリ フランス 1 1 4 13,171,000
4 東京 日本 4 4 3 36,635,000
5 マドリード スペイン 7 6 10 6,983,000
6 シンガポール シンガポール 9 12 5 6,038,000
7 ローマ イタリア 5 5 34 4,306,000
8 ドバイ アラブ首長国連邦 17 9 6 6,000,000
9 ベルリン ドイツ 10 10 7 5,106,000
10 バルセロナ スペイン 6 7 23 5,094,000
11 シドニー オーストラリア 8 20 8 5,450,000
12 ロサンゼルス アメリカ合衆国 13 13 13 12,928,000
13 ソウル 韓国 12 16 16 24,160,000
14 アムステルダム オランダ 11 25 14 2,989,000
15 北京 中国 34 15 12 21,312,000
16 上海 中国 40 17 9 28,482,000
17 トロント カナダ 14 29 15 7,605,000
18 サンパウロ ブラジル 54 8 40 22,421,000
19 香港 中国(特別行政区) 29 27 22 7,617,000
20 イスタンブール トルコ 41 14 51 14,206,000
21 メルボルン オーストラリア 22 42 21 5,207,000
22 バンコク タイ 42 18 42 10,891,000
23 大阪 日本 21 24 52 16,692,000
24 オスロ ノルウェー 15 62 17 1,651,000
25 ストックホルム スウェーデン 19 56 18 2,455,000
26 マイアミ アメリカ合衆国 26 30 30 6,458,000
27 ウィーン オーストリア 18 32 47 3,136,000
28 サンフランシスコ アメリカ合衆国 43 69 11 4,648,000
29 バンガロール(ベンガルール) インド 46 19 57 13,172,000
30 メキシコシティ メキシコ 90 11 77 20,535,000
31 ミュンヘン ドイツ 27 54 19 3,066,000
32 ダブリン アイルランド 23 55 25 2,267,000
33 コペンハーゲン デンマーク 16 74 27 2,198,000
34 チューリッヒ スイス 20 98 24 1,613,000
35 シカゴ アメリカ合衆国 49 38 28 9,409,000
36 ミラノ イタリア 38 39 31 4,981,000
37 リスボン ポルトガル 24 31 85 3,115,000
38 プラハ チェコ 25 33 81 2,217,000
39 ブエノスアイレス アルゼンチン 39 21 127 15,365,000
40 ムンバイ インド 65 26 60 20,947,000
41 バンクーバー カナダ 28 63 32 2,731,000
42 リオデジャネイロ ブラジル 37 22 142 13,630,000
43 ワルシャワ ポーランド 33 58 29 3,395,000
44 ハンブルク ドイツ 30 59 43 3,493,000
45 深圳 中国 193 34 26 12,819,000
46 モントリオール カナダ 36 65 39 4,637,000
47 ブダペスト ハンガリー 31 57 65 2,969,000
48 ブリュッセル ベルギー 44 92 33 3,408,000
49 リヤド サウジアラビア 155 45 35 7,531,000
50 クアラルンプール マレーシア 88 51 44 8,410,000
51 ボゴタ コロンビア 97 35 80 9,389,000
52 広州 中国 198 40 38 13,949,000
53 ジャカルタ インドネシア 238 28 61 32,260,000
54 デリー インド 252 23 87 32,023,000
55 ラスベガス アメリカ合衆国 149 36 71 2,399,000
56 ボストン アメリカ合衆国 53 113 36 5,026,000
57 ワシントンD.C. アメリカ合衆国 64 100 41 6,436,000
58 ヒューストン アメリカ合衆国 174 48 48 7,796,000
59 オークランド ニュージーランド 32 102 75 1,666,000
60 サンノゼ アメリカ合衆国 104 264 20 1,995,000
61 ヘルシンキ フィンランド 35 133 58 1,598,000
62 オーランド アメリカ合衆国 102 52 66 2,941,000
63 台北 台湾 51 67 83 2,741,000
64 フランクフルト ドイツ 62 135 37 2,722,000
65 リマ ペルー 159 37 101 11,037,000
66 アトランタ アメリカ合衆国 135 68 50 6,411,000
67 シアトル アメリカ合衆国 72 110 49 4,145,000
68 パース オーストラリア 52 120 56 2,309,000
69 マンチェスター イギリス 60 109 54 3,399,000
70 ケープタウン 南アフリカ 56 50 147 3,740,000
71 クラクフ ポーランド 48 79 100 1,501,000
72 バレンシア スペイン 45 75 117 1,776,000
73 オタワ カナダ 47 139 63 1,591,000
74 アテネ ギリシャ 59 47 177 3,594,000
75 サンティアゴ チリ 95 53 102 8,213,000
76 メデジン コロンビア 80 49 139 4,124,000
77 ケルン ドイツ 69 104 64 2,234,000
78 ダラス アメリカ合衆国 180 86 45 8,344,000
79 ブリスベン オーストラリア 66 141 68 2,707,000
80 杭州 中国 146 78 74 8,035,000
81 サンディエゴ アメリカ合衆国 120 88 73 3,299,000
82 ハイデラバード インド 172 43 149 10,521,000
83 成都 中国 141 64 94 9,470,000
84 デンバー アメリカ合衆国 109 128 59 3,052,000
85 カルガリー カナダ 85 132 70 1,679,000
86 アブダビ アラブ首長国連邦 224 94 46 1,539,000
87 オースティン アメリカ合衆国 125 125 62 2,551,000
88 フィラデルフィア アメリカ合衆国 108 115 76 6,330,000
89 ボルチモア アメリカ合衆国 67 222 67 2,859,000
90 シュトゥットガルト ドイツ 61 180 88 2,558,000
91 ロッテルダム オランダ 112 191 55 1,896,000
92 リヨン フランス 70 134 105 2,309,000
93 ルール地方 ドイツ 73 126 118 5,114,000
94 釜山 韓国 78 112 126 3,468,000
95 デュッセルドルフ ドイツ 74 193 79 1,482,000
96 メッカ サウジアラビア 119 66 166 2,113,000
97 ポルト ポルトガル 55 123 173 1,340,000
98 ブカレスト ルーマニア 77 137 120 2,164,000
99 バーミンガム イギリス 106 174 78 3,123,000
100 ドーハ カタール 185 187 53 2,650,000