前日、家族旅行で台湾の高雄に行ってきました。空港に着陸する直前、高雄市街の広がりを一望でき、そのスケールと港湾都市ならではの景観に圧倒されました。今回は、そのときに撮影した写真を交えながら、台湾南部の中枢都市・高雄の魅力と近年の動向をご紹介します!
台湾南部の中枢都市・高雄。 港湾と産業が支える巨大都市圏

高雄市は台湾南部の経済・産業の中心都市で、2024年8月時点の人口は約273万人です。面積は2,947㎡と台湾の直轄市で最大であり、2010年12月の高雄県との合併によって都市機能と背後地を統合し、現在の形となりました。
周辺の屏東県や台南市南部を含めた都市圏人口は約300〜350万人に達し、台北都市圏(約700万人)に次ぐ台湾第2の経済圏を形成しています。市域人口では台中市に次ぐ第3位ですが、産業・港湾機能では依然として台湾南部の中枢を担っています。
人口構造の変化と世帯構成の多様化

高雄市は、人口減少と高齢化、そして世帯構成の変化という複合的な課題に直面しています。2025年上半期の総人口は約272.6万人で、前年から約5,600人減少しました。出生数が死亡数を下回る「生不如死」の状態が続き、65歳以上の高齢者は全人口の20%を超え、すでに超高齢社会に突入しています。
さらに、一人暮らし世帯も顕著に増加し、全世帯の約20%にあたる約46.78万世帯に達しました。特に楠梓区や橋頭区では増加率が高く、台積電(TSMC)の進出などによる産業集積と住宅供給の拡大が地域社会を変えつつあります。高齢化と単身化が同時進行する「二重構造」の進展は、都市政策や産業構造の見直しを迫る要因になっています。
観光・都市開発とスマートシティ化の融合

近年の高雄市は、観光振興と都市開発を一体的に進め、都市ブランドの強化と国際競争力の向上を図っています。2025年にはクルーズ船寄港・出航が合計107隻に達し、前年からほぼ倍増しました。大型イベント「高雄ワンダーランド2025」には600万人以上が訪れ、観光満足度全国1位を獲得しています。
こうした観光需要の拡大は市の再開発計画とも連動しており、観光施設や文化施設の整備、都市空間の再設計が進んでいます。中でも「アジア新湾区2.0」構想は約1,300億台湾元を投じた大規模プロジェクトで、5G・AI・IoTを活用した港湾・製造・映像産業の機能強化や低炭素化が進行中です。鼓山区では北塔48階・南塔25階の「Fubon Aozihdi」複合開発が進められており、2025年完成後には観光とビジネス双方の集客拠点になる見込みです。高雄流行音楽センターの定着も、文化発信力の向上に寄与しています。
高雄港の世界ランキングと国際的地位

高雄市の経済的基盤を支えるのが、台湾最大の国際貿易港である高雄港です。World Shipping Council(世界海運評議会/WSC)が公表する「世界トップ50コンテナ港ランキング」では、2023年時点で世界第15位に位置し、年間取扱量は約8.83百万TEUに達します。この規模は、日本の神戸港(約2.9百万TEU)、大阪港(約2.4百万TEU)、横浜港(約3.0百万TEU)の合計(約8.3百万TEU)を上回ります。

高雄港は世界最大級のコンテナ船を受け入れる数少ない港のひとつであり、台湾を代表する海運企業・エバーグリーンが運航する「A級」「G級」など全長400m級、幅約59〜61m、喫水16〜17mの超大型船(ULCS)も寄港します。接岸には深い水深と長大なバースが必要ですが、第7ターミナルは喫水18m、延長約2,415mの5バースを備え、24,000TEU級の超大型船4隻と小型フィーダー船2隻を同時接岸可能です。これにより高雄港はアジア有数のハブ港として際立った存在となり、台湾の国際物流ネットワークの中核を担っています。
神戸港・大阪港と高雄港の受け入れ能力比較

神戸港ポートアイランド第2期(PC-14・PC-15)は水深16m前後、延長350〜400mで、全長400m級・喫水16〜17mの超大型コンテナ船(ULCS)を受け入れ可能です。ただし満載時(喫水17m)は減載が必要で、寄港実績は多くありません。
大阪港の主要外貿コンテナふ頭(南港北・南港南)は水深13〜15mと浅く、400m級・喫水16〜17mの船は満載では入港できません。そのため、中・大型船中心で、超大型船は神戸や釜山・高雄で積み替える形が一般的です。
これに対し高雄港第7ターミナルは水深18m、延長2,415mの5バースを備え、24,000TEU級超大型船4隻と小型フィーダー船2隻を同時接岸可能です。受け入れ能力で大きな差があり、日本主要港は既に世界の基幹航路から外れ、支線港化が進んでいます。
高雄市の現状と展望

高雄市は、港湾と産業を基盤に成長してきた南部の中枢都市です。近年はウォーターフロント再生や文化施設整備、交通インフラ強化を進め、観光・文化と産業を融合した都市ブランド戦略を展開しています。一方で、人口減少や高齢化、単身世帯増加という社会構造の変化が課題です。
今後は、港湾のさらなる高度化と環境対応、観光・文化・産業の融合、高齢社会への対応を同時に進めることで、国際競争力と市民生活の質を両立させる総合都市への進化が期待されます。