出展:GooleMAP
建設ニュースが伝えるところによると、大阪市中央区の大阪ビジネスパーク(OBP)にある富士通 関西システムラボラトリ(敷地面積約6,700㎡、延べ床32,500㎡)が、2026年11月末までに解体・更地化される予定です。
同施設は1986年竣工。松下電器(現パナソニック)、NECと並び、富士通はOBPを拠点に西日本での営業・研究・顧客支援を展開してきました。特にバブル期にはOBPは「西日本最大級のハイテク集積地」として機能し、金融機関や大企業が集積する象徴的存在でした。しかし、竣工から40年を迎え、設備の老朽化が進んだことで解体が決まりました。
プロジェクトの枠組み:SPCによる大規模再開発
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事業主体は「大阪城見特定目的会社(SPC)」です。SPC(特定目的会社)は、不動産証券化や大規模開発に用いられるスキームで、以下の特徴を持ちます。
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資金調達の効率化:投資家からの出資を受けやすい
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リスク分散:事業リスクを本体企業から切り離すことが可能
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柔軟な開発手法:オフィス、ホテル、データセンターなど多様な用途を組み合わせやすい
複数のデベロッパーや金融機関が関与する再開発となる可能性が高く、単なるビルの建替えではなく、都市全体に波及する大規模プロジェクトになると見られます。
スケジュール:うめきた移転から解体まで

写真右のビルが富士通 関西システムラボラトリ
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2025年7月:営業拠点をJR大阪駅北側「グラングリーン大阪」へ移転(従業員約3,600人=国内従業員の5%規模)
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2025年秋〜2026年:OBPでの解体工事を本格化
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2026年11月末:更地化が完了予定
梅田・うめきたに営業フロントを移すことで、富士通は国際ビジネス拠点としてのアクセス性を確保。一方でOBPは、研究・実証・共創の場として再構築される余地が広がります。
現実路線:需要と収益性が高いデータセンター

近年のOBPは「データセンター街」として変貌しつつあります。
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KDDI大阪第2ビル(2015年竣工、高さ130m・延床52,000㎡)
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京阪神OBPビル(2021年竣工、高さ118m・延床42,132㎡)
いずれも都市型データセンターで、西日本のクラウド・金融・ECを支える重要拠点です。クラウド普及、生成AIによる演算需要の爆発的増加を背景に、データセンターは低リスクかつ高収益の開発モデルとして評価されています。
投資家にとっても安定した賃料収入と長期契約が見込め、SPCスキームと相性が良いことから、富士通跡地もデータセンター主体の複合ビル開発が最も順当とみられます。
発展シナリオ:高さ160m級の超高層複合ビル
しかし、大阪市は「大阪城東部地区のまちづくり」で、OBPを「実証と共創の都市モデル」へ転換させる方針を掲げています。この文脈を踏まえると、富士通跡地はデータセンターだけでなく、都市を象徴する超高層複合ビルに発展させる構想も考えられます。
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高さはツイン21(157m級)と同規模の超高層
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低層部:商業・公開空地・交流スペース
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中層部:スマートオフィス+スタートアップ支援拠点
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高層部:国際級ホテル(ニューオータニ大阪を上回るグレード)
敷地6,700㎡は、超高層タワーを成立させるに十分な規模であり、「オフィス街+観光・国際交流」両面を担う都市拠点へと変貌する可能性があります。
周辺開発との関係性
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うめきた2期(グラングリーン大阪):国際ビジネス・イノベーション拠点
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夢洲(大阪IR・万博跡地):観光・エンターテインメント・国際交流の玄関口
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中之島:研究開発・医療・文化拠点
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OBP:データインフラと共創型ビジネスの拠点
このように、跡地活用の方向性は大阪全体の都市戦略とも密接に連動しています。
経済波及効果
データセンター主体の場合
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長期安定収益(クラウド・AI計算需要)
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専門人材の雇用(エンジニア・保守要員)
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税収効果、インフラ強化による都市競争力向上
複合超高層ビルの場合
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オフィス雇用・スタートアップ創出
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国際級ホテルによる観光・MICE需要
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大阪城エリアの国際ブランド強化
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OBPの再定義と都市イメージ刷新
まとめ:注目される6,700㎡の行方
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2026年11月末までに解体・更地化される富士通OBP跡地。
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SPCスキームにより、大規模再開発が前提。
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順当なシナリオはデータセンター主体の複合開発。
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発展シナリオはツイン21級の超高層複合ビルで、スマートオフィス・スタートアップ支援・国際級ホテルを内包。
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OBPは、うめきた・夢洲・中之島と補完関係を持ちながら、大阪城東部の都市戦略の核となる可能性を秘めています。
今後の動きに注目が集まりそうです。
📌 出典:建設ニュース(2025年8月26日)、富士通発表、日本経済新聞、各社リリースを整理