かねてから業績不振が伝えられていたJR大阪三越伊勢丹ですが、いよいよ抜本的な改革が行われる事になりました。JR西日本と三越伊勢丹HDは21日、共同運営しているJR大阪三越伊勢丹の売り場を現在の約5万平米から6割減らすと発表、隣接する専門店ビル「ルクア」と一体となった新しい商業モールとして運営し再起を図ります。
【出典元】
→JR西日本ニュースリリース>大阪ステーションシティ ノースゲートビルディング西館 商業施設の検討概要について
■抜本的な改革が行われるJR大阪三越伊勢丹。改装後は実質的に「ルクア西館」
三越伊勢丹の売り場を2014年夏から地下2階の食品売り場と10階のレストラン街の一部を除いて休業し改装工事に着手、2015年春にリニューアルオープンします。改装後はJR西日本が主導し、隣接する専門店ビル「ルクア」との一体運営を進め、ルクアと合わせた売上高を13年3月期の660億円から16年3月期に800億円に伸ばす計画です。JR大阪三越伊勢丹は、売り場が大幅に縮小するなかで「店名を残すことは考えにくい」為、改装後は百貨店の名前が消える見通しとなました。大阪都心の百貨店戦争のトリガーを引き、鳴り物入りで登場したJR大阪三越伊勢丹がわずか3年で消滅するという異常事態です。
■三越伊勢丹が引き金を引いた大阪百貨店戦争
全国一の激戦区と言われる大阪都心部の百貨店ですが、その戦争の引き金を引いたのは他ならぬJR大阪三越伊勢丹です。「JRの巨大駅ビルに進出した百貨店が一人勝ちする」JR京都伊勢丹から始まった近年の百貨店の勝利の方程式です。その後、名古屋、札幌、福岡など各地の駅ビルに入居した百貨店は勝利を収め続けてきました。そして、勝利の方程式を作り出した東京の百貨店の雄である「伊勢丹」が老舗「三越」とのダブルネームブランドを引っ提げて大阪駅に進出する事となり大阪の百貨店に激震が走りました。
■苛烈な競争が大阪の百貨店を洗練させた
都心部の既存百貨店各店は三越伊勢丹の進出に備え、新築建て替え、大幅増床、全面リニューアルを行い徹底対抗した為、大阪都心の百貨店の売り場面積は急拡大しました。特に梅田地区ではJR大阪三越伊勢丹の新設、大丸梅田店の増築、阪急うめだ本店は新築建て替えが行われ、売り場面積は3年前の1.8倍の26万平方メートルまで拡大、東京・新宿の21万平方メートルを大きく上回る日本一の百貨店集積地となりました。
また、単純に売り場面積が増えただけでなく、阪急は劇場型で「ハレの場」を演出し提案型の百貨店の王道を極める施策、大丸は高層階に東急ハンズやユニクロ、ポケモンセンターを入れる「脱百貨店」を目指すなど、各店は最新ハードへの更新に加え、テナント構成やVMDはもちろんオペレーションまで踏み込んだ業態改革が行われました。三越伊勢丹が仕掛けた百貨店戦争は、結果的に大阪の既存百貨店を大幅に洗練させる事となりました。
■再起を図るノースゲートビルディング、成功のカギは有力テナントの勧誘
それでは、なぜJR大阪三越伊勢丹は業界内で語りぐさになるほど伝説的な失敗をしてしまったのでしょうか・・。自分なりに考えて三越伊勢丹の不振要因を書き出してみました。
1高島屋と阪急の圧力により有力テナントが勧誘できなかった
2自主編纂売り場が受け入れらなかった。
3アトリウム広場に面したファザードが薄暗い印象で存在感が無い
4大阪駅→阪急梅田に続く歩行者導線上のルクアに比べると、どん詰まりの立地だった
5白色で寒々とした印象の内装、歩きにくい店舗構造
6消費者のニーズと伊勢丹の提案内容とのミスマッチ
原因は色々あると思いますが根っこの部分は、三越伊勢丹が提案したかった事とユーザーの期待とのミスマッチが最大の原因ではないのでしょうか。鳴り物入りでオープンした三越伊勢丹は最後までこのミスマッチを埋める事が出来ませんでした。また、JR大阪三越伊勢丹の不振は母体であるJR西日本の経営に大きな影響を及ぼしています。もしかしらたらアーバンエリアなどの新車投入ペースにも影響が及んでいるかもしれません。
ルクアと一体運営を図る事で再起を図る事となったノースゲートビルディング。復活のカギとなるのはやはりテナントでしょう。北欧雑貨のタイガー・コペンハーゲンなどが勧誘出来れば相当話題になりそうでが、それに続くような魅力のあるキーテナントは何でしょうか・・・。取り留めのない文章になりましたが2015年春のリニューアル後は、なんとか実績を上げて欲しいと思いました。






